有価証券報告書の読み方【就活生向け】企業研究で見るべき5か所と平均年収の探し方
有価証券報告書(有報)は、全部読む必要はありません。就活で見るのは「事業の内容」「従業員の状況」「セグメント」「経営方針」「事業等のリスク」の5か所です。そのうち最初に開くのは従業員の状況で、持株会社の場合は「単体の人数」と「グループの人数」を分けて読むのがコツです。
企業研究を始めると、「有価証券報告書を読むといい」という話を聞くことがあると思います。ところが実際に開くと、何百ページもあって、どこから読めばいいのか分かりません。私も最初のページを見て、そっと閉じたくなる気持ちはよく分かります。
有報は、会社が決算ごとに国へ出す「公式の自己紹介書」です。口コミと違って、会社自身が数字つきで書いていて、誰でも無料で読めます。この記事では、実際の有報(リクルートホールディングスの2026年3月期)を開いて確かめた並び方をもとに、就活生が見る5か所と、その読み方を説明します。
読み終えると、有報をどこで開き、どのページから読み、何を表にメモすればいいかが分かります。Campi の企業ページに載っている平均年収や平均勤続年数が、有報のどこから来た数字なのかも分かります。
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1 / 601有報とは何か:どこで読めるのか
有価証券報告書は、金融商品取引法という法律にもとづいて、会社が出す開示書類のひとつです。これを電子的に出したり、誰でも見られるようにしたりするシステムが EDINET(エディネット)で、金融庁が運営しています。金融庁のページには、EDINET の目的として「財務内容や事業内容を、正確・公平・適時に開示すること」が書かれています。投資家のための仕組みですが、会社のことを調べたい就活生にもそのまま使えます。
EDINET の閲覧サイト(disclosure2.edinet-fsa.go.jp)では、有価証券報告書のほか、有価証券届出書や大量保有報告書などの書類を見ることができます。サイトには「書類詳細検索」と「書類全文検索」のメニューがあります。まずは会社名で探し、「有価証券報告書」と書かれた書類を選べば開けます。
書類は決算の期ごとに新しくなります。リクルートホールディングスの「2026年3月期」の有報は、2026年6月に提出された書類でした。就活では、いちばん新しい期のものを開きましょう。
有報は「投資家向け」なので、言葉が固いのは確かです。ただ、就活生が見る場所は決まっています。次の章で全体の地図を見て、読む場所を絞りましょう。
02有報の地図:全体はこう並んでいる
実際の有報(リクルートホールディングス・2026年3月期)を開くと、本文は大きく「第一部 企業情報」と「第二部 提出会社の保証会社等の情報」に分かれていました。第二部は「該当事項はありません」の1行でした。ほとんどの内容は第一部に入っています。
第一部の中身は、次のように並んでいます。
| 章 | 主な項目 | 就活での使い道 |
|---|---|---|
| 第1 企業の概況 | 主要な経営指標等の推移/沿革/事業の内容/関係会社の状況 | 会社の姿を最初につかむ。5期分の売上などの推移も見られる |
| 第2 事業の状況 | 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等/サステナビリティに関する考え方及び取組/事業等のリスク/経営者による財政状態・経営成績の分析/重要な契約等/研究開発活動 | 会社が何を目指し、何を心配しているかが分かる |
| 第3 設備の状況 | 設備投資等の概要など | どこにお金をかけているか(工場や店の多い会社で役立つ) |
| 第4 提出会社の状況 | 株式等の状況/配当政策/コーポレート・ガバナンスの状況等/従業員の状況等 | 「従業員の状況」がここにある。平均年収・平均年齢・平均勤続年数を確認 |
| 第5 経理の状況 | 連結財務諸表、財務諸表、注記 | 数字の細かい説明。最初は読まなくてよい |
| 第6・第7 | 株式事務の概要/参考情報 | 就活ではほぼ使わない |
見てのとおり、就活で使う場所は第1・第2・第4に集まっています。第5の「経理の状況」は、決算の数字を細かく説明する部分です。企業研究の最初の段階では飛ばして問題ありません。
注意点がひとつあります。章の番号や、その中の項目の順番は、会社や年度によって少し違う場合があります。この記事の表はリクルートホールディングスの有報で確かめた並びです。他の会社を開くときは、書類の最初にある目次で項目名を探してください。
03就活で見る5か所と、それぞれで分かること
ここからが本題です。就活生が見るのは、次の5か所です。
| 見る場所 | 有報の中の位置 | 分かること | 確認のコツ |
|---|---|---|---|
| 1. 事業の内容 | 第1 企業の概況 | 何で稼ぐ会社か。グループの構成 | 最初の数段落だけ読めば、事業の全体像がつかめる |
| 2. 従業員の状況 | 第4 提出会社の状況 | 従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与 | 「連結会社」と「提出会社」の表を分けて見る |
| 3. セグメント | 事業の内容、従業員の状況 | 事業が何本の柱でできているか、どの柱に人が多いか | 志望する職種がどの柱に近いかを考える |
| 4. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 | 第2 事業の状況 | 会社が何を目指し、何を課題と考えているか | 「経営戦略」や「対処すべき課題」の見出しを探す |
| 5. 事業等のリスク | 第2 事業の状況 | 会社自身が「うまくいかないかもしれない」と考えていること | 最初に出てくる「トップリスク」を読む |
1. 事業の内容:最初に開く場所
リクルートホールディングスの「事業の内容」は、1960年に大学新聞へ企業の求人広告を載せて学生に求人情報を届けたところから始まる、という説明で始まっていました。続けて「HRテクノロジー」「人材派遣」「マーケティング・マッチング・テクノロジー」の3つの事業に分かれていることが書かれています。このように、事業の内容を読むと、会社の紹介ページより正確に「何で稼いでいるか」が分かります。
2. 従業員の状況:数字がまとまっている
従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与(平均年収にあたる数字)がまとまって載っています。就活生がいちばん見る場所なので、次の章で詳しく説明します。
3. セグメント:事業の柱ごとの区分
セグメントは、会社が事業を柱ごとに分けた区分のことです。リクルートホールディングスは、従業員の表もセグメントごとに分かれていて、HRテクノロジーが18,005名、人材派遣が13,354名、マーケティング・マッチング・テクノロジーが14,096名と書かれています(2026年3月31日現在、合計45,586名)。人数の多い柱は、新卒の配属先も多い可能性があります。ただし、これは人数から考えられることであり、配属は各社の募集要項で確かめる必要があります。
4. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等:会社の考えが分かる
リクルートホールディングスの場合、「経営の基本方針」「目標とする経営指標」「経営戦略」の順で書かれていました。面接で聞かれる「当社の経営戦略をどう思いますか」「事業の課題は何だと思いますか」に答えるときの、いちばん確かな材料になります。会社説明会に出る前に読んでおくと、話の背景が分かりやすくなります。
5. 事業等のリスク:会社が自分で書いた弱点
事業等のリスクは、会社自身が「経営に影響が出るかもしれないこと」を書く場所です。リクルートホールディングスでは、リスクを管理する仕組みの説明のあとに、「グループトップリスク」として、データセキュリティとデータプライバシーに関するリスクが取り上げられていました。個人情報を多く扱う事業だからこそ、最も注力して対応すべきと考えている、という読み方ができます。リスクを読むと、その会社が今いちばん気にしていることが分かります。面接の逆質問を考えるときのヒントにもなります。
- 事業の内容:最初の数段落で、何で稼ぐ会社かを自分の言葉で1行にまとめる
- 従業員の状況:「連結」と「提出会社」を分けて、数字を表に写す
- セグメント:事業の柱の数と、人数の多い柱を書き出す
- 経営方針:「経営戦略」と「対処すべき課題」から、気になった1文を引用してメモする
- 事業等のリスク:トップリスクを1つ選び、会社がどう対応しているかを読む
04従業員の状況の読み方:持株会社の落とし穴
従業員の状況は、有報の中でも就活生が特によく見る場所です。ただし、ここには間違えやすいポイントがあります。同じ書類の中に、人数や年収の表が複数あるからです。
リクルートホールディングスの有報では、従業員の状況が次の3つの表に分かれていました。
| 表の名前 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|
| 連結会社の状況(グループ全体) | 45,586名 | (載っていない) | (載っていない) | (載っていない) |
| 提出会社の状況(リクルートホールディングス自体) | 130名 | 40.2歳 | 9.3年 | 11,624,997円 |
| 主要な国内連結子会社(株式会社リクルート) | 11,776名 | 33.7歳 | 6.6年 | 7,638,676円 |
グループ全体は45,586名ですが、会社そのもの(提出会社)は130名しかいません。リクルートホールディングスは「持株会社」、つまり、子会社を束ねて経営することが主な役割の会社です。そのため、平均年収1,100万円台という数字は、130名の本社機能の人たちのものです。事業会社の株式会社リクルートは、同じ有報の別の表で、平均年齢33.7歳、平均年間給与7,638,676円と書かれています。
このように、持株会社の平均年収は、あなたが入る会社の年収とは別のものになる場合があります。どの会社に入社するのかは、募集要項で確認しましょう。募集要項に書かれた会社名が、有報の「提出会社」なのか、「連結子会社」なのかを見比べてください。
Campi の企業データで数えると、持株会社に分類した429社のうち383社で、グループの社員数が提出会社単体の5倍以上でした(グループの社員数を単体の従業員数で割って数えています)。持株会社でない会社でも、3,218社のうち1,126社で、グループの社員数が単体の2倍以上です。上場企業の多くで「グループ」と「単体」の差が大きいことが分かります。
表の下に書かれた注(注1〜注5など)も、必ず読みましょう。リクルートホールディングスでは、従業員の数え方(出向者の扱い、臨時従業員を含まないこと)や、人数が前の年から増えた理由が書かれていました。数字だけを見ると、人数や年収を取り違えることがあるからです。
05Campi の企業ページの数字は有報のどこから来たか
Campi の企業ページに載っている「平均年収」「平均年齢」「平均勤続年数」は、有報の「従業員の状況」にある提出会社の表の数字です。リクルートホールディングスのページで確かめると、平均年齢40.2歳、平均勤続年数9.3年、平均年間給与11,624,997円で、上で見た有報の表と同じ値でした。対象は2026年3月期です。
Campi の企業データで数えると、掲載している上場企業は3,703社で、そのうち3,647社に平均年収の数字があります(有報から読み取れた会社を数えています)。残りの会社は、有報から数字を読み取れていません。
Campi の企業ページを使うと、有報を開く前に「その会社の全体像」を短く確かめられます。たとえば リクルートホールディングス のページで平均年収や社員数の見当をつけてから、有報の従業員の状況を見る、という使い方ができます。機械メーカーの SMC のように、持株会社ではない会社は、提出会社の表の数字がそのまま入社先の数字に近くなります。
数字を比べるときは、同じ業界の中で比べるのがおすすめです。業界ごとの特徴は 業界図鑑 で、年収が高い順に会社を見たいときは 平均年収が高い企業ランキング で確かめられます。新卒の初任給は 初任給の平均・中央値 にまとめています。
平均年収は「全従業員の平均」です。新卒1年目の給与とは違います。初任給は有報には載っていないので、募集要項で確認してください。
0630分で読む順番と、メモの取り方
1社につき30分を目安に、次の順番で読んでみてください。
| 順番 | 見る場所 | 目安の時間 | メモに残すこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 目次(書類の最初) | 2分 | どこに何が書いてあるかを把握する |
| 2 | 事業の内容 | 8分 | 稼ぎ方を1行、事業の柱の数 |
| 3 | 従業員の状況 | 5分 | 提出会社の人数・年齢・勤続年数・年収 |
| 4 | 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 | 8分 | 気になった1文と、その理由 |
| 5 | 事業等のリスク | 7分 | トップリスク1つと、会社の対応 |
メモは「会社名・期(例:2026年3月期)・見た場所・数字や文」の4つを1行にしておくと、あとで比べやすくなります。数字には必ず期を書いてください。期が違うと、比べられないからです。
数字がそろったら、気になる会社を志望順に並べて整理します。絞り込みの考え方は 志望企業の絞り方 に、業界を調べる順番は 業界の調べ方 にまとめています。応募できる会社は 新卒求人(受付中の会社) で確かめられます。
- 最新の期か:EDINET で、いちばん新しい有価証券報告書を開いている
- 提出会社か:平均年収などは「提出会社」の表から写している
- 注を読んだか:従業員数の数え方の注を読んでいる
- 入社先と一致するか:募集要項の会社名と、有報の会社名を見比べた
- 期を書いたか:メモの数字に「何年何月期」を添えた
- 公式の情報だけか:口コミやまとめの数字をメモに混ぜていない
07よくある質問
有報は本当に全部読まなくていいですか?
はい。企業研究の最初の段階では、この記事の5か所で十分です。財務諸表の細かい数字(第5の経理の状況)は、志望度が高い会社を深く調べるときに見れば間に合います。
有報はどこで無料で読めますか?
金融庁が運営する EDINET の閲覧サイトで、会社名から探して読めます。会社自身のホームページの投資家向けページ(IR情報)も確かめてみてください。
平均年収は、新卒の私にも当てはまりますか?
当てはまるとは限りません。平均年収は全従業員の平均で、年齢や勤続年数が長い人も含みます。新卒1年目の給与は、募集要項に書かれた初任給で確かめてください。
持株会社は避けたほうがいいですか?
そうとは言えません。持株会社そのものに入るのではなく、傘下の事業会社に入社する形が多いだけです。大事なのは、募集要項に書かれた会社と、有報の数字の会社が同じかどうかを確かめることです。
上場していない会社の有報はありますか?
Campi の企業データで数えているのは、上場企業の3,703社です。EDINET で有報が見つからない会社は、会社の公式サイトや募集要項、厚生労働省の「しょくばらぼ」で調べましょう。
英語の有報もありますか?
金融庁の EDINET のページに、英訳した有価証券報告書を自社サイトに載せている企業の一覧表が公表されています。外資系や海外志望の人は、そちらも確認してみてください。
出典:金融庁「EDINETについて」(fsa.go.jp/search/20130917.html)、EDINET 閲覧サイト(disclosure2.edinet-fsa.go.jp)、リクルートホールディングス 有価証券報告書(2026年3月期)、2026年10月時点の Campi の企業データ(各社の有価証券報告書)(2026年10月確認)