卒論のテーマの決め方|決まらないときの絞り込み手順
テーマが決まらない最大の理由は、「興味のある分野」と「答えられる問い」を混同していることです。「教育に興味がある」は分野であってテーマではありません。テーマとは「〜はなぜ〜なのか」「〜と〜にはどのような関係があるか」という、答えが出る形の問いです。絞り込みの手順は4段階——①分野を挙げる ②先行研究を10本眺める ③まだ書かれていない・確かめられていない点を探す ④手に入る…
「好きなテーマでいいよ」——この一言が、いちばん困る。
卒業論文のテーマ決めは、大学生活ではじめて「問いを自分で立てる」作業です。これまでの課題には、必ず設問がありました。卒論には、それがありません。
だから、多くの学生が同じところで止まります。興味のある分野は言えるが、テーマの形にならない。
この記事では、テーマが決まらない理由、興味から問いへ絞り込む手順、良いテーマの条件、そしてそれでも決まらないときの動き方を整理します。
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1 / 701なぜ決まらないのか
経験したことのない作業です。
卒論のテーマが決まらない最大の理由は、問いを自分で立てた経験がないことです。
これまでのレポートには、必ず設問がありました。「〜について論じよ」という指示があり、それに答えてきました。
卒論では、その設問を自分で作ります。やったことがない作業なので、詰まるのは当然です。
もう一つの理由が、完璧なテーマを最初から決めようとすることです。「これで1年やり切れるか」「面白いと思ってもらえるか」と考え込むほど、決められなくなります。実際には、多くの卒論が途中でテーマを微調整しています。最初の決定は仮のもので構いません。
さらに、周囲と比べて焦ることも停滞の原因になります。同級生が先に決まると、自分だけ遅れている気がしてきます。しかし、早く決まったテーマが良いテーマとは限りません。早く決めた人が途中で行き詰まり、じっくり調べた人が安定して進む——これは実際によくある展開です。他人の進度ではなく、自分の期限から逆算してください。
まずは、詰まるのが普通だと知っておいてください。
02分野とテーマは違う
ここを分けてください。
多くの学生が止まるのが、分野とテーマの混同です。
「教育に興味がある」は分野です。テーマではありません。分野のままでは、何を調べればいいかが決まりません。
テーマとは、答えが出る形の問いです。この違いを意識するだけで、作業の方向が定まります。
この区別が曖昧なまま教員に相談すると、「もう少し絞ってください」と言われて終わります。何をどう絞ればいいかが分からないまま、また時間が過ぎる——これが最もよくある停滞のパターンです。分野からテーマへ進む具体的な手順が、この記事の中心です。
なお、分野の段階で止まっていること自体は問題ありません。そこから進む手順を知らないだけです。手順さえ分かれば、数週間で形になります。
なお、分野とテーマの中間に「対象」という段階があります。「教育」という分野から、「特定の制度」という対象へ、そして「その制度がもたらした変化」という問いへ——この3段階で考えると、飛躍が減ります。いきなり分野から問いへ進もうとして詰まるなら、間に対象を置いてみてください。
03テーマとは問いのこと
問いの形を知ってください。
- テーマは、この5つの型のいずれかに収まることが多くあります。
- 自分の関心を、どれかの型に当てはめてみてください。それだけで問いの形になることがあります。
- なお、どの型が適切かは分野によって違います。指導教員の指示に従ってください。
なお、問いは1つに絞ってください。「◯◯はなぜ△△なのか、また□□との関係はどうか」と2つ並べると、どちらも中途半端になります。1つの問いに答え切る方が、論文として成立します。
なお、問いの型は分野の慣行に沿ってください。人文系と理工系では、標準的な問いの立て方が違います。先行研究を見れば、その分野の型が分かります。
なお、問いが立てば、調べるべきことは自動的に決まります。何を読み、何を集め、何を分析するか——すべて問いから逆算できます。テーマ決めに時間をかける価値は、ここにあります。
04良いテーマの条件
4つを満たしてください。
- 良いテーマの条件は、「面白いかどうか」だけではありません。
- 最も見落とされるのが、期間内にできるかです。面白くても、3年かかる研究は卒論になりません。
- そして、指導教員が指導できる範囲であることも必要です。専門から外れると、助言が得られません。
なお、「面白いか」を軽視するわけでもありません。1年間取り組む以上、関心が持てないテーマは苦痛になります。4条件を満たす候補の中から、最も関心が持てるものを選ぶ——この順序が現実的です。
なお、4条件のうち複数が欠ける候補は、早めに外してください。迷い続けるより、残った候補に集中する方が進みます。
なお、4条件は同時に満たす必要があります。どれか1つが欠けても、途中で行き詰まります。特に材料と期間は、後から変えられません。
05絞り込みの4段階
順番に進めてください。
- テーマ決めは、この4段階で進みます。
- 多くの人が①から一気に④へ飛ぼうとして止まります。②と③を飛ばすと、問いが作れません。
- 逆に言えば、②と③をやれば、テーマは自然に出てきます。考え込む作業ではなく、調べる作業です。
なお、この4段階は行ったり来たりします。③まで進んでから、実行可能性で引っかかって②に戻ることもあります。一直線に進まないのが普通です。
なお、各段階に期限を設けると進みます。「今週中に先行研究を10本集める」といった形です。漠然と進めると、時間だけが過ぎます。
06①分野を挙げる
広くて構いません。
- 最初の段階では、関心のある分野を3〜5個挙げてください。
- この段階で絞る必要はありません。広いままで構いません。
- 手がかりになるのが、授業で面白いと感じた回です。ノートや資料を見返してください。
なお、「やりたいことがない」と感じる場合でも、まったく何もないということはまずありません。授業で少しでも引っかかった内容、疑問に思ったこと——そうした断片を書き出してください。
なお、研究室で扱える範囲かも並行して確認してください。関心があっても、指導が受けられない分野は選べません。
なお、この段階で候補を1つに絞らないでください。次の段階で先行研究を見たとき、扱えないと分かることがあります。複数持っておく方が安全です。
07②先行研究を眺める
ここが最も効きます。
- テーマ決めで最も効果があるのが、先行研究を眺めることです。
- 全文を読む必要はありません。要旨(アブストラクト)と結論だけでも十分です。
- 目的は、「この分野ではどんな問いが立てられているか」を知ることです。問いの型が分かります。
なお、探し方が分からない場合は図書館で聞いてください。レファレンスサービスで、データベースの使い方や検索語の立て方を教えてもらえます。自己流で探して見つからないより、はるかに早く進みます。
なお、10本という数に意味があります。3本程度では、その分野の傾向が見えません。10本読むと「この分野ではこういう問いが多い」「この論点は繰り返し出てくる」といったパターンが見えてきます。この感覚が、自分の問いを立てる土台になります。
読む量が増えるほど、問いは立てやすくなります。
08③空白を探す
ここにテーマがあります。
テーマは、先行研究の空白にあります。すでに答えが出ていることを繰り返しても、研究になりません。
最も実用的なのが、論文の末尾にある「今後の課題」を読むことです。著者自身が「まだ分かっていない」と書いています。
また、対象を変えるという方法もあります。別の地域、別の時期、別の集団——同じ問いでも対象が変われば新しい研究になります。
なお、完全に誰も扱っていないテーマを探す必要はありません。卒業論文に求められるのは、学術的に新規性の高い発見ではなく、適切な手順で問いに答えることです。既存研究の延長線上で構いません。
空白を探すときに有効なのが、複数の論文の「今後の課題」を並べてみることです。同じ課題が複数の論文で挙げられていれば、それはその分野で共有されている未解決の論点です。取り組む価値があり、しかも先行研究が揃っているため書きやすくなります。
この作業を丁寧にやるほど、後の執筆が楽になります。
09④答えられるか確認する
実行可能性が決定的です。
- 面白いテーマが見つかっても、答えられなければ意味がありません。
- 特に確認すべきが、資料やデータが手に入るかです。存在しない資料を前提にしたテーマは進みません。
- また、調査や実験が必要な場合は、実施できるかを確認してください。倫理審査が必要な分野もあります。
なお、実行可能性の判断は自分では難しいことがあります。「このデータは手に入りますか」「この規模の調査は1年でできますか」——指導教員に確認してください。経験に基づく判断が得られます。
なお、調査対象への依頼が必要な場合は、断られる可能性も見込んでください。代替案を持っておくと安心です。
実行できない問いは、どれほど面白くても選べません。
10問いの形にする
一文で書いてください。
テーマが見えてきたら、一文で書いてみてください。
「◯◯における△△について、□□の方法で、なぜ〜かを明らかにする」——この形に収まれば、テーマとして機能します。
書けないなら、まだ絞り込みが足りていません。②と③に戻ってください。
なお、この一文は後から変わって構いません。現時点での作業の方向が定まればよいのです。書いておくと、迷ったときに立ち返る基準になります。
なお、この一文を教員に見せると、話が早く進みます。口頭で説明するより、正確に伝わります。
問いの形になった時点で、作業の大半は方向が定まります。
11狭くしていく
絞るほど書きやすくなります。
- テーマは、狭いほど書きやすくなります。これは直感に反するかもしれませんが、事実です。
- 広いテーマは、何を書けばいいか分からなくなります。対象が無限にあるためです。
- 時期、地域、対象、側面——この4軸で絞ってください。一気に書きやすくなります。
なお、狭くすることへの不安を感じる人もいます。「こんなに小さい話でいいのか」と。しかし卒論は、小さくても筋の通った論であることが求められます。大きく散漫な論より評価されます。
絞る作業で具体的に効くのが、「いつ・どこ・誰・何の側面」を一つずつ埋めることです。空欄が残っているほど、テーマは広いままです。4つとも埋まれば、調べる対象が確定します。
絞り切れたテーマは、書くべきことが自然に決まります。
12広すぎるテーマの例
この形は避けてください。
- 広すぎるテーマの典型が、「◯◯について」「◯◯の現状と課題」という形です。
- これらは問いになっていません。調べることが無限にあり、どこで終わればいいかも分かりません。
- 「〜について」と書きたくなったら、絞り込みが足りていない合図です。
なお、題目としては広く見える形でも、中身が絞られていれば問題ない場合もあります。分野によって作法が違うため、指導教員の指示に従ってください。
なお、広いテーマから始めて絞るのは通常の流れです。最初から狭いテーマが出てくる必要はありません。
なお、広いテーマのまま書き進めると、終盤で破綻します。分量は埋まっても、結論が出せません。早い段階で絞ってください。
13狭すぎる場合
これも起こります。
絞りすぎると、今度は材料が足りなくなります。
資料が数点しかない、既に明確な答えが出ている——こうした場合は、範囲を少し広げてください。
あるいは、比較対象を加えるという方法もあります。1つの事例では薄くても、2つ比べれば論じられます。
なお、狭すぎるかどうかは書き始めると分かります。頭の中で判断するより、先行研究を集めてみる方が早く確認できます。
なお、材料の有無は探してみないと分かりません。「なさそう」という印象だけで諦めないでください。
14手法から考える
逆から決める方法です。
- テーマから手法を決めるのが通常ですが、逆から考える方法もあります。
- 「文献を読むのが得意」「データ分析をやりたい」——手法の好みから絞るという考え方です。
- この方法は、関心が定まらない場合に有効です。手法が決まれば、それで扱えるテーマに絞られます。
なお、手法には習得の時間が必要なものもあります。統計手法や分析ツールを新しく学ぶなら、その時間も見込んでください。
なお、研究室で標準的に使われる手法があれば、それを選ぶ方が指導を受けやすくなります。
15材料から考える
手元にあるものから。
もう一つの方法が、手に入る材料から考えることです。
研究室に蓄積されたデータ、公開されている統計——すでにあるものを使うと、実行可能性が担保されます。
- 特に時間が限られている場合、この方法は現実的です。データ収集の時間を節約できます。
- なお、公開データの利用には条件がある場合があります。利用規約や引用の方法を確認してください。
- なお、研究室の蓄積データを使う場合は、どこまで自由に扱えるかを確認してください。
16教員に相談する
案を持っていってください。
- 教員への相談は、案を持っていくのが基本です。
- 「何をやればいいですか」より、「この方向で考えているのですが」の方が具体的な助言が得られます。
- ただし、完全に決まってから相談する必要はありません。迷っている段階でも、方向の確認はできます。
- なお、相談の記録を残してください。何を助言されたかを書き留めておくと、次の相談で話が進みます。
なお、候補を2〜3個持っていくと、比較しながら助言が得られます。1つだけだと、可否の判断で終わります。
17それでも決まらないとき
手を動かしてください。
考えても決まらない場合、手を動かすしかありません。
テーマは考えて出るものではなく、調べて出てくるものです。先行研究を読む量が足りていない可能性があります。
また、仮のテーマで進めるという方法もあります。動き始めれば、方向が見えてきます。
なお、決まらない期間が長引くほど不利になります。執筆の時間が削られるためです。期限から逆算して、いつまでに決めるかを設定してください。
なお、過去の卒論題目を見ると、どの程度の規模が求められているかが分かります。学科で公開されていることがあります。
考え込む時間を、調べる時間に替えてください。
18途中で変えられるか
時期によります。
テーマは、初期であれば変更しやすいものです。
調べ始めてから「資料がない」「既に答えが出ていた」と分かることは普通にあります。その時点で変えて構いません。
ただし、時期が遅くなるほど困難になります。違和感を覚えたら、早めに相談してください。
なお、変更する場合も必ず教員に相談してください。無断で変えると、指導の前提が崩れます。
なお、変更しても、それまでの調べ物が無駄になるとは限りません。近い分野なら、集めた資料はそのまま使えます。
19書きながら絞る
これが現実的です。
実務的には、書きながらテーマを絞るのが最も現実的です。
最初から完璧なテーマを立てられる人は、ほとんどいません。調べ、書き、修正するという往復の中で固まります。
したがって、「決まってから書き始める」と考えないでください。書き始めることが、決めるための作業です。
なお、書き始める部分は先行研究のまとめからで構いません。テーマが固まっていなくても、この部分は進められます。
また、書いてみると問いの弱さが見えることがあります。頭の中では成立していた論理が、文章にすると飛んでいると気づく。これは失敗ではなく、絞り込みが進んだ証拠です。修正して先に進んでください。
完璧を待たず、まず手を動かしてください。
20相談できる窓口
一人で抱えないでください。
テーマの適否については、指導教員に相談してください。実行可能性の判断ができる立場です。
資料が見つからない場合は、図書館のレファレンスが使えます。専門の職員が探し方を教えてくれます。
スケジュールの立て方は卒論のスケジュールの立て方|4年生の1年間の進め方で扱っています。テーマ決めにも期限があります。
なお、相談は早い段階からしてください。行き詰まってからでは、選べる手が減ります。
なお、学修支援窓口がある大学では、論文の書き方そのものを相談できます。
21よくある質問
テーマが決まりません。何から始めればいいですか?
先行研究を10本眺めてください。全文でなく要旨と結論だけで構いません。テーマは考えて出るものではなく、調べて出てくるものです。読む量が足りていない可能性があります。
興味のある分野は言えるのですが、テーマになりません。
分野とテーマは別物です。「教育に興味がある」は分野で、テーマは「◯◯制度の導入は△△にどう影響したか」という答えが出る形の問いです。「なぜ型」「関係型」「比較型」などの型に当てはめてみてください。
良いテーマの条件は何ですか?
①答えが出る ②材料が手に入る ③1年で終わる ④指導教員が指導できる範囲、の4つです。最も見落とされるのが③で、面白くても期間内にできない研究は卒論になりません。
テーマが広すぎると言われました。
時期・地域・対象・側面の4軸で絞ってください。「◯◯について」「◯◯の現状と課題」は問いになっていません。狭いほど書きやすくなります。これは直感に反するかもしれませんが事実です。
絞りすぎて材料が足りません。
範囲を少し広げるか、比較対象を加えてください。1つの事例では薄くても、2つ比べれば論じられます。既に明確な答えが出ている場合は、角度を変えることも検討してください。
空白はどう探せばいいですか?
論文の末尾にある「今後の課題」を読んでください。著者自身が「まだ分かっていない」と書いています。また、同じ問いでも対象(地域・時期・集団)を変えれば新しい研究になります。
やりたいことはありますが、できるか分かりません。
実行可能性を先に確認してください。資料やデータが手に入るか、期間内に終わるか、必要な手法を使えるか、費用はかかるか。存在しない資料を前提にしたテーマは進みません。
教員にはいつ相談すればいいですか?
完全に決まってからでなくて構いません。迷っている段階でも方向の確認はできます。ただし「何をやればいいですか」より「この方向で考えているのですが」と案を持っていく方が、具体的な助言が得られます。
途中でテーマを変えられますか?
初期であれば変更しやすいものです。調べ始めてから「資料がない」「既に答えが出ていた」と分かることは普通にあります。ただし時期が遅くなるほど困難になるため、違和感を覚えたら早めに相談してください。
決まってから書き始めるべきですか?
逆です。書きながら絞るのが現実的です。最初から完璧なテーマを立てられる人はほとんどいません。調べ、書き、修正するという往復の中で固まります。書き始めることが、決めるための作業です。
22まとめ|調べれば出てきます
分野とテーマは別物です。「◯◯に興味がある」は分野。テーマは「答えが出る形の問い」です。
先行研究を10本眺めてください。要旨と結論だけで構いません。どんな問いが立てられているかが分かります。
空白は「今後の課題」にあります。著者自身が書いている未解決の点。そこにテーマがあります。
実行可能性を必ず確認してください。面白くても、1年で・手に入る材料で答えられなければ卒論になりません。
最後に。完璧なテーマを最初から探さないでください。書きながら絞るのが普通です。手を動かすことが、決めるための作業です。