就活・キャリア 更新 2026.09.23 この記事にはPRを含みます

医薬・ヘルスケア業界とは|全体像と分野の調べ方

結論

医薬・ヘルスケア業界は7つの分野に分かれています。①新薬メーカー(武田薬品工業・アステラス製薬・第一三共)、②後発医薬品メーカー(沢井製薬・東和薬品)、③受託の会社(開発や製造を請け負うCRO・CDMO)、④医薬品卸(メディパルホールディングス・アルフレッサホールディングス)、⑤医療機器(テルモ・オリンパス・シスメックス)、⑥検査・診断、⑦一般用医薬品・ヘルスケア(大正製薬…

38分読み終わるまで
35章見出し
CCampi編集部(執筆)・公開 2026.09.23
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製薬会社の仕事は、研究だけではありません。

ひとつの薬が世に出るまでには、研究、動物での試験、人での試験、国の審査、工場での製造、医師への情報提供——という長い道のりがあります。

その各段階に、別々の職種があります。薬学部でなくても関われる仕事が数多くあります。

この記事では、医薬・ヘルスケア業界を7つの分野に分けたうえで、薬ができるまでの流れ、職種、年収の調べ方、選考での確認事項まで通しで整理します。

この記事について:本記事は就職活動のための業界の案内で、薬や治療の効果・安全性について説明するものではありません。出てくる社名は「その分野にこういう会社がある」という例で、順位付けでも推奨でもありません。売上・シェア・年収などの数値は書いていません。(詳しい注記は記事の最後にあります)

この記事を7枚で

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業界の地図|7つの…薬ができるまでの…①新薬メーカー|研…②後発医薬品メーカ…③受託の会社(CRO…この記事

この記事の流れ

医薬・ヘルスケア業界とは

医薬・ヘルスケア業界は7つの分野に分かれています。

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「医薬品」と「医療機器」は別の制度です同じ医療の業界ですが、薬と機器では、承認の仕組みも、売り方も、求められる職…
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1社が複数の分野にまたがります医療機器と医薬品の両方を手がける会社、化学メーカーが医薬事業を持つ場合、カ…
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病院・薬局・介護は別の業界です医療機関、調剤薬局、介護事業者はサービスを提供する側で、メーカーとは別の業…

業界の地図|7つの分野

まずこの表を頭に入れてください。

同じ医療の業界ですが、薬と機器では、承認の仕組みも、売り方も、求められる職種も違います。まとめて「医療業界」と考えると混乱します。

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時間がかかる産業ですひとつの薬が世に出るまで長い年月がかかると説明されます。
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止める判断も仕事のうちです試験の結果が想定と違えば、開発は中止されます。
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制度の詳細は公的機関で確認してください承認や審査の手続きは法令で定められ、改正されることがあります。

薬ができるまでの流れ

この流れが、そのまま職種の地図になります。

ひとつの薬が世に出るまで長い年月がかかると説明されます。そして候補の多くは途中で開発が中止されます。これは仕事の性質に直結します。

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「パイプライン」を見てください各社は開発中の薬の候補を一覧で公表しています。これをパイプラインと呼びます。
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特許が切れると状況が変わります特許の期間が終わると、同じ有効成分の後発医薬品が発売できるようになります。
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手段が広がっています薬のつくり方には、化学的に合成するもの、生物のしくみを使ってつくるもの、細…

①新薬メーカー|研究開発が中心にある

新しい薬を生み出すことを事業にしている会社です。

各社は開発中の薬の候補を一覧で公表しています。これをパイプラインと呼びます。会社サイトのIRのページにあります。ここを見ると、その会社がどの病気の領域に力を入れ、どの段階まで進んでいるかが分かります。

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「同じ成分をつくるだけ」ではありません有効成分が同じでも、錠剤の形、溶け方、飲みやすさ、安定性は製剤の設計で決ま…
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供給の安定が課題として語られますこの分野では安定して供給し続けることが重要な課題として語られます。
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製造・品質の職種が多い新薬メーカーに比べ、研究職の割合は小さく、生産・品質に関わる職種の比重が大…

②後発医薬品メーカー

特許が切れた薬と同じ有効成分の薬をつくる会社です。

有効成分が同じでも、錠剤の形、溶け方、飲みやすさ、安定性は製剤の設計で決まります。ここに技術があります。また、決められた基準を満たすことを確かめる試験が必要です。製造と品質の比重が大きい事業だと言えます。

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なぜ受託の会社があるのか臨床試験の運営には多くの人手と専門の知識が必要です。
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未経験から専門職に入る道でもあります臨床開発に関わる職種は、受託の会社で経験を積むという道があります。
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製造の受託も広がっています新しい手段(細胞や遺伝子を用いるものなど)では、製造の設備と技術が特殊にな…

③受託の会社(CRO・CDMO・CSO)

製薬会社の仕事の一部を請け負う会社があります。

会社の例としては、シミックホールディングス、イーピーエス、新日本科学などがあります。臨床試験の運営には多くの人手と専門の知識が必要です。

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まずこの表を頭に入れてください。業界の地図|7つの分野
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この流れが、そのまま職種の地図になります。薬ができるまでの流れ
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新しい薬を生み出すことを事業にしている会社です。①新薬メーカー|研究開発が中心にある
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特許が切れた薬と同じ有効成分の薬をつくる会社です。②後発医薬品メーカー

まとめ

この記事の要点

①新薬メーカー(武田薬品工業・アステラス製薬・第一三共)、②後発医薬品メーカー(沢井製薬・東和薬品)、③受託の会社(開発や製造を請け負うCRO・CDMO)、④医薬品卸(メディパルホールディングス・ア…

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第1部 どんな会社があるか|7つの分野と薬ができるまで

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01業界の地図|7つの分野

まずこの表を頭に入れてください。

分野 何をする会社か 例
①新薬メーカー 新しい薬を研究し、開発し、販売する 武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、中外製薬、塩野義製薬、小野薬品工業、協和キリン
②後発医薬品メーカー 特許の切れた薬と同じ有効成分の薬をつくる サワイグループホールディングス、東和薬品
③受託(CRO・CDMO) 開発や製造をメーカーから請け負う シミックホールディングス、イーピーエス、新日本科学
④医薬品卸 薬を医療機関・薬局に届ける メディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングス
⑤医療機器 診断や治療に使う機器・器具をつくる テルモ、オリンパス、ニプロ、日本光電工業、島津製作所
⑥検査・診断 検査機器・試薬、臨床検査のサービス シスメックス、H.U.グループホールディングス
⑦一般用医薬品・ヘルスケア 薬局・店頭で買える薬、健康関連の商品 大正製薬ホールディングス、ロート製薬、久光製薬、小林製薬

「医薬品」と「医療機器」は別の制度です

同じ医療の業界ですが、薬と機器では、承認の仕組みも、売り方も、求められる職種も違います。まとめて「医療業界」と考えると混乱します。

1社が複数の分野にまたがります

医療機器と医薬品の両方を手がける会社、化学メーカーが医薬事業を持つ場合、カメラや写真の技術を医療に展開した会社——社名からは事業が分かりません。

どの事業でいくら稼いでいるかは有価証券報告書のセグメント情報に書かれています。読み方は21章で説明します。

病院・薬局・介護は別の業界です

医療機関、調剤薬局、介護事業者はサービスを提供する側で、メーカーとは別の業界です。本記事ではメーカーと、それを支える会社を扱います。

02薬ができるまでの流れ

この流れが、そのまま職種の地図になります。

①基礎研究(候補を見つける)②非臨床試験(人に使う前の確認)③臨床試験(人で確かめる)④承認申請・審査(国の判断)⑤製造・情報提供・安全性の管理各段階に、それぞれ専門の職種がある

薬ができるまでの流れ。職種はこの段階に沿って分かれている。

段階 やること 関わる職種
①基礎研究 病気の仕組みを調べ、薬の候補を探す 研究職
②非臨床試験 人に使う前に、性質と安全性を調べる 研究職、安全性研究
③臨床試験 医療機関の協力を得て、人で確かめる 臨床開発、データ管理、生物統計
④承認申請・審査 資料をまとめて国に申請し、審査を受ける 薬事(regulatory)
⑤製造 決められた基準に沿って安定して製造する 生産技術、品質管理、品質保証
⑥情報提供 医療関係者に適正な使用のための情報を届ける MR、メディカル部門
⑦発売後の管理 安全性の情報を集め、必要な対応をとる 安全性情報(PV)

時間がかかる産業です

ひとつの薬が世に出るまで長い年月がかかると説明されます。そして候補の多くは途中で開発が中止されます。

これは仕事の性質に直結します。自分が関わったものが世に出ないことがある——この前提を知らずに入ると、ギャップが生まれます。

止める判断も仕事のうちです

試験の結果が想定と違えば、開発は中止されます。続けるか止めるかを、データに基づいて判断する——これもこの業界の重要な仕事です。

制度の詳細は公的機関で確認してください

承認や審査の手続きは法令で定められ、改正されることがあります。厚生労働省やPMDAの情報で確認してください。

03①新薬メーカー|研究開発が中心にある

新しい薬を生み出すことを事業にしている会社です。

1研究開発の比重売上に対する研究開発費の割合が高いと説明される
2特許特許によって一定期間、独占的に販売できる
3領域の選択がん、中枢神経、免疫など、力を入れる領域を決めている
4海外展開海外で販売する、海外の会社と提携する

「パイプライン」を見てください

各社は開発中の薬の候補を一覧で公表しています。これをパイプラインと呼びます。会社サイトのIRのページにあります。

ここを見ると、その会社がどの病気の領域に力を入れ、どの段階まで進んでいるかが分かります。志望動機の材料としては最も具体的な資料です。

特許が切れると状況が変わります

特許の期間が終わると、同じ有効成分の後発医薬品が発売できるようになります。この変化は各社の業績に影響します。

だから新薬メーカーは次の新薬を継続して出すことが課題になります。中期経営計画にこの方針が書かれています。

手段が広がっています

薬のつくり方には、化学的に合成するもの、生物のしくみを使ってつくるもの、細胞や遺伝子を用いるものなど複数の方法があります。会社によって力を入れる手段が違います。

専門用語では「モダリティ」と呼ばれます。手段が違えば、必要な研究者の専門も、工場の設備も変わります。

04②後発医薬品メーカー

特許が切れた薬と同じ有効成分の薬をつくる会社です。

新薬メーカー 後発医薬品メーカー
事業の中心 新しい薬を生み出す 同じ有効成分の薬を安定して供給する
競争の軸 開発力、領域の選択 製造の効率、品質、供給の安定、品目の数
研究の中身 候補の探索、臨床試験 製剤の設計、同等性の確認

「同じ成分をつくるだけ」ではありません

有効成分が同じでも、錠剤の形、溶け方、飲みやすさ、安定性は製剤の設計で決まります。ここに技術があります。

また、決められた基準を満たすことを確かめる試験が必要です。製造と品質の比重が大きい事業だと言えます。

供給の安定が課題として語られます

この分野では安定して供給し続けることが重要な課題として語られます。製造や品質管理の職種の責任が重い領域です。

各社の取り組みは、会社サイトや有価証券報告書の「事業等のリスク」に記載があります。

製造・品質の職種が多い

新薬メーカーに比べ、研究職の割合は小さく、生産・品質に関わる職種の比重が大きい傾向があります。工場での仕事に関心があるなら、検討する価値のある分野です。

05③受託の会社(CRO・CDMO・CSO)

製薬会社の仕事の一部を請け負う会社があります。

1CRO臨床試験の運営・管理などの開発業務
2CDMO・CMO医薬品の製造(開発段階から量産まで)
3CSO医療関係者への情報提供の業務
4SMO臨床試験を実施する医療機関側の支援

会社の例としては、シミックホールディングス、イーピーエス、新日本科学などがあります。

なぜ受託の会社があるのか

臨床試験の運営には多くの人手と専門の知識が必要です。すべてを自社で抱えると、開発が多いときと少ないときで人員の過不足が生じます。

そのため専門の会社に委託する形が広がっています。製薬会社の中の仕事を、別の会社が担っていると考えてください。

未経験から専門職に入る道でもあります

臨床開発に関わる職種は、受託の会社で経験を積むという道があります。会社によっては、入社後の研修で必要な知識を学ぶ仕組みを設けています。

研修の内容は採用ページや募集要項で確認してください。

製造の受託も広がっています

新しい手段(細胞や遺伝子を用いるものなど)では、製造の設備と技術が特殊になります。専門の会社に製造を委託する形があります。

化学・素材業界の会社がこの領域に参入している例もあります。業界の全体像は化学・素材業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。

06④医薬品卸|薬を届ける仕組み

薬は、メーカーから直接病院に届くわけではありません。

間に医薬品卸が入ります。全国の医療機関と薬局に、必要な薬を必要なときに届ける役割です。

1物流温度管理を守って、全国に配送する
2在庫多数のメーカーの多数の品目を在庫する
3価格の交渉医療機関・薬局との取引条件を決める
4情報提供供給の状況や制度の変更を伝える
5緊急時の対応急に必要になった薬を届ける

「命に関わる物流」です

薬が届かないと治療ができません。災害時にも供給を続けることが求められる事業です。

温度管理が必要な薬もあり、決められた条件を守って運ぶ仕組みが整えられています。

就活での位置づけ

卸はメーカーより名前が知られていませんが、規模の大きい会社があります。営業、物流、情報システムなどの職種があります。

「医療に関わりたいが、研究職は考えていない」という人にとって、選択肢のひとつになります。

制度の影響を受けます

薬の価格は公定価格(薬価)として国が定める仕組みがあります。この仕組みは卸の事業にも影響します。詳しくは25章で扱います。

07⑤医療機器|ものづくりの業界でもある

ここは機械・電機の技術が生きる分野です。

種類 例 会社の例
治療に使う機器 手術に使う器具、カテーテル テルモ、オリンパス、朝日インテック
診断に使う機器 画像を撮る装置、生体情報を測る装置 キヤノンメディカルシステムズ、富士フイルム、日本光電工業、島津製作所
検査に使う機器・試薬 血液などを分析する装置と試薬 シスメックス
消耗品・器具 注射器、輸液の器具など ニプロ、テルモ
眼・その他 眼内レンズ、内視鏡関連など HOYA、オリンパス

機械系・電気系・情報系の入口です

医療機器は機械、電気、材料、ソフトウェアの技術でできています。薬学や生物の専攻でなくても、専門が直接生きる分野です。

電機・電子業界の会社が医療機器を手がけている例もあります。全体像は電機・電子業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。

使う人は医療従事者です

機器を実際に使うのは医師や看護師、検査技師です。だから現場で使いやすいかが性能と同じくらい重要になります。

そのため、医療機関に出向いて使い方を説明し、立ち会う職種があります。機器によっては手術に立ち会うこともあります。

承認の仕組みが薬と違います

医療機器にも国の審査の仕組みがありますが、薬とは別の制度です。機器の種類によって手続きも異なります。

制度の詳細は厚生労働省やPMDAの情報で確認してください。

08⑦一般用医薬品・ヘルスケア

店頭で買える薬と、健康に関する商品の分野です。

分野 内容 会社の例
一般用医薬品 薬局・ドラッグストアで買える薬 大正製薬ホールディングス、ロート製薬、久光製薬、小林製薬
スキンケア・目薬など 日常的に使う製品 ロート製薬など
機能性を表示する食品 制度に沿って機能を表示する食品 製薬・食品の各社

消費財に近い仕事になります

この分野は消費者が自分で選んで買う商品です。だからブランド、広告、売り場が重要になり、マーケティングの仕事が生まれます。

同じ製薬会社でも、医療用の薬と一般用の薬では売り方がまったく違うということです。

広告には決まりがあります

医薬品の広告には法令上の決まりがあります。何をどう表現できるかが定められており、自由に宣伝できるわけではありません。

制度の詳細は公的機関の情報で確認してください。

小売との関係が生まれます

ドラッグストアやスーパーの売り場に置いてもらう必要があるため、小売との取引が営業の仕事になります。食品・日用品の業界と近い構造です。

食品・飲料業界の商流は食品・飲料業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。

09制度が事業の前提になる業界です

この業界は、法令を知らないと理解できません。

1承認国の審査を経なければ販売できない
2価格医療用医薬品の価格は公定価格として定められる仕組みがある
3製造定められた基準に沿って製造・品質管理を行う
4臨床試験定められた基準に沿って実施する
5広告表現できる内容に決まりがある
6安全性発売後も情報を集め、報告する義務がある

「基準に沿う」ことが仕事になります

製造も試験も、決められた手順を守り、記録を残すことが求められます。この考え方は、工場でも研究でも共通です。

だからこの業界では、手順と記録を大事にできるかが働くうえでの前提になります。

制度は変わります

制度は改正されることがあります。数年前の書籍やサイトの説明が現状と合っていないことがあるため、確実なのは公的機関の情報です。

就活の段階で細部まで覚える必要はありません。「制度で決まっている」という前提を知っているだけで十分です。

面接で制度の話をするときの注意

うろ覚えの制度の話は避けてください。正確でない説明は、かえって印象を悪くします。触れるなら、出どころを言える範囲にとどめてください。

10医薬品の工場で働くということ

厳密に管理された製造の現場です。

特徴 内容
手順の厳守 決められた手順書に沿って作業し、逸脱があれば記録し対応する
清浄度の管理 区域ごとに清浄度が定められ、入室の手順がある
記録 いつ誰が何をしたかを記録として残す
検査 出荷前に品質を確認する
監査 社内・社外の監査を受ける

品質管理と品質保証は別の仕事です

品質管理は「測る」仕事、品質保証は「仕組みを保証する」仕事——という分け方がよくされます。募集要項でも区別されていることがあります。

どちらも化学・生物系の知識が生きる職種です。研究職以外の選択肢として検討できます。

工場は地方にあることがあります

医薬品の工場は都市部から離れた場所にあることがあります。配属される可能性のある場所は、有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。

新しい手段では設備が変わります

細胞や生物のしくみを使う製品では、従来の化学合成とは違う設備と管理が必要になります。各社がどんな製造の設備に投資しているかは、決算説明資料に記載があります。

11グループ関係と提携の見方

この業界は、会社同士の提携が多い分野です。

1導入・導出他社が開発した候補の権利を得る/自社の候補を他社に渡す
2共同開発複数の会社で開発や販売を分担する
3買収会社ごと取得して、開発中の候補や技術を得る
4大学・研究機関との連携基礎研究の成果をもとに開発を進める

「自社で全部やる」とは限りません

新しい薬の候補は、大学や小さな企業(創薬ベンチャー)から生まれることもあります。それを製薬会社が引き継いで開発を進める形があります。

だから「どこから候補を得ているか」も会社の特徴になります。プレスリリースを見ると、提携の動きが分かります。

採用の主体を確認してください

グループ企業では、持株会社と事業会社のどちらが採用の主体かで応募先が変わります。募集要項の「雇用元」の記載を確かめてください。

会社の調べ方全般は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。

12どの大学から何人入っているか

これは公表されている場合があります。

1大学の就職実績自分の大学から、どの会社に何人就職しているか
2学部・研究科ごとの進路資料専攻別・職種別の進路先が分かる場合がある
3キャリアセンターの資料過去の応募状況、OB・OG名簿

職種まで分かると価値が上がります

この業界は職種別採用が多いため、「どの会社に、どの職種で入ったか」が分かると、参考になる度合いが上がります。

薬学系や生命科学系の学部では、職種まで記載された資料があることがあります。

この数字の使い方

「この大学からは入れる/入れない」という判断には使わないでください。年度によって変わりますし、人数は採用の規模にも左右されます。

使い道はOB・OGがいるかを確かめる材料です。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。

第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所

13職種の全体像

この業界は、職種の名前が独特です。

職種 やること 段階
研究(創薬) 薬の候補を探し、性質を調べる ①②
非臨床・安全性研究 人に使う前の試験を計画し実施する ②
臨床開発 臨床試験を計画し、医療機関と進める ③
データマネジメント 試験で集まるデータを管理する ③
生物統計 試験の設計と結果の統計的な解析を行う ③
薬事 申請資料をまとめ、審査への対応を行う ④
生産技術・製剤 安定して製造できる形にする ⑤
品質管理 原料と製品を試験して確かめる ⑤
品質保証 品質を守る仕組みを整え、出荷を判断する ⑤
MR 医療関係者に適正使用のための情報を届ける ⑥
メディカル部門 医学・科学的な情報のやりとりを担う ⑥
安全性情報 発売後の安全性の情報を集め、評価し報告する ⑦
知的財産 特許の出願・管理・調査 全体

職種別に募集されることが多い

他の業界に比べ、入社時点で職種が決まる募集が多いのがこの業界の特徴です。だから応募の段階で、どの職種に進みたいかを決める必要があります。

研究職の募集は限られます

研究職は人数が限られ、修士・博士を対象とする募集であることがあります。応募資格は募集要項に明記されているので確認してください。

研究以外にも、科学の知識を使う職種は数多くあります。臨床開発、薬事、品質、安全性情報——いずれも専門性の高い仕事です。

14臨床開発という仕事

人で確かめる試験を、計画し、動かす仕事です。

1計画をつくる何を、どんな方法で確かめるかを設計する
2医療機関と進める協力いただく施設と手続きを整え、進行を確認する
3データを集める決められた手順で記録を集め、品質を確かめる
4解析する統計の手法で結果を評価する
5資料にまとめる承認申請のための資料を作成する

手順と記録がすべての仕事です

臨床試験は定められた基準に沿って実施することが法令で求められます。決められた手順を守り、記録を残すことが、この仕事の中心です。

研究で実験ノートを丁寧に付けてきた経験は、そのまま生きます。

人と進める仕事でもあります

医療機関の医師やスタッフ、社内の各部門、受託の会社——多くの人と調整しながら進めます。理系の仕事ですが、実験室にこもる仕事ではありません。

専攻の幅は広い

薬学、生物、農学、医学系のほか、統計やデータを扱う専攻にも入口があります。データマネジメントや生物統計は、統計・情報系の知識が直接生きる職種です。

研究の整理の仕方は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で扱っています。

15MRという仕事

医療関係者に、薬の情報を届ける職種です。

MRは医薬情報担当者の略称です。医師や薬剤師に対して、適正な使用のための情報を提供し、現場からの情報を収集して社内に伝えます。

1情報提供効能・用法・副作用などの情報を正確に伝える
2情報収集使用の状況や副作用に関する情報を集める
3社内への連携集めた情報を安全性やメディカルの部門に伝える
4勉強会の調整医療機関向けの説明の場を設ける

一般的な営業職とは前提が違います

医薬品の情報提供には法令や業界の決まりがあります。何をどう伝えられるかが定められており、自由に売り込む仕事ではありません。

この前提を理解していないと、面接での受け答えがずれます。

文系からの入口になります

MRは文系出身者も多く採用されてきた職種です。入社後に医学・薬学の知識を学ぶ研修が用意されていることがあります。

研修の内容と期間は、採用ページや募集要項で確認してください。

担当エリアと異動

MRには担当する地域と医療機関があります。そのため転居を伴う異動が起こることがあります。募集要項の転勤の記載を確認してください。

会社ごとに方針が違います

情報提供のあり方は会社によって考え方が異なり、体制を見直す動きも報じられています。志望する会社がどんな方針かは、中期経営計画や採用ページで確認してください。

16薬事・安全性情報という仕事

あまり知られていませんが、この業界の中核にある職種です。

職種 やること
薬事 承認申請の資料をまとめ、審査への対応を行う。制度の変更に対応する
安全性情報 発売後の副作用などの情報を集め、評価し、必要な報告を行う
品質保証 製造と品質の仕組みが基準を満たしているかを保証する

薬事は「翻訳者」に近い仕事です

社内の研究・開発の結果を、審査を受けられる形の資料にまとめます。科学の内容と、制度の要求の両方が分かっている必要があります。

制度は改正されるため、最新の要求を把握し続けることも仕事のうちです。

安全性情報は発売後もずっと続きます

薬は発売されて終わりではありません。使われ続ける限り、情報を集め、評価する必要があります。法令で定められた業務です。

この職種は人の安全に直接関わる仕事です。正確さと責任が求められます。

英語を使う場面があります

海外で開発・販売する会社では、海外の当局向けの資料や、海外拠点とのやりとりが発生することがあります。語学の要否は会社と職種によります。

採用ページに語学の目安が書かれている場合は、それが実態に近いと考えてよいでしょう。

17専攻と職種の関係

薬学部でなくても、入口は数多くあります。

1薬学研究、臨床開発、薬事、品質、安全性情報、MR
2生物・生命科学研究、非臨床、品質管理、臨床開発
3化学合成研究、製剤、品質管理、原薬の製造
4農学・獣医非臨床、安全性研究、品質
5統計・数学・情報生物統計、データマネジメント、解析
6機械・電気医療機器の設計、製造設備、生産技術
7文系MR、営業(機器・卸)、人事、経理、法務、知財の実務

統計とデータの専攻は強い

臨床試験は統計の設計と解析が中核にあります。データを扱える人は、この業界で専門性を発揮できます。

医療機器なら工学系がまっすぐ生きます

医療機器は機械・電気・材料・ソフトの技術でできています。「医療に関わりたいが理学・薬学ではない」という人には、まっすぐな道です。

研究テーマは一致しなくて構いません

会社が見ているのはどう課題を立て、どう確かめたかという進め方であることが一般的です。扱った手法や、再現性を確かめた経験が材料になります。

18勤務地と配属

職種によって、働く場所がはっきり分かれます。

1研究研究所。数か所に集約されていることが多い
2臨床開発・薬事・安全性本社。都市部であることが多い
3生産・品質工場。地方に立地することがある
4MR・営業全国の支店・営業所。転居を伴う異動があり得る
5医療機器の技術サービス顧客の医療機関の近く

確認の手順

①有価証券報告書の「設備の状況」で研究所・工場の所在地を見る。②採用ページの「勤務地」欄を見る。③募集要項の転勤の有無を見る。この3つで、どこで働く可能性があるかはおおむね把握できます。

MRは異動の範囲を確認してください

担当エリアが変わることで転居を伴う異動が起こることがあります。範囲(全国か、地域限定か)は会社によって違い、地域限定の区分を設けている会社もあります。

募集要項に記載があるので確認してください。

研究所の場所は限られます

研究職は研究所のある場所で働くことになります。数が限られるため、勤務地の選択肢は少なくなります。配属の可能性がある拠点を、事前に確認してください。

19海外で働く道

この業界は、開発も販売も国境を越えます。

1国際共同での臨床試験複数の国で同時に進む試験に関わる
2海外当局への対応海外の制度に沿った申請の資料を扱う
3海外拠点の駐在海外の開発・販売の拠点に赴任する
4提携先とのやりとり海外の企業や研究機関と共同で進める

英語の必要度は職種で分かれます

臨床開発や薬事では英語の資料を読む機会があります。一方、国内の営業や工場の職種では、使う機会が限られることがあります。

採用ページに語学の目安が書かれている場合は、それが実態に近いと考えてよいでしょう。記載がなければ説明会で聞いてください。

海外の比率を数字で確かめてください

海外で働きたいなら、まずその会社に海外の事業があるかを確かめてください。セグメント情報の地域別の区分で分かります。

外資系という選択肢もあります

海外の製薬会社の日本法人も採用を行っています。職種の区分や働き方が国内企業と異なることがあるため、募集要項をよく読んでください。

第3部 自分で調べる|一次資料と年収

20年収を自分で調べる方法

就活サイトの年収ランキングではなく、会社が出している数字を見てください。

知りたいこと どこに載っているか
全従業員の平均年収 有価証券報告書【企業の概況】「従業員の状況」の平均年間給与
初任給 各社の募集要項・採用ページ
賞与の回数・時期 募集要項
諸手当 募集要項の手当欄
昇給の時期 募集要項

平均年間給与の注意点

これは全従業員の平均です。新卒の初任給ではありません。また年齢構成や職種構成で変わります。平均年齢が高い会社は高く出やすく、若い会社は低く出やすい——それだけのことです。

同じ欄に平均年齢と平均勤続年数も載っています。3つをセットで見ると、数字の意味が分かります。

職種によって働き方が違います

この業界では、営業職(MR)に担当エリアがあり、転居を伴う異動が起こることがあります。それに伴う手当や住宅の制度があるかは、募集要項と福利厚生のページで確認できます。

持株会社の数字に注意してください

持株会社(ホールディングス)の有価証券報告書に載る平均年間給与は、持株会社に所属する社員だけの数字であることがあります。実際に働く事業会社とは別です。誰の数字を見ているのかを、従業員数と合わせて確認してください。

手取りは額面と違います

提示される金額は額面です。ここから税と社会保険料が引かれます。額面だけで生活設計をすると、想定より少なくて驚くことになります。募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。

21有価証券報告書の使い方

この業界を調べるときの、いちばん確実な資料です。

上場企業が年に1回、法律に基づいて出す書類です。金融庁のEDINETで誰でも無料で読めます。各社のサイトのIR(投資家向け情報)にも置かれています。

1【企業の概況】主要な経営指標数年分の売上・利益・従業員数の推移
2【企業の概況】従業員の状況従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与
3【事業の状況】事業の内容何をつくって(何を扱って)誰に売っているか
4【事業の状況】事業等のリスク会社自身が挙げているリスク
5【事業の状況】研究開発活動どの分野に開発の力を入れているか
6【設備の状況】事業所・工場の所在地と設備投資の計画
7【経理の状況】セグメント情報事業ごとの売上と利益

医薬・ヘルスケア業界では、ここを重点的に見てください

①セグメント情報——医薬とヘルスケア、医療機器と他の事業がどう分かれているかが分かります。1社が複数の事業を持つことがあります。

②研究開発活動——どの領域に力を入れているかが書かれています。研究職・開発職を志望するなら、ここが志望動機の材料になります。

③事業等のリスク——特許の期限、開発の失敗、薬価の見直し、規制——会社自身が何をリスクと考えているかが書かれています。この業界の性質がここに表れます。

全部読む必要はありません

最初から通読しようとすると挫折します。上の数か所だけを、志望する2〜3社で読み比べる——これで十分に差が見えます。章の名前や構成は年度・会社によって異なることがあるので、目次から探してください。

22決算説明資料・中期経営計画

有価証券報告書より読みやすく、会社の考えが出ます。

資料 何が書いてあるか どこにあるか
決算説明資料 直近の業績と、その理由の説明 会社サイトのIR
中期経営計画 数年先に何をやろうとしているか 会社サイトのIR
統合報告書 事業の考え方、人材、環境への取り組み 会社サイトのIR
質疑応答の要旨 投資家が何を気にしているか IRに掲載される場合がある

中期経営計画が志望動機の材料になります

ここには「これから何に力を入れるか」が書かれています。同じ分野の2社の計画を読み比べると、重点の置き方の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。会社が自分で書いていることなので、外れません。

図が多いので入りやすい

決算説明資料はスライド形式で、図表が中心です。専門用語の解説が付いていることもあり、業界用語を覚える教材としても使えます。まず決算説明資料を読み、興味が出たら有価証券報告書で裏を取る——この順番が効率的です。

非上場の会社の場合

非上場だと有価証券報告書がありません。その場合は会社サイトの会社概要、採用ページ、プレスリリースが主な情報源になります。情報が少ない会社では、説明会や面接で直接聞くのが確実です。聞いて失礼になる内容ではありません。

23業界団体と官庁の資料

業界全体の話を確かめたいときに使います。

発行元 分かること
厚生労働省 医薬品・医療機器の制度、薬価に関する情報
医薬品医療機器総合機構(PMDA) 承認審査、安全性情報
日本製薬工業協会 製薬産業に関する資料、業界の取り組み
日本医療機器産業連合会 医療機器産業に関する資料
日本ジェネリック製薬協会など 分野ごとの資料

使い方は「裏取り」です

就活で統計を暗記する必要はありません。使うのはニュースや説明会で聞いた話が本当かを確かめるときです。面接で業界の話をするときも、出どころを言える情報のほうが強くなります。「ニュースで見た」より「協会の資料で見た」のほうが確かです。

制度の情報は公的機関で確認してください

この業界は制度が事業の前提になっています。承認、薬価、広告、安全性情報——いずれも法令で決まっています。

制度は改正されることがあります。就活サイトや書籍の説明が古くなっていることもあるため、厚生労働省やPMDAの情報を直接見る癖をつけてください。

ニュースの読み方

記事の出どころ(誰が発表したか)をたどる癖をつけてください。発表元の資料に当たれば、記事で省かれた条件や前提が分かります。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。

24業界用語|最低限これだけ

説明会で前提として使われる言葉です。

1新薬(先発医薬品)新しく開発された薬
2後発医薬品特許が切れた薬と同じ有効成分でつくられる薬
3医療用医薬品/一般用医薬品医師の処方が必要な薬/店頭で買える薬
4非臨床試験人に使う前に行う試験
5臨床試験(治験)人で有効性と安全性を確かめる試験
6承認申請販売の承認を得るために国に申請すること
7薬価医療用医薬品の公定価格の仕組み
8パイプライン開発中の薬の候補の一覧
9モダリティ薬のつくり方・種類(低分子、抗体、細胞など)
10導入・導出他社から権利を得る/他社に権利を渡すこと
11CRO・CDMO開発や製造を請け負う会社
12MR医薬情報担当者
13安全性情報発売後に集められる副作用などの情報

意味を言えるようにしておけば十分です

深く理解している必要はありません。説明会で言葉が出たときに話についていける——その程度で構いません。制度に関する言葉は、公的機関の説明で確認してください。

25薬価という仕組みを押さえる

この業界だけの、価格の決まり方です。

医療用医薬品の価格は公定価格(薬価)として定められる仕組みがあります。会社が自由に決められるわけではありません。

1価格が定められる医療用医薬品の価格は制度に基づいて決まる
2見直しがある価格は定期的に見直される仕組みがある
3会社の業績に直結する価格の見直しは各社の売上に影響する
4制度は改正される仕組みそのものが見直されることがある

就活での使い方

細かい計算の方法を覚える必要はありません。「価格が制度で決まる産業である」という前提を知っていることが大切です。

この前提があると、各社の決算説明資料や「事業等のリスク」の記述が理解できるようになります。

正確な内容は公的機関で確認してください

薬価の制度は改正されることがあります。就活サイトや書籍の説明が古くなっていることもあるため、厚生労働省の情報で確認してください。

面接で制度の話をするなら、うろ覚えで語らないことです。正確でない説明は、かえって印象を悪くします。

医療機器や一般用医薬品は別です

医療機器の価格の仕組みは医薬品とは異なり、一般用医薬品は市場で価格が決まる商品です。分野によって前提が違うことを押さえてください。

第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項

26インターンシップの探し方

分野によって、探す場所が変わります。

1各社の採用ページいちばん確実。募集の詳細が載る
2大学のキャリアセンター大学宛に届く案内がある
3学科・研究室・ゼミ教員経由で案内が来ることがある
4就活サイト一覧で探せるが、掲載していない会社もある
5業界団体・展示会会員企業一覧や出展社一覧から会社を見つけられる

職種の名前を先に覚えてください

この業界は職種の名前が独特です。臨床開発、薬事、安全性情報、品質保証——名前を知らないと、募集を見ても何の仕事か分かりません。

13章から16章で主な職種を説明しています。先に読んでから募集要項を見ると、探し方が変わります。

研究室のつながりを使ってください

薬学・生物・化学系では、研究室に企業からの案内が届くことがあります。指導教員や先輩に、過去の進路を聞いてみてください。

参加できなくても不利になるとは限りません

インターンと選考の関係は会社によって違い、案内に記載がある場合はその記載が基準です。記載のないことを推測で補わないでください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。

27志望動機の材料を集める

材料が足りないまま書こうとするから、書けません。

1どの分野の会社か有価証券報告書「事業の内容」、セグメント情報
2何に力を入れようとしているか中期経営計画、決算説明資料
3会社自身が挙げるリスク有価証券報告書「事業等のリスク」
4どんな職種があるか採用ページ、募集要項
5実際の仕事の進み方OB・OG訪問、社員インタビュー

同じ分野の2社を読み比べてください

1社だけ読んでも、その会社の特徴は分かりません。同じ分野の2社の中期経営計画を並べると、力の入れどころの違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。

「人の役に立ちたい」だけでは足りません

この業界の志望動機で最も多い型です。ただ、それはこの業界のほぼ全社に当てはまります。

一段具体的にするには、その会社がどの疾患領域に力を入れ、どんな手段(低分子・抗体・細胞など)で取り組んでいるかまで降りてください。各社は開発中の候補の一覧を公表しています。そこまで読めば、会社名を入れ替えても成立する文章にはなりません。

書いたあとの確認

会社名を同じ分野の別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。

28選考で確認すること

聞かれる側だけでなく、聞く側にもなってください。

確認したい項目 どこで確認するか
職種別採用の区分 募集要項の職種欄
配属先の候補地(研究所・工場・支店) 募集要項、説明会での質問
転居を伴う異動の有無 募集要項の転勤欄
職種別採用か一括採用か 募集要項の職種欄
転勤の有無と範囲 募集要項
研修の内容と期間 採用ページ
雇用元がどの法人か 募集要項

確認事項は事前に書き出しておく

説明会や面接の場で思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項をメモしておくと、聞きそびれが減ります。

聞いても失礼にならない質問です

勤務地、勤務時間、転勤の有無は労働条件の基本です。募集要項に書かれるべき内容でもあります。遠慮せず確認してください。記載がない、または説明が曖昧なまま進む場合は、その点を書面で確認するようにしてください。

内定後に条件を確認する

内定の連絡を受けたら、労働条件が書面(または電子)で示されるかを確認してください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。

29選考の時期の考え方

会社ごとに違い、年度によっても変わります。

就活サイトに載っているスケジュールは一般的な目安であり、個別の会社に当てはまるとは限りません。

1エントリーの締切各社の採用ページ、届いた案内
2選考の段階と回数案内、説明会
3提出物(研究概要など)募集要項
4推薦応募の有無大学の就職担当、学科・研究室

職種別に募集されることが多い業界です

研究、臨床開発、MR、生産、品質——職種を分けて募集する会社が多くあります。職種ごとに締切も選考の進み方も違うことがあります。

複数の職種に関心がある場合は、併願が可能かどうかを募集要項で確認してください。記載がなければ聞いて構いません。

締切は一覧で管理してください

複数の分野・複数の会社に応募すると、締切がばらばらになります。会社名、応募した日、次の予定、締切の4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。

30向き不向きの考え方

性格で決めるより、仕事の進み方で考えてください。

仕事の性質 合いやすい人の例
決められた手順を守り、記録を残す 正確さを大事にできる
結果が出るまで年単位 長い時間軸で物事を進められる
途中で止まることがある 結果が出なかった過程にも意味を見いだせる
多くの部門と調整する 立場の違う人と進めるのが苦にならない
制度の要求に合わせる 決まりを読み解き、正確に当てはめられる

「人の役に立ちたい」の先を考えてください

この業界の仕事の多くは、患者さんと直接会うものではありません。研究も、薬事も、品質も、間接的に役立つ仕事です。

直接人と接したいなら、医療機関や薬局で働くという道もあります。自分が求めているのがどちらかを考えてみてください。

本記事では向き不向きの判断はしていません

上の表は仕事の性質を整理したものであり、適性の診断ではありません。実際に働いている人に一日の流れを聞き、自分で判断してください。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。

31他の業界と迷ったとき

医療に関わる道は、製薬会社だけではありません。

1化学・素材原薬や医療材料、受託製造でつながる
2食品機能性を表示する食品、健康関連の商品でつながる
3電機・精密医療機器、画像診断装置の分野で重なる
4IT・ソフトウェア医療データ、電子カルテ、試験のシステムで関わる
5物流温度管理を守って医薬品を届ける
6公務・研究機関審査、公衆衛生、基礎研究の側から関わる

業界名で絞ると同じ仕事を見逃します

「医療に関わりたい」なら、医療機器メーカー、医薬品卸、受託の会社、医療系のシステム会社という道があります。

化学・素材業界は化学・素材業界とは|全体像と分野の調べ方、電機・電子業界は電機・電子業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。同じ項目で比べてみてください。

比べる項目を先に決めてください

項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。

32やらない方がいいこと

医薬・ヘルスケア業界でとくに起きやすい失敗です。

やりがちなこと なぜ問題か
「人の役に立ちたい」で止める ほぼ全志望者が言う。会社を選んだ理由にならない
制度の話をうろ覚えで語る 正確でない説明は印象を悪くする
研究職しか見ない 臨床開発・薬事・品質・安全性という道を落とす
パイプラインを見ずに志望動機を書く その会社の力を入れている領域が分からないまま書くことになる
特定の薬の効果について断定的に語る 効果や安全性は個別に判断されるもの。就活の場で語る話ではない
転勤の範囲を確認しない 営業職では転居を伴う異動があり得る

医療の内容そのものを語りすぎないでください

志望動機で特定の病気や薬について深く語ることがあります。動機として自然な場合もありますが、効果や安全性について断定的に話すのは避けてください。

この業界の人は、情報の正確さに厳しいのが普通です。出どころを言える範囲にとどめるのが安全です。

1社の説明会を業界全体の話だと思わない

説明会で語られるのはその会社の話です。新薬メーカーと後発医薬品メーカー、医薬品と医療機器では前提が違います。最低2社は比べてください。

33相談できる窓口

一人で抱えないでください。

1大学のキャリアセンター応募の進め方、書類、過去の実績、推薦の手続き
2学科の就職担当・ゼミの教員専攻と職種のつながり、企業とのつながり
3新卒応援ハローワーク求人の相談(無料)
4労働局の総合労働相談コーナー労働条件の扱いに疑問があるとき(無料)
5弁護士法令の解釈が必要なとき

薬学系は進路資料が整っていることがあります

薬学部や生命科学系の学部では、過去の進路が職種まで含めて資料になっていることがあります。研究職、開発職、MR——どの職種に何人進んだかが分かれば、話を聞ける相手が見つかります。

条件面で疑問があるとき

提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。労働局の総合労働相談コーナーは無料で、全国にあります(予約なしで利用できる場合があります)。法令の解釈が必要な場合は弁護士にご相談ください。

34よくある質問

薬学部でないと製薬会社に入れませんか?

そうではありません。研究職では生物・化学・農学系の専攻が多く、臨床開発やデータ管理では統計・情報系、医療機器では機械・電気・材料系の専攻が生きます。MRや管理部門では文系出身者も多く働いています。応募できるかどうかは募集要項の応募資格欄で確認してください。

研究職に就くには修士や博士が必要ですか?

会社によります。研究職を修士以上の対象としている募集がある一方、他の職種では学部卒を対象とする募集もあります。応募資格は募集要項に明記されているので確認してください。なお研究職は人数が限られるため、科学の知識を使う他の職種(臨床開発、薬事、品質、安全性情報)も併せて見ることをおすすめします。

MRはどんな仕事ですか?

医療関係者に対して、薬の適正な使用のための情報を提供し、現場からの情報を収集して社内に伝える職種です。医薬品の情報提供には法令や業界の決まりがあり、自由に売り込む仕事ではありません。文系出身者も多く採用されてきた職種で、入社後に医学・薬学の知識を学ぶ研修が用意されていることがあります。

薬剤師の資格は必要ですか?

職種によります。募集要項に資格が明記されている場合はそれが基準です。多くの職種では必須とされていません。資格の有無より、その職種で求められる知識や進め方に関心があるかが大切です。

臨床開発の仕事は、実験をするのですか?

実験室での実験が中心ではありません。臨床試験の計画をつくり、医療機関と進め、集まったデータの品質を確かめ、資料にまとめる仕事です。社内外の多くの人と調整しながら進めるため、実験室にこもる仕事とは性格が違います。

開発した薬が世に出ないことがあると聞きました。

あります。試験の結果が想定と違えば開発は中止されます。これはこの業界の前提です。だからこそ、続けるか止めるかをデータに基づいて判断することも重要な仕事とされています。この点を知らずに入ると、ギャップが生まれます。

薬価の仕組みは覚えておくべきですか?

細かい計算方法を覚える必要はありません。「医療用医薬品の価格は制度に基づいて決まり、定期的に見直される仕組みがある」という前提を知っていれば、決算説明資料や「事業等のリスク」の記述が理解できます。制度は改正されることがあるため、正確な内容は厚生労働省の情報で確認してください。

後発医薬品のメーカーはどんな仕事が多いですか?

新薬メーカーに比べ、生産・品質に関わる職種の比重が大きい傾向があります。製剤の設計や、安定して供給し続けるための製造・品質管理が事業の中心にあるためです。工場での仕事に関心があるなら、検討する価値のある分野です。

医療機器と医薬品、どちらがいいですか?

本記事では優劣の判断はしていません。専攻との相性で考えてください。機械・電気・材料・ソフトの専攻なら医療機器がまっすぐ生きます。生物・化学・薬学なら医薬品の研究や品質に進みやすくなります。なお制度も売り方も別なので、別の業界として調べたほうが正確です。

志望動機に何を書けばいいか分かりません。

各社が公表しているパイプライン(開発中の候補の一覧)を見てください。どの疾患領域に力を入れ、どんな手段で取り組んでいるかが分かります。そのうえで中期経営計画を読み、会社が何を課題としているかに触れると、会社名を入れ替えても成立する文章にはなりません。

選考はいつから始まりますか?

会社ごとに違い、年度によっても変わります。職種別に募集されることが多い業界なので、職種ごとに締切や選考の進み方が違うこともあります。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。併願が可能かどうかも募集要項で確認できます。

まず何から読めばいいですか?

志望する会社のパイプラインと、有価証券報告書の「研究開発活動」「事業等のリスク」を読むのが早道です。そのあとで決算説明資料を見ると、会社が何に力を入れているかが具体的に分かります。制度に関することは、厚生労働省やPMDAの情報で確認してください。

この記事に載っていない会社もありますか?

あります。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。とくに受託の会社、原薬や医療材料を手がける会社、検査に関わる会社には、名前の知られていない企業が数多くあります。

35まとめ|流れを知って、職種から選ぶ

医薬・ヘルスケア業界は7つの分野に分かれています。①新薬メーカー、②後発医薬品メーカー、③受託の会社、④医薬品卸、⑤医療機器、⑥検査・診断、⑦一般用医薬品・ヘルスケア。

薬ができるまでの流れが、そのまま職種の地図になります。研究、非臨床、臨床開発、薬事、製造、情報提供、安全性——各段階に専門の職種があります。

薬学部でなくても関われます。生物・化学・統計・情報・機械・電気、そして文系——それぞれに入口があります。

制度が事業の前提です。承認も価格も法令で決まります。細部を覚える必要はありませんが、この前提を知らないと説明会の話が理解できません。

研究職だけを見ないでください。臨床開発、薬事、品質保証、安全性情報——科学の知識を使う専門職は数多くあります。

パイプラインを見てください。その会社がどの領域に力を入れているかが分かる、いちばん具体的な資料です。

時間がかかり、途中で止まることもあります。この前提を知ったうえで志望するかどうかを決めてください。

最後に。本記事は就職活動のための業界の案内であり、薬や治療の効果・安全性について説明するものではありません。薬や治療に関することは医師・薬剤師にご相談ください。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。制度に関することは厚生労働省・PMDAなどの公的機関の情報で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。

この記事について:本記事は業界の構造と調べ方を整理するための一般的な案内です。登場する社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。また、網羅した一覧でもありません。売上、シェア、年収、従業員数などの数値と、企業の将来性については本記事では扱っていません。数値は各社の有価証券報告書・決算説明資料や業界団体・官庁の公表資料で、募集の内容は各社の募集要項でご確認ください。有価証券報告書の章構成は年度や会社によって異なることがあります。就職のしやすさ、採用の見通し、向き不向きについても判断していません。本記事は就職活動のための業界の案内であり、医薬品・医療機器の効果・安全性・使い方について説明するものではありません。薬や治療に関することは医師・薬剤師にご相談ください。医薬品・医療機器に関する制度(承認、薬価、広告、安全性情報など)は改正されることがあるため、制度の内容は厚生労働省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの公的機関の情報でご確認ください。また、この業界は提携・買収・事業の売却が比較的多く、各社の事業内容・グループ関係・採用方針は変わることがあるため、最新の情報は各社のサイトでご確認ください。労働条件の取り扱いに疑問がある場合は労働局の総合労働相談コーナー(無料・全国・予約なしで利用できる場合があります)に、法令の解釈は弁護士にご相談ください。
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