医薬・ヘルスケア業界の選考|案内から流れを読む
医薬の選考でまず確認するのは「職種の区分」と「併願の可否」です。研究、臨床開発、薬事、生産・品質、MR——職種別に募集されることが多く、締切も選考の進み方も違うことがあります。そのうえで研究概要、配属の候補地、転居を伴う異動を案内で確かめてください。志望動機はパイプラインを読んでから書いてください。
医薬の選考は、職種の名前を知ることから始まります。
臨床開発、薬事、安全性情報、品質保証——名前を知らないと、募集を見ても何の仕事か分かりません。
そして職種別に募集されることが多く、応募の段階で進みたい職種を決める必要があります。
この記事では、医薬・ヘルスケア業界の選考の特徴を整理し、案内の読み方、準備、当日の確認まで通しで扱います。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 この業界の選考の特徴
第2部 案内の読み方と準備
第3部 情報の集め方
第4部 当日と確認|やらないこと
第1部 この業界の選考の特徴
01この業界の選考の特徴
まずこの点を確認してください。
医薬の選考でまず確認する2点。
時期は会社ごとに違います
職種別に募集される場合、職種ごとに締切や選考の進み方が違うことがあります。
本記事では通過の基準を扱いません
何が評価されるか、倍率はどうかといった話は会社ごとに違い、外からは分かりません。
業界と職種の理解が前提になります
業界の構造は医薬・ヘルスケア業界とは|全体像と分野の調べ方、職種は医薬・ヘルスケア業界の職種|仕事内容の調べ方で整理しています。
02応募する職種を決めてください
職種別採用が多いため、先に決める必要があります。
| 職種 | 主な専攻 | 仕事の性格 |
|---|---|---|
| 研究 | 薬学、生物、化学、農学 | 候補を探し、性質を調べる |
| 臨床開発 | 薬学、生物、統計、情報 | 試験を計画し、医療機関と進める |
| 薬事 | 薬学、理系全般 | 申請資料をまとめ、制度に対応する |
| 生産・品質 | 薬学、化学、生物、機械 | 製造を安定させ、品質を保証する |
| MR | 専攻を問わないことが多い | 医療関係者に情報を届ける |
| 医療機器の技術 | 機械、電気、材料、情報 | 機器を設計・製造・保守する |
併願できるか確認してください
複数の職種に応募できるか、できないか——会社によって違います。募集要項に記載がなければ説明会で聞いてください。
研究職の枠は限られます
研究職は修士以上を対象とすることがあります。応募資格は募集要項で確認してください。
科学の知識を使う職種は他にもあります。臨床開発、薬事、品質保証、安全性情報——いずれも専門性の高い仕事です。
MRは文系からも応募できます
入社後に医学・薬学の知識を学ぶ研修が用意されていることがあります。研修の内容は採用ページで確認してください。
医療機器は工学系の道です
機械、電気、材料、ソフト——専門が直接生きます。制度も医薬品とは別です。
03パイプラインを読んでから書く
志望動機の材料として、最も具体的な資料です。
会社サイトのIRにあります
各社が開発中の候補の一覧を公表しています。会社が自分で出している資料なので、外れません。
2社を並べてください
同じ分野の2社のパイプラインを比べると、力を入れている領域の違いが見えます。
その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
研究開発活動の記載も読んでください
有価証券報告書の研究開発活動には、どの領域に開発の力を入れているかが書かれています。
手段が違えば必要な専門も違います
化学合成、生物のしくみ、細胞や遺伝子——手段が違えば、必要な研究者の専門も工場の設備も変わります。
自分の専攻がどの手段に近いかを考えてください。
04制度への理解と姿勢
この業界は、制度が事業の前提になっています。
細部まで覚える必要はありません
就活の段階では「制度で決まっている」という前提を知っているだけで十分です。
この前提があると、説明会や面接の話が理解できます。
うろ覚えで語らないでください
制度は改正されることがあり、数年前の説明が現状と合っていないことがあります。
正確な内容は厚生労働省やPMDAの情報で確認してください。
手順と記録を大事にする姿勢
製造も試験も、決められた手順を守り、記録を残すことが求められます。
研究で実験ノートを丁寧に付けてきた経験は、そのまま材料になります。
効果や安全性について断定しない
ある薬や治療が効く・効かないといった言い方は、就活の場で口にするものではありません。効果や安全性は個別に判断されるものです。
05この業界で聞かれやすいこと
会社によって違いますが、傾向はあります。
「人の役に立ちたい」の先へ
これはこの業界のほぼ全志望者に当てはまります。どの段階で、どんな形で関わりたいかまで降りてください。
この業界の仕事の多くは、患者さんと直接会うものではありません。間接的に役立つ仕事です。
開発が止まることを理解しているか
候補の多くは途中で開発が中止されます。これはこの業界の前提です。
この点を知らずに志望していると受け取られると、理解の浅さが伝わります。
個人的な体験を語るときの注意
家族の病気などが動機になることは自然です。ただし特定の薬や治療の効果について断定しないようにしてください。
分からないことは分からないと言う
制度や医学の細部について、うろ覚えで語らないほうが安全です。
第2部 案内の読み方と準備
06採用の案内はどこを読むか
会社が出している案内が、いちばん確実な情報です。
就活サイトの一般論と、個別の案内は別です
「一般的にはこの時期」という説明は目安にすぎません。個別の会社に当てはまるとは限りません。
実際の日程は、各社の採用ページと届いた案内で確認してください。
職種の名前が独特です
臨床開発、薬事、安全性情報、品質保証——名前を知らないと募集を見ても何の仕事か分かりません。
職種の中身を理解してから募集要項を読んでください。
記載がないことは推測で埋めないでください
案内に書かれていないことは、説明会や問い合わせで確認してください。推測で動くと、行き違いが起こります。
募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで詳しく扱っています。
07提出書類の準備
何を出すかは会社によって違います。
証明書は早めに手配してください
大学の証明書は発行に日数がかかることがあります。締切の直前に慌てないよう、早めに確認してください。
研究職では研究概要を求められることがあります
薬学・生物・化学・農学系の専攻では、研究の内容をまとめた書類の提出を求められることがあります。
設問に答えているかを確認してください
書きたいことを書くのではなく、聞かれたことに答える——これが基本です。
書いたあと、設問をもう一度読んで、答えになっているか確かめてください。
08適性検査と筆記の考え方
形式は会社によって違います。案内で確認してください。
| 確認すること | どこで分かるか |
|---|---|
| どんな形式か(能力・性格・記述など) | 届いた案内、採用ページ |
| 受検の方法(自宅・会場・オンライン) | 届いた案内 |
| 受検の期限 | 届いた案内 |
| 使える道具(電卓・メモなど) | 届いた案内の注意事項 |
| 結果の扱い | 記載がある場合はその記載 |
案内の注意事項を必ず読んでください
受検の環境、使える道具、やり直しの可否——案内に書かれた条件を守ってください。
不正と受け取られる行為は、その会社の選考だけでなく信頼にも関わります。
職種によって形式が違うことがあります
研究職、臨床開発、MR——職種ごとに選考の形式が違うことがあります。届いた案内で確認してください。
性格に関する検査は正直に答えてください
よく見せようとして矛盾した回答になると、かえって不自然になります。自分の考えに沿って答えるのが基本です。
早めに受けられる準備をしてください
期限の直前は混み合うことがあります。通信の環境や時間の確保を含めて、余裕をもって受検してください。
09日程と締切の管理
複数の会社を受けると、必ず抜けが出ます。
1枚にまとめてください
上の5つを1枚の表にしておけば、出し忘れは防げます。形式は紙でも表計算でも構いません。
職種別に締切が違うことがあります
職種別採用が多い業界です。職種ごとに締切と選考の進み方を記録してください。併願の可否も確認が必要です。
連絡の手段を確認してください
メール、マイページ、電話——どこに連絡が来るかを確認し、見落とさないようにしてください。
迷惑メールの振り分けにも注意が必要です。
管理の仕方は別記事で
具体的な管理の方法は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
第3部 情報の集め方
10説明会で何を聞くか
聞く側になってください。
「やりがい」は聞いても情報が少ない
抽象的な質問には抽象的な答えが返ります。具体的な事実を聞くほうが、判断の材料になります。
この業界で聞いておきたいこと
開発が中止になったときにどう動くか、医療機関とのやりとりの頻度、配属の候補地——このあたりは説明会で聞けます。
聞いたことはその場でメモしてください
複数の会社の説明会に出ると、どこで何を聞いたか分からなくなります。会社ごとにメモを残してください。
1社の話を業界全体だと思わないでください
説明会で語られるのはその会社の話です。業界の共通事項かどうかは、他社も見ないと分かりません。
11OB・OG訪問の使い方
資料では分からないことを聞くための機会です。
複数の人に聞いてください
1人の話はその人の経験です。職種や配属先が違えば話も変わります。
段階ごとに話を聞いてください
研究、臨床開発、薬事、品質、MR——それぞれの職種の人に聞くと、業界の全体像がつかめます。
準備をしてから会ってください
調べれば分かることを聞くと、時間がもったいなくなります。資料を読んだうえで、そこに書いていないことを聞いてください。
進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
12一次資料で会社を確かめる
採用向けではない資料も見てください。
志望動機の材料になります
会社が自分で書いていることなので、外れません。とくに中期経営計画は、なぜこの会社かを書く材料になります。
パイプラインを読んでください
各社が公表する開発中の候補の一覧を見ると、どの疾患領域に力を入れ、どの段階の仕事があるかが分かります。
上場していない会社の場合
有価証券報告書がない場合は、会社サイトの会社概要、沿革、事業の説明、プレスリリースが情報源になります。
足りない部分は説明会で直接聞いてください。会社の調べ方は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。
132社を比べて違いを見つける
1社だけ見ても、その会社の特徴は分かりません。
違いが志望動機になります
同じ業界の2社を並べると、力の入れどころの違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
同じ分野の2社を比べてください
新薬メーカーどうし、医療機器どうし——同じ分野で比べると、力を入れている領域の違いが見えます。
書いたあとの確認
志望動機を書いたら、会社名を別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。
志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
第4部 当日と確認|やらないこと
14面接当日に気をつけること
準備したことを、落ち着いて話せる状態をつくってください。
準備した話をそのまま言わないでください
面接は対話です。聞かれたことに答え、追加で聞かれたら答える——この往復が基本です。
効果や安全性について断定しないでください
特定の薬や治療について断定的に語るのは避けてください。この業界の人は情報の正確さに厳しいのが普通です。
オンラインの場合
通信の環境、背景、音声——事前に確認してください。案内に指定があれば、その指定に従ってください。
終わったら記録してください
何を聞かれ、どう答えたか、何を言われたか——記録が次の会社の準備になります。
15選考で確認しておくこと
聞かれる側だけでなく、聞く側にもなってください。
| 確認したいこと | どこで確認するか |
|---|---|
| 職種の区分と併願の可否 | 募集要項の職種欄 |
| 配属先の候補地(研究所・工場・支店) | 説明会での質問 |
| 転居を伴う異動の有無 | 募集要項の転勤欄 |
| 配属の決まり方 | 説明会での質問 |
| 転勤の有無と範囲 | 募集要項 |
| 勤務時間の仕組み | 募集要項 |
| 雇用元がどの法人か | 募集要項 |
労働条件は聞いても失礼になりません
勤務地、勤務時間、転勤の有無は労働条件の基本です。募集要項に書かれるべき内容でもあります。
記載がない、または説明が曖昧なまま進む場合は、その点を書面で確認するようにしてください。
内定後に条件を確認してください
内定の連絡を受けたら、労働条件が書面(または電子)で示されるかを確認してください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。
職種別採用が多い業界です
入社時点で職種が決まる募集が多く、応募の段階でどの職種に進みたいかを決める必要があります。
疑問があるときは相談してください
提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。次の章で相談先を挙げます。
16相談できる窓口
一人で抱えないでください。
薬学・生命科学系は進路資料が整っていることがあります
職種まで含めて記録が残っていることがあります。研究職、開発職、MR——どの職種に何人進んだかが分かれば、話を聞ける相手が見つかります。
条件面で疑問があるとき
提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。労働局の総合労働相談コーナーは無料で、全国にあります(予約なしで利用できる場合があります)。法令の解釈は弁護士にご相談ください。
就職活動の進め方に迷ったとき
大学のキャリアセンターは過去の応募の状況を持っていることがあります。推薦の仕組みがある場合の手続きも、ここで確認できます。
17やらない方がいいこと
医薬の選考でとくに起きやすい失敗です。
| やりがちなこと | なぜ問題か |
|---|---|
| 「人の役に立ちたい」で止める | ほぼ全志望者が言う。会社を選んだ理由にならない |
| 制度をうろ覚えで語る | 正確でない説明は印象を悪くする |
| 研究職しか見ない | 臨床開発・薬事・品質・安全性という道を落とす |
| パイプラインを見ずに志望動機を書く | その会社の注力領域が分からないまま書くことになる |
| 薬の効果について断定的に語る | 効果や安全性は個別に判断されるもの |
| 併願の可否を確認しない | 職種別採用では応募先が限られることがある |
医療の内容を語りすぎないでください
志望動機で特定の病気や薬について深く語ることがあります。動機として自然な場合もありますが、出どころを言える範囲にとどめてください。
1社の説明会を業界全体だと思わない
新薬メーカーと後発医薬品メーカー、医薬品と医療機器では前提が違います。最低2社は比べてください。
18よくある質問
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。職種別に募集されることが多い業界なので、職種ごとに締切や選考の進み方が違うこともあります。併願が可能かどうかも募集要項で確認できます。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。
薬学部でないと受けられませんか?
そうではありません。研究職では生物・化学・農学系、臨床開発やデータ管理では統計・情報系、医療機器では機械・電気・材料系の専攻が生きます。MRや管理部門では文系出身者も多く働いています。応募資格は募集要項で確認してください。
職種はどうやって決めればいいですか?
まず職種の名前と中身を知ることから始めてください。臨床開発、薬事、安全性情報、品質保証——名前を知らないと募集を見ても何の仕事か分かりません。そのうえで、自分の専攻と関心がどの段階に合うかを考えてください。
研究職の枠は限られますか?
修士以上を対象とする募集であることがあり、枠が限られることがあります。応募資格は募集要項に明記されているので確認してください。科学の知識を使う職種は他にもあるため、臨床開発、薬事、品質保証、安全性情報も併せて見ることをおすすめします。
志望動機は何を材料にすればいいですか?
各社が公表しているパイプライン(開発中の候補の一覧)を読んでください。どの疾患領域に力を入れ、どんな手段で取り組んでいるかが分かります。2社を並べれば、力を入れている領域の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
制度について聞かれますか?
細部まで覚える必要はありませんが、「承認や価格が制度で決まっている」という前提を知っていることは求められます。制度は改正されることがあるため、正確な内容は厚生労働省やPMDAの情報で確認してください。うろ覚えで語るのは避けてください。
開発が中止になることについて聞かれますか?
候補の多くは途中で開発が中止されます。これはこの業界の前提です。この点を理解したうえで志望していることを示せると、理解の深さが伝わります。担当していた候補が中止されたときどう動くかは、OB・OG訪問で聞いておくとよい質問です。
家族の病気が志望の動機です。話してもいいですか?
動機として自然なことです。ただし特定の薬や治療の効果について断定的に語るのは避けてください。この業界の人は情報の正確さに厳しいのが普通です。体験から何を考えたかに絞って話すほうが安全です。
MRの選考は何が違いますか?
MRは文系からも応募できる職種で、入社後に医学・薬学の知識を学ぶ研修が用意されていることがあります。ただし医薬品の情報提供には法令や業界の決まりがあり、自由に売り込む仕事ではありません。この前提を理解していることを示してください。
研究概要には何を書けばいいですか?
何を課題とし、どう取り組み、何が分かり、どこで詰まったか——この流れで書いてください。読むのは必ずしも同じ専門の人ではないため、専門用語には説明を添えてください。成果より進め方が見られます。
転勤はありますか?
職種によります。MRは担当エリアが変わることで転居を伴う異動が起こることがあり、地域限定の区分を設けている会社もあります。研究職は研究所、生産は工場、臨床開発や薬事は本社が中心です。募集要項の転勤の記載を確認してください。
まず何から始めればいいですか?
職種の名前と中身を知り、志望する会社のパイプラインを読み、募集要項で職種の区分と併願の可否を確認するのが早道です。制度に関することは公的機関の情報で確認してください。
19まとめ|職種を決めて、パイプラインを読む
医薬の選考でまず確認するのは「職種の区分」と「併願の可否」です。
職種の名前を知ることから始めてください。臨床開発、薬事、安全性情報、品質保証——名前を知らないと募集が読めません。
- 研究職だけを見ないでください。科学の知識を使う職種は他にもあります。
- パイプラインを読んでから志望動機を書いてください。どの領域に力を入れているかが分かります。
- 制度が前提の業界です。細部は覚えなくてよいですが、うろ覚えで語らないでください。
- 開発が止まることを理解してください。この前提を知ったうえで志望するかを決めてください。
- 効果や安全性について断定しないでください。情報の正確さに厳しい業界です。
最後に。本記事は就職活動のための案内であり、薬や治療の効果・安全性について説明するものではありません。制度に関することは厚生労働省・PMDAなどの公的機関の情報で、実際の日程と内容は各社の採用ページと届いた案内でご確認ください。
・医薬・ヘルスケア業界とは|全体像と分野の調べ方
・医薬・ヘルスケア業界の職種|仕事内容の調べ方
・募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認する
・選考管理の作り方|進み具合を一覧にする
・会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法
・就活・キャリアの記事一覧