アルバイトにも労働条件の明示がある|確認すべき項目
アルバイトにも、労働条件の明示のルールがあります。契約の期間、働く場所と仕事の内容、始業・終業の時刻や休憩・休日、賃金の決め方と支払い方、退職に関することなどは、原則として書面で示されるべき項目です。パートやアルバイトには、昇給・退職手当・賞与の有無や相談窓口を示すことも求められています。受け取ったら、時給・勤務時間・休憩・交通費・支払日を面接で聞いた内容と照らし合わせてく…
「時給はいくら?」「週何回?」——バイトを始めるとき、口頭で聞いただけで働き始めていませんか。
アルバイトであっても、雇う側には、働く人に労働条件をはっきり示すことが法律で求められています。そして、その中には書面などで示さなければならない項目があります。
ところが実際には、「面接で言われたけど書類はもらっていない」「契約書にサインしたけど中身をよく読んでいない」という人が少なくありません。後から「聞いていた条件と違う」とトラブルになったとき、確認できるものが手元にないと困るのは自分です。
この記事では、労働条件の明示とは何か、書面で示されるべき項目、受け取ったときに確認すべきポイント、そしてもらえない・条件が違うときの対処を整理します。
この記事を7枚で
1 / 701労働条件の明示とは
雇う側が、働く条件をはっきり示すことです。
労働基準法では、雇う側が労働契約を結ぶときに、働く人に対して賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないと定めています。これは、正社員だけでなく、アルバイトやパートにも適用されるルールです。
「アルバイトだから口約束でいい」ということにはなりません。働く人が、自分がどんな条件で働くのかを正しく理解したうえで働き始められるようにするための、大切な仕組みです。
労働条件の明示は、働き始めてから条件を確認するためのものではなく、働く前に条件を理解し、納得したうえで契約を結ぶためのものです。書面を受け取ったら、その場で内容に目を通す習慣をつけましょう。
02なぜ書面で確認するのか
後で困らないための、自分を守る手段です。
| 口頭だけの場合に起きやすいこと | 書面があれば |
|---|---|
| 時給が聞いていた額と違う | 明示された額を確認できる |
| 交通費が出ると聞いたのに出ない | 支給の条件を確認できる |
| 休憩の時間が決まっていない | 休憩の定めを確認できる |
| 「言った・言わない」になる | 書かれた内容が基準になる |
| 相談窓口で状況を説明しにくい | 書面を見せて説明できる |
面接で口頭で聞いた条件は、時間がたつと記憶があいまいになり、雇う側と働く側で覚えている内容が違うこともあります。「時給は〇〇円と言われた」「そんなことは言っていない」という食い違いが起きたとき、書面がなければ確認のしようがありません。
書面で条件を確認しておけば、トラブルを防げるだけでなく、万が一問題が起きたときにも、相談窓口に状況を正確に伝えることができます。
また、書面を受け取る過程で、職場の姿勢も見えてきます。条件を丁寧に説明し、質問にもきちんと答えてくれる職場は、働き始めてからも相談しやすいことが多いものです。
03書面で示されるべき項目
原則として、書面などで示されるべき項目です。
労働条件の中でも、表のような項目は、原則として書面で示されるべきものとされています。契約の期間、働く場所や仕事の内容、勤務時間や休憩・休日、賃金の決め方や支払い方、退職に関することなどは、働くうえで特に重要な条件です。
このほかにも、昇給に関することや、退職手当、賞与、食費や作業用品などの負担、安全衛生に関することなど、職場に定めがある場合に明示される項目があります。詳しい項目は、厚生労働省が示している労働条件通知書の様式などで確認できます。
04パート・アルバイトに示される項目
短時間で働く人には、追加で示される項目があります。
パートタイム・有期雇用労働法では、パートやアルバイトとして働く人に対して、昇給・退職手当・賞与の有無と、相談窓口を、文書などで明示することが求められています。
大学生のアルバイトの多くは、所定の労働時間が正社員より短い「短時間労働者」にあたります。受け取った書面に、これらの項目が書かれているかも確認してみてください。「なし」と書かれていても問題はありませんが、書かれていること自体に意味があります。
05明示の項目の追加
制度は見直されることがあります。
| 追加された項目の例 | 内容 |
|---|---|
| 働く場所・仕事の内容の変更の範囲 | 将来、配置が変わる可能性がある範囲 |
| 契約の更新の上限 | 期間の定めがある契約で、更新の回数や通算期間に上限があるか |
| 無期転換に関すること | 対象となる場合の申込みの機会など |
2024年4月からは、働く場所や仕事の内容の「変更の範囲」や、期間の定めがある契約の更新の上限の有無と内容なども、明示すべき項目に加わっています。たとえば、「当面は〇〇店だが、将来はほかの店舗に異動する可能性がある」といった範囲も示されることになります。
制度は今後も見直されることがあるので、最新の内容は必ず厚生労働省の情報で確認してください。
06明示の方法
紙の書面が原則ですが、ほかの方法もあります。
書面で示すべき項目は、紙で交付するのが原則です。ただし、働く人が希望した場合には、メールやメッセージアプリなどで送ることも認められています。その場合でも、出力して書面として保存できる形であることが必要です。
書類の名前は「労働条件通知書」「雇用契約書」「労働条件通知書兼雇用契約書」など、職場によってさまざまです。名前にかかわらず、必要な項目が書かれているかどうかが大切です。
07明示のタイミング
働き始める前に、確認するのが基本です。
労働条件は、労働契約を結ぶときに明示されることになっています。実際には、採用が決まった後の手続きの日や、初出勤の日に書類を渡されることが多いでしょう。
働き始めて数回たっても書類を受け取っていない場合は、「労働条件を書面で確認させていただくことはできますか」と、早めに店長に頼んでください。期間の定めがある契約で更新する場合も、改めて条件を確認しましょう。
学生のアルバイトでは、採用が決まってから初出勤までの期間が短く、書類の確認が後回しになりがちです。初出勤の日に書類を渡されたら、休憩の時間などに目を通し、わからない点はその日のうちに質問してください。
08契約の期間を確認する
期間の定めがあるかどうかは、辞めるときにも関わります。
| 書かれ方の例 | 意味 |
|---|---|
| 「期間の定めなし」 | 終わりの日が決まっていない契約 |
| 「〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日」 | 期間の定めがある契約 |
| 「更新する場合があり得る」 | 更新するかどうかは判断による |
| 「更新の上限あり」 | 更新の回数や通算期間に上限がある |
契約の期間の定めがあるかどうかは、辞めるときの考え方にも影響します。期間の定めがない契約と、期間の定めがある契約とでは、途中で辞める場合の扱いが異なるためです。
期間の定めがある契約の場合は、更新するかどうかの判断の基準や、更新の上限があるかどうかも確認しておきましょう。辞めるときの考え方については、バイトの辞め方|伝える時期・相手・言い方で扱っています。
09働く場所と仕事の内容
「聞いていた仕事」と違わないかを確認します。
チェーン店では、近くの店舗に応援で勤務することがある、将来ほかの店舗に異動する可能性がある、といった条件が書かれていることもあります。通勤の時間や交通費に関わるので、確認しておきましょう。
仕事の内容が、面接で聞いた内容と大きく違う場合は、働き始める前に確認してください。「ホールのスタッフと聞いていたのに、キッチンの担当になっている」といった違いは、早めに確認するほど調整しやすくなります。
10勤務時間・休憩・休日
シフト制の場合の書かれ方も確認します。
シフト制で働くアルバイトの場合、勤務時間や休日が「シフトによる」と書かれていることがあります。その場合でも、シフトの決め方や、一日の勤務時間の範囲、週の勤務日数の目安などが示されているかを確認してください。
休憩については、法令上の定めがあります。書面の休憩の定めと、実際に休憩が取れているかを照らし合わせてみてください。休憩の考え方は休憩は取れる?勤務時間と休憩のルールを確認する、残業については残業を頼まれたときの考え方|断っていい場合で扱っています。
実際に働き始めたら、シフト表やタイムカードの記録と、書面の勤務時間の定めを時々見比べてみてください。書面では休憩が決まっているのに、忙しくて取れない日が続いている、といったことに早く気づけます。
11賃金の項目
お金に関わる項目は、特に丁寧に確認します。
時給は、面接で聞いた額と同じか、地域の最低賃金を下回っていないかを確認してください。研修期間中の時給が通常と異なる場合は、その額と、研修期間がいつまでかも書かれているかを見ます。
締め日と支払日は、最初の給料がいつ振り込まれるかを知るために大切です。研修期間の考え方はテスト期間はどう乗り切る?バイトとの調整の仕方、給料日についてはバイトの給料日と支払いの仕組み|締め日・振込・手渡しで扱っています。最低賃金は地域ごとに定められ、改定されるので、最新の金額は厚生労働省の情報を確認してください。
12交通費・手当
口頭で聞いた「出る」を、書面で確かめます。
「交通費は出るよ」と面接で言われても、実際には上限があったり、一定の距離以上でないと支給されなかったりすることがあります。支給の条件が書面に書かれているかを確認してください。
制服やまかないの費用を働く人が負担する場合も、その内容が示されているかを見ておきましょう。書かれていない費用を後から請求された場合は、確認や相談の材料になります。
交通費の計算の方法は、自宅から職場までの最も経済的な経路で計算する、定期券の金額を上限にする、など職場によって違います。自分の通勤の方法で、実際にいくら支給されるのかを確認しておくと安心です。
13退職に関する項目
辞めるときのルールも、最初に確認しておきます。
退職に関する項目には、辞めるときに何日前までに申し出るかといった手続きや、解雇の事由などが含まれます。働き始めるときに辞めることを考えるのは気が進まないかもしれませんが、確認しておくと、実際に辞めるときに慌てずに済みます。
書面の内容と、法律上の考え方との関係に疑問がある場合は、大学の学生課や公的な相談窓口で確認してください。
14面接で聞いた内容と照らし合わせる
受け取ったら、その場か当日中に確認します。
書類を受け取ったら、面接で聞いた内容と照らし合わせてください。面接の後に、聞いた条件をメモしておくと、比べるときに役立ちます。
食い違いに気づいたら、署名する前に、「面接では〇〇と伺っていたのですが」と確認してください。署名した後でも確認はできますが、働き始める前の方が話を進めやすくなります。面接で確認しておくべき項目は、バイト面接で必ず確認しておくこと|聞かないと後で困るで扱っています。
15わからない項目を質問する
わからないまま署名しないでください。
労働条件の書類には、「シフトによる」「就業規則による」など、読んだだけでは具体的な内容がわからない表現が使われていることがあります。わからない項目は、遠慮せずに質問してください。
条件について質問することは、失礼なことではありません。むしろ、内容を理解しないまま署名してしまう方が、後でトラブルの原因になります。質問しても答えが曖昧な場合は、その職場で働くかどうかを考える材料にもなります。
質問するときは、書類の該当する箇所を指さしながら聞くと、相手も何を答えればよいかがわかりやすくなります。答えてもらった内容は、書類の余白などにメモしておきましょう。
16もらえないとき
まずは、丁寧にお願いします。
| 段階 | 対応 |
|---|---|
| 書類の話が出ない | 「労働条件を書面で確認させていただけますか」 |
| 「後で渡す」と言われた | 「いつ頃いただけますか」と時期を確認 |
| 「アルバイトには出していない」と言われた | 記録を残して相談を検討 |
| それでももらえない | 大学の学生課・総合労働相談コーナーへ |
働き始めても書類を受け取っていない場合は、「労働条件を書面で確認させていただけますか」と店長にお願いしてください。単に渡し忘れていることもあります。
「アルバイトには出していない」と言われた場合でも、書面で示すべき項目については明示のルールがあります。お願いしても応じてもらえない場合は、いつ、誰に頼んだかを記録し、大学の学生課や総合労働相談コーナーに相談してください。
17条件が実際と違うとき
書面をもとに、確認と相談をします。
実際の条件が書面と違う場合は、書面と給与明細などを用意して、「書面では〇〇となっていますが、実際は△△になっているようです。確認していただけますか」と、確認の形で伝えてください。
明示された労働条件が事実と違う場合、働く人は労働契約をすぐに解除することができる、という定めもあります。どう対応すべきか迷う場合は、書面を持って大学の学生課や総合労働相談コーナーに相談してください。
18受け取った書面の保管
辞めた後まで、捨てずに保管します。
受け取った労働条件の書面は、給与明細と一緒にファイルにまとめて保管してください。写真やスキャンでデータとしても残しておくと、紛失したときも安心です。
辞めた後に、最後の給料の額や、未払いの賃金について確認が必要になることもあります。辞めてすぐに捨てず、しばらくは保管しておきましょう。
次のバイトを探すとき、前の職場の条件と比べる材料にもなります。時給や休憩の取り方、交通費の支給の条件を見返すと、自分が大切にしたい条件がはっきりします。
19条件が変わるとき
変更の内容も、確認して記録します。
時給が上がる、研修期間が終わる、勤務する店舗が変わる、といった条件の変更があったときは、いつから、どう変わるのかを確認し、できれば書面やメッセージで残しておきましょう。
働く人の同意なく、一方的に時給を下げるなど、働く人に不利な方向に条件を変えることには、問題がある可能性があります。そうした変更を告げられた場合は、その場で同意せず、相談窓口で確認してください。
20相談できる窓口
条件のトラブルは、一人で抱えないでください。
総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署などに設けられている公的な相談窓口で、アルバイトでも無料で相談できます。場所や受付の時間は、厚生労働省の案内で確認してください。
相談するときは、受け取った書面、給与明細、シフト表、面接で聞いた内容のメモなどを用意しておくと、状況を正確に伝えられます。
21よくある質問
アルバイトでも労働条件の書面はもらえますか?
労働基準法の労働条件の明示のルールは、アルバイトやパートにも適用されます。契約の期間、働く場所と仕事の内容、勤務時間や休憩・休日、賃金の決め方と支払い方、退職に関することなどは、原則として書面で示されるべき項目です。働き始めても受け取っていない場合は、「書面で確認させていただけますか」とお願いしてください。
口頭で説明されただけでは足りませんか?
書面で示すべき項目については、口頭だけでは不十分です。また、口頭だけでは後から「言った・言わない」のトラブルになりやすく、自分を守るためにも書面で確認しておくことが大切です。
メールやメッセージで送られてきた条件でもいいですか?
働く人が希望した場合には、メールやメッセージアプリなどで明示することも認められています。その場合でも、出力して書面として保存できる形である必要があります。受け取ったら削除せず、保存しておいてください。
労働条件通知書と雇用契約書の違いは何ですか?
労働条件通知書は、雇う側が労働条件を働く人に通知する書面で、雇用契約書は、双方が合意したことを示すために署名などをする書面です。一つにまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」の形をとる職場もあります。名前にかかわらず、必要な項目が書かれているかが大切です。
書類に「シフトによる」としか書かれていません。
シフト制の場合、勤務時間や休日が「シフトによる」と書かれることがありますが、シフトの決め方や、一日の勤務時間の範囲、週の勤務日数の目安などが示されているかを確認してください。わからない場合は、「週に何日くらいの勤務になりますか」と質問しましょう。
面接で聞いた時給と書類の時給が違います。
署名する前に、「面接では〇〇円と伺っていたのですが」と確認してください。研修期間中の時給だけが書かれていることもあります。研修期間がいつまでで、その後いくらになるのかも確認しましょう。説明に納得できない場合は、働き始める前に相談窓口で確認することもできます。
パートやアルバイトに特に示される項目はありますか?
パートタイム・有期雇用労働法により、パートやアルバイトとして働く人には、昇給・退職手当・賞与の有無と、相談窓口を文書などで明示することが求められています。受け取った書面に、これらの項目が書かれているかも確認してください。
書類を頼んでももらえません。
いつ、誰に頼んだかを記録し、大学の学生課や総合労働相談コーナーに相談してください。「アルバイトには出していない」と言われた場合でも、書面で示すべき項目については明示のルールがあります。
書面の条件と実際の条件が違います。
書面と給与明細などを用意し、「書面では〇〇となっていますが、実際は△△になっているようです」と確認の形で伝えてください。明示された労働条件が事実と違う場合、働く人は労働契約をすぐに解除できるという定めもあります。対応に迷う場合は、書面を持って相談窓口に相談しましょう。
受け取った書類はいつまで保管すればいいですか?
働いている間はもちろん、辞めた後もしばらくは保管しておいてください。最後の給料の確認や、未払いの賃金について相談が必要になったときに役立ちます。紙の書類は給与明細と一緒にファイルにまとめ、写真やスキャンでデータとしても残しておくと安心です。
22まとめ|アルバイトにも明示のルールがある、書面で確かめて保管する
アルバイトやパートにも、労働条件の明示のルールがあります。雇う側には、労働契約を結ぶときに、働く条件をはっきり示すことが法律で求められています。
契約の期間、働く場所と仕事の内容、勤務時間・休憩・休日、賃金の決め方と支払い方、退職に関することは、原則として書面で示されるべき項目です。パートやアルバイトには、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口も示されます。
受け取ったら、面接で聞いた内容と照らし合わせてください。時給、勤務時間、交通費、契約の期間を確認し、わからない表現は署名する前に質問しましょう。
もらえないときは「書面で確認させていただけますか」とお願いし、それでも応じてもらえない、条件が実際と違う場合は、記録と書面を持って相談窓口に相談してください。
最後に。受け取った書面は、辞めた後もしばらく保管しておきましょう。いざというとき、自分を守る一番の材料になります。