電機・電子業界とは|全体像と分野の調べ方
電機・電子業界は6つの分野に分かれています。①総合電機(日立・三菱電機・パナソニック)、②重電・インフラ、③電子部品(村田製作所・TDK・京セラ)、④半導体関連(東京エレクトロン・ルネサス)、⑤家電・AV、⑥計測・FA(キーエンス・オムロン)。会社名からは何をしている会社か分かりません。同じ「電機」でも、扱うものも顧客も別です。見るべきは有価証券報告書のセグメント情報——ど…
「電機メーカー」と聞いて、家電を思い浮かべていませんか。
実は、売上の大半が家電ではない会社がほとんどです。
日立製作所も、三菱電機も、パナソニックも、いまの主力は企業向けの事業です。テレビや冷蔵庫は事業の一部にすぎません。
この記事では、電機・電子業界を6つの分野に分けたうえで、「その会社が何で稼いでいるか」を自分で確かめる方法まで通しで整理します。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 どんな会社があるか|6つの分野
- 業界の地図|6つの分野
- 社名から事業が分からない問題
- 「電機」と「電子」は何が違うか
- ①総合電機メーカーとは
- 総合電機は企業向けが主力です
- ②重電・社会インフラ
- ③電子部品メーカー
- 電子部品はどこに使われるか
- ④半導体関連
- ⑤家電・AV機器
- ⑥計測・FA・産業機器
- 受託でつくる会社もあります
- 自動車・通信・医療との重なり
- グループと分社の見方
- どの大学から何人入っているか
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
第3部 自分で調べる|セグメント情報と年収
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
第1部 どんな会社があるか|6つの分野
01業界の地図|6つの分野
まずこの表を頭に入れてください。
電機・電子は横に並んだ6分野。1社が複数にまたがるのが普通。
| 分野 | 何をする会社か | 例 |
|---|---|---|
| ①総合電機 | 幅広い事業を抱える大手 | 日立製作所、三菱電機、パナソニック、ソニーグループ、東芝 |
| ②重電・インフラ | 発電・送電・鉄道・昇降機など社会基盤 | 日立製作所、三菱電機、富士電機、明電舎 |
| ③電子部品 | コンデンサ・センサ・モーターなどをつくる | 村田製作所、TDK、京セラ、ニデック、ローム |
| ④半導体関連 | 半導体そのもの、またはつくる装置 | 東京エレクトロン、アドバンテスト、ルネサスエレクトロニクス |
| ⑤家電・AV | 消費者向けの製品 | パナソニック、シャープ、ソニー、JVCケンウッド |
| ⑥計測・FA | 測る機器、工場を自動化する機器 | キーエンス、オムロン、島津製作所、横河電機 |
1社が複数の分野にまたがります
自動車業界のような上下の階層とは違います。電機は横に並んだ分野で、1社がいくつもの分野を同時に手がけます。
たとえば日立製作所は①でもあり②でもあります。パナソニックは①でも⑤でも③でもあります。ソニーグループは⑤でも④でもあります。
だから「この会社は何の会社か」を一言で言えないのが普通です。ここが電機業界の分かりにくさの正体です。
答えは会社が公表しています
その会社がどの分野でいくら稼いでいるかは、有価証券報告書の「セグメント情報」に事業別の数字で書かれています。読み方は22章で説明します。
先に結論を言うと、会社名やイメージで判断せず、セグメント情報を見る——これが電機業界を調べるときの基本です。
02社名から事業が分からない問題
名前と中身が一致しない会社が多くあります。
| 会社 | 持たれやすいイメージ | 実際に手がけている領域の例 |
|---|---|---|
| 富士通 | パソコン | 企業・官公庁向けの情報システム、ネットワーク |
| NEC | パソコン | 情報システム、通信インフラ、生体認証 |
| 京セラ | 携帯電話 | セラミックス部品、電子部品、産業機器 |
| 日本ガイシ | ガイシ(電線の部品) | 自動車用セラミックス、電子部品、蓄電池 |
| セイコーエプソン | プリンタ | プリンタ、プロジェクター、水晶デバイス、産業用ロボット |
| ブラザー工業 | ミシン | プリンタ・複合機、工作機械、産業機器 |
| ミネベアミツミ | (知名度が低い) | ベアリング、電子部品、モーター |
この表は「イメージが間違っている」という話ではありません。どれも実際に手がけてきた製品です。ただし、いまの事業の中心がそこにあるとは限らない、ということです。
なぜこうなるのか
理由は2つあります。
1つは消費者向け製品だけが記憶に残ることです。企業向けの製品は店頭に並ばないので、名前と結びつきません。
もう1つは事業が移り変わることです。創業時の製品名が社名に残っていても、いまの中心が別の領域に移っていることがあります。
面接で効いてきます
イメージのまま志望動機を書くと、その会社の一部の事業についてしか語っていない文章になります。
これを防ぐ方法は1つだけです。セグメント情報を見る。事業ごとの売上と利益が数字で分かれて載っています。読み方は22章で説明します。
なお、この表に挙げた領域も「手がけている例」であって、すべてではありません。正確な事業構成は各社の有価証券報告書でご確認ください。
03「電機」と「電子」は何が違うか
扱う電気の大きさが違います。
| 電機(重電) | 電子(軽電) | |
|---|---|---|
| 扱うもの | 電気そのもの(動力) | 電気で運ぶ情報(信号) |
| 製品の例 | 発電機、変圧器、モーター、昇降機 | 半導体、センサ、通信機器 |
| 規模 | 大きい・重い | 小さい・軽い |
| 納期 | 年単位の案件が多い | 製品サイクルが速い |
「電機」と「電子」は似た言葉ですが、業界では区別されることがあります。電気を動力として扱うのが電機(重電)、情報として扱うのが電子(軽電)です。
仕事の進み方が変わります
この違いは、働き方にそのまま出ます。
発電所や鉄道向けの設備は、受注してから納めるまでに年単位かかることがあります。案件ごとに仕様が違うため、1件を長く担当します。
一方、スマートフォン向けの部品は製品の入れ替わりが速く、短い周期で開発が回ります。同じ「電機メーカー」でも、時間の流れがまったく違います。
どちらが自分に向くか
これは優劣ではなく、性質の違いです。
一つの案件をじっくり仕上げるのが好きなら重電寄り、次々に新しいものを出すのが好きなら電子寄り——という見方ができます。説明会では、この時間の単位を聞いてみてください。
なお、1社の中に重電と電子の両方がある会社も珍しくありません。その場合、配属される事業によって仕事の性質が変わります。説明会で「どの事業に配属される可能性があるか」を聞いておくと、入社後の見通しが立ちます。
04①総合電機メーカーとは
いくつもの事業を抱える大手です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 1社で複数の事業を持つ |
| 事業の幅 | インフラ、IT、部品、家電など |
| 会社の例 | 日立製作所、三菱電機、パナソニック ホールディングス、ソニーグループ、東芝、富士通、NEC |
| 職種 | 技術系・事務系ともに幅広い |
| 確認先 | 有価証券報告書のセグメント情報 |
総合電機メーカーは、1社の中に事業がいくつも入っている会社です。
「総合電機」という言い方は変わりつつあります
かつては「電機メーカー各社が同じような製品を並べて競う」構図でした。いまは各社とも事業の組み替えを進めており、同じ「総合電機」でも中身はかなり違います。
ある会社はインフラと情報サービスに寄り、別の会社は部品や素材に寄り、また別の会社はエンタメに寄る——という具合です。
だから「総合電機5社」のようにまとめて語る記事は、実態と合わなくなっていることがあります。1社ずつセグメント情報を見てください。
大きい会社ほど配属の幅が広い
事業が多いということは、配属先の候補も多いということです。
これは選択肢が広いとも言えますし、希望と違う事業に配属される可能性があるとも言えます。どちらに感じるかは人によります。
気になる場合は、説明会で「初任配属はどのように決まりますか」と聞いてください。事務的な確認事項なので、聞いて差し支えありません。
総合電機は応募が集中しやすい区分です。ただし、応募が多いことと自分に合っているかは別です。電子部品や計測・FAの会社も見たうえで、それでも総合電機がいいと思えるなら、その理由が志望動機になります。
05総合電機は企業向けが主力です
家電は事業の一部です。
BtoBの会社は消費者向けに売らないため、名前が知られにくい。
「電機メーカー=家電」という印象を持っている人は多いですが、大手各社の主力は企業向けや官公庁向けの事業であることが一般的です。
具体的に何を売っているのか
いずれも私たちが店で買うものではありません。だから名前を聞いても何をしている会社かイメージしにくいのです。
就活でどう効いてくるか
これを知らずに面接に行くと、家電の話しかできません。
「御社の冷蔵庫を使っていて」という志望動機は、その会社の売上のごく一部の話をしていることになります。悪いわけではありませんが、会社を調べていないと受け取られる可能性があります。
セグメント情報を見て、主力の事業に触れるだけで印象が変わります。調べ方は22章で説明します。
06②重電・社会インフラ
電気を「つくる・送る・動かす」分野です。
| 領域 | 製品の例 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 発電 | タービン、発電機 | 三菱重工業、東芝、日立製作所 |
| 送配電 | 変圧器、開閉装置 | 日立製作所、三菱電機、富士電機、明電舎 |
| 鉄道 | 車両制御、信号 | 日立製作所、三菱電機、東芝 |
| 昇降機 | エレベーター、エスカレーター | 三菱電機、日立製作所 |
| ビル設備 | 空調、監視システム | 三菱電機、ダイキン工業 |
社会の土台になる設備をつくる分野です。止まると困るものを扱っています。
長く使われるものをつくります
発電設備も鉄道も昇降機も、何十年も使われます。そのため、売って終わりではなく、保守・点検・更新という仕事が長く続きます。
この「売ったあとも続く仕事」は、この分野の特徴です。サービスやメンテナンスの部門が大きいのもそのためです。
規制と標準が関わります
社会インフラは法令や技術基準に沿ってつくる必要があります。国や地域によって基準が違うことも多く、そこに対応する仕事があります。
「ものをつくる」だけでなく、基準を読み、手続きを通す仕事が必要になる——これも理解しておくと、職種の見え方が変わります。
この分野は公共性が高いぶん、納期や品質の基準が厳しくなります。決められた手順を守ることが強く求められる仕事です。新しいものを速く出すことより、確実に動かすことに価値が置かれます。自分がどちらを好むかで、受け取り方が変わります。
07③電子部品メーカー
名前を知らなくても、大きい会社があります。
| つくるもの | はたらき | 会社の例 |
|---|---|---|
| コンデンサ | 電気をためる・整える | 村田製作所、太陽誘電、TDK |
| センサ | 音・光・動きを電気信号に変える | 村田製作所、TDK、オムロン |
| モーター | 電気で回す | ニデック、ミネベアミツミ |
| コネクタ | 機器どうしをつなぐ | 日本航空電子工業、ヒロセ電機 |
| セラミックス部品 | 熱や電気に強い材料の部品 | 京セラ、日本ガイシ |
| 電源・制御 | 電気を必要な形に変える | ローム、新電元工業 |
電子部品メーカーは、機器の中に入る小さな部品をつくる会社です。消費者に直接売らないため、名前が知られていないことがあります。
知名度と規模は別です
ここは自動車の部品メーカーと同じ構図です。テレビCMを出さない会社は名前が知られない——それだけのことで、規模とは関係ありません。
従業員数や拠点数は有価証券報告書で確認できます。社名を知らないという理由だけで候補から外すと、選択肢をかなり失います。
一つの部品を深く担当します
総合電機と比べると、扱う範囲は狭くなります。その代わり一つの部品を深く担当することになります。
材料の配合、加工の条件、検査の方法——同じ部品を少しずつ良くしていく仕事です。全体を見たいのか、一つを深めたいのかで、受け取り方が変わります。
電子部品メーカーは特定の顧客に売上が集中していないかも見ておくと理解が深まります。有価証券報告書の「事業等のリスク」に、会社自身が顧客の集中を課題として挙げていることがあります。
08電子部品はどこに使われるか
電機以外の業界にも入っています。
電子部品は電機業界の中だけで使われるわけではありません。自動車にも、医療にも、産業機械にも入っています。
納入先が広いと何が違うか
納入先が複数の業界にまたがっている会社は、一つの業界の動きだけで事業が決まりません。
逆に、納入先が特定の業界や特定の顧客に集中している会社もあります。どちらなのかは、有価証券報告書のセグメント情報や「事業等のリスク」で確認できます。
リスクの章には、会社自身が「特定の顧客への依存」を課題として挙げていることがあります。これは面接で課題を聞かれたときの材料にもなります。
自動車と迷っている人へ
車載向けの部品を手がける電子部品メーカーは多くあります。「自動車に関わりたい」なら、電子部品メーカーも選択肢です。
自動車業界の全体像は自動車業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。併せて読むと、どちらから入っても同じ製品に関われることが分かります。
09④半導体関連
「半導体をつくる会社」と「装置をつくる会社」は別です。
| 区分 | 何をする会社か | 会社の例 |
|---|---|---|
| 半導体メーカー | 半導体そのものを設計・製造する | ルネサスエレクトロニクス、ローム、キオクシア、ソニーセミコンダクタソリューションズ |
| 製造装置 | 半導体をつくる装置をつくる | 東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENホールディングス、ディスコ |
| 検査・計測 | できたものを調べる装置 | アドバンテスト、レーザーテック、東京精密 |
| 材料 | ウエハーや薬品をつくる | 信越化学工業、SUMCO、JSR |
「半導体業界」とまとめて言われますが、中身は大きく4つに分かれます。やることも、顧客も違います。
装置メーカーの顧客は半導体メーカーです
見落とされがちなのが、製造装置メーカーの顧客が半導体メーカーだということです。
つまり装置メーカーにとっては、半導体メーカーが取引先になります。自動車でいえば、生産設備メーカーと完成車メーカーの関係に近い構図です。
材料は化学メーカーが担っています
ウエハーや薬品といった材料は、化学・素材メーカーが手がけていることが一般的です。
そのため就職情報では「化学」に分類され、半導体で検索すると出てこないことがあります。材料に関心があるなら、化学業界も併せて探してください。
専門用語に引っ張られないでください
半導体の話は専門用語が多く、難しく感じます。ただし就活の段階で技術を理解している必要はありません。
必要なのは、その会社が4区分のどこにいて、誰に売っているかを言えることです。それは有価証券報告書の「事業の内容」に書かれています。
なお、半導体関連は景気の波を受けやすいと語られることがあります。ただし、どの会社がどう影響を受けるかは区分によっても会社によっても違います。関心のある会社の「事業等のリスク」に、会社自身の見方が書かれています。
10⑤家電・AV機器
イメージしやすい反面、誤解も多い分野です。
| 区分 | 製品の例 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 白物家電 | 冷蔵庫、洗濯機、エアコン | パナソニック、シャープ、三菱電機、ダイキン工業 |
| 調理・生活家電 | 炊飯器、掃除機、美容家電 | パナソニック、タイガー魔法瓶、アイリスオーヤマ |
| AV・映像音響 | テレビ、カメラ、オーディオ | ソニー、シャープ、JVCケンウッド |
| 事務機・プリンタ | プリンタ、複合機、プロジェクター | セイコーエプソン、ブラザー工業、キヤノン、リコー |
消費者向けの製品をつくる分野です。就活で最初に思い浮かぶのがここですが、各社の売上に占める比率は会社によって大きく違います。
「家電メーカーに入る」の意味を確かめる
大手の総合電機に入っても、家電の部署に配属されるとは限りません。
むしろ企業向け事業のほうが大きい会社が多いため、確率としては別の事業に配属される可能性があります。
家電に関わりたいなら、その会社の家電事業がどのくらいの規模かをセグメント情報で確認したうえで、配属の考え方を説明会で聞いてください。
売り方の仕事も大きい分野です
消費者向けの製品は、つくるだけでなく売る仕組みが必要です。
商品企画、マーケティング、販売店との取引、アフターサービス——BtoBの分野より、こうした仕事の比重が高くなります。文系の採用が比較的イメージしやすいのもこの分野です。
家電は他社製品と比べられやすい分野でもあります。店頭で価格や機能が横並びになるため、どう差をつけるかが問われます。商品企画やマーケティングの仕事が重いのはこのためです。
11⑥計測・FA・産業機器
工場や研究所で使われる機器です。
| 区分 | 何をする機器か | 会社の例 |
|---|---|---|
| FA・自動化 | 工場の機械を制御し自動で動かす | キーエンス、オムロン、三菱電機、ファナック |
| 分析・計測 | 成分や状態を測る | 島津製作所、堀場製作所、日本電子 |
| 制御・プロセス | プラント全体を監視・制御する | 横河電機、アズビル |
| 通信計測 | 通信機器の性能を測る | アンリツ |
この分野の顧客は工場、研究所、病院、プラントです。消費者には売りません。
あらゆる産業が顧客になります
測る機器や自動化の機器は、業界を問わず必要とされます。自動車の工場にも、食品の工場にも、医薬品の工場にも入ります。
そのため、特定の業界の動きに事業が左右されにくいという性質があります。一方で、顧客ごとに求めるものが違うため、提案や技術サポートの仕事が重くなります。
営業でも技術の知識が要ります
この分野の営業は、顧客の現場の課題を聞いて機器を提案する仕事になることが多くあります。
カタログを配る仕事ではありません。文系でも応募できる会社はありますが、入社後に技術を学ぶ前提のことがあります。研修の内容を説明会で確認してください。
12受託でつくる会社もあります
自社ブランドを持たない製造の形です。
電子機器は「設計する会社」と「つくる会社」が分かれていることがあります。
店頭に並ぶ製品の裏側
私たちが店で買う電子機器の中には、ブランドを持つ会社とは別の会社が製造しているものがあります。これは珍しいことではなく、業界では一般的な形です。
半導体でも同じ構造があります。設計に特化した会社(ファブレス)と、製造を請け負う会社(ファウンドリ)に分かれる形です。
就活でどう関わるか
こうした受託側の会社はブランドを持たないため、消費者にはまったく知られません。しかし規模が大きい会社があります。
日本国内にも、海外メーカーの生産拠点や、受託製造を担う会社があります。「有名な製品をつくる」ことに関心があるなら、つくっている側の会社も調べてみてください。
受託製造の会社は、顧客との契約上、どの製品を手がけているかを公表していないことがあります。採用ページで具体的な製品名が出てこない場合、そうした事情があると考えられます。
13自動車・通信・医療との重なり
業界の境目は曖昧になっています。
電機・電子は、ほかの業界と重なる面積がとても広い業界です。
同じ仕事が複数の業界にあります
たとえば車載ソフトを開発する仕事は、電機メーカーにも、自動車部品メーカーにも、IT企業にもあります。
つまり業界名で絞ると、同じ仕事を見逃します。「業界」ではなく「やりたい仕事」で探すと、候補の集め方が変わります。
志望動機では重なりを使えます
この重なりは、志望動機の材料になります。
「自動車に関心があるが、部品や制御の側から関わりたい」という説明は、電機メーカーに対して成立します。自分の関心と、その会社の事業がどこで接するかを書けば、その会社に向けた文章になります。
この重なりは、志望先が見つからないときの打開策にもなります。関心のある製品を思い浮かべ、それを構成する要素をたどると、関わっている会社が複数の業界に見つかります。
14グループと分社の見方
同じ名前でも別の会社です。
| 形 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| 持株会社 | グループ全体を束ねる会社 | 本体の従業員数は少ないことがある |
| 事業会社 | 実際に製品をつくる会社 | 採用はここで行うことが多い |
| 子会社 | 特定の事業や地域を担う | 条件は親会社と別 |
| 合弁会社 | 複数社が出資してつくる | どの会社の制度で働くか要確認 |
電機業界は分社化や事業の再編が多い業界です。そのため、グループの形が複雑になっていることがあります。
募集しているのがどの法人かを見る
同じブランド名でも、募集している法人が違えば別の会社です。採用も条件も勤務地も別に定められています。
募集要項の冒頭に法人名が書かれています。必ずそこを確認してください。
持株会社の数字に注意
親会社が持株会社になっている場合、持株会社単体の従業員数はごく少ないことがあります。
有価証券報告書の平均年間給与や従業員数は提出会社単体の数字なので、この場合グループ全体の実態とは大きく異なります。どの法人の数字を見ているのかを意識してください。
関係は資料で確認できます
グループ構成は有価証券報告書の「関係会社の状況」に一覧で載っています。採用ページだけを見ていると分からない情報です。
会社の調べ方全般は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。
15どの大学から何人入っているか
実際の人数が公表されています。
多くの大学は、卒業生の「主な就職先」を就職者数つきで公表しています。それを企業ごとに集計すると、どの大学からどの会社に何人入っているかが見えます。
Campiの企業図鑑に掲載している電機メーカーについて合算したのが、次の表です。
| 順位 | 大学 | 掲載企業への就職者(合算) |
|---|---|---|
| 1 | 大阪大学 | 187人 |
| 2 | 関西大学 | 118人 |
| 3 | 東京理科大学 | 102人 |
| 4 | 立命館大学 | 90人 |
| 5 | 神戸大学 | 81人 |
| 6 | 同志社大学 | 76人 |
| 7 | 早稲田大学 | 69人 |
| 8 | 東京科学大学 | 64人 |
| 9 | 法政大学 | 63人 |
| 10 | 明治大学 | 63人 |
| 11 | 東北大学 | 62人 |
| 12 | 名古屋大学 | 62人 |
| 13 | 北海道大学 | 58人 |
| 14 | 関西学院大学 | 53人 |
| 15 | 筑波大学 | 52人 |
対象:企業図鑑に掲載の電機・メーカー(17社)/2027年版/主に2026年3月卒データ/登場する大学39校・延べ1634人
掲載企業:富士電機、東芝、キーエンス、シャープ、ソニーグループ、セイコーエプソン、日立製作所、三菱電機、富士通、NEC、パナソニック、ダイキン工業、村田製作所、日本ガイシ、ブラザー工業、京セラ、ミネベアミツミ
半導体関連は別に集計しています
半導体メーカー・製造装置メーカーは分野の性質が違うため、分けて集計しています。
| 順位 | 大学 | 掲載企業への就職者(合算) |
|---|---|---|
| 1 | 熊本大学 | 81人 |
| 2 | 東京理科大学 | 46人 |
| 3 | 九州大学 | 42人 |
| 4 | 京都大学 | 34人 |
| 5 | 九州工業大学 | 32人 |
| 6 | 東北大学 | 25人 |
| 7 | 三重大学 | 15人 |
| 8 | 電気通信大学 | 15人 |
| 9 | 筑波大学 | 13人 |
| 10 | 名古屋大学 | 11人 |
対象:企業図鑑に掲載の半導体・電機(7社)/2024年版/主に2023年3月卒データ/登場する大学14校・延べ329人
掲載企業:キオクシア、東京エレクトロン、Japan Advanced Semiconductor Manufacturing、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、ソニーセミコンダクタソリューションズ、ルネサスエレクトロニクス、ローム
順位が低くても不利という意味ではありません
この表でいちばん誤解されやすいのが、順位を「大学の強さ」だと読んでしまうことです。
数字の元は各大学が自分で公表した資料ですが、どこまで載せるかは大学によって違います。上位30社まで載せる大学もあれば、数社しか載せない大学もあり、公表していない大学もあります。
つまり人数が少ない=その会社に入っていない、ではありません。自分の大学が表になくても、応募できないわけでも採用実績がないわけでもありません。確実なのは、自分の大学のキャリアセンターで実績を確認することです。
使いどころは「情報源探し」です
就職者が多い大学には、その会社の卒業生がいる可能性が高く、OB・OG訪問の手がかりになります。過去の選考情報がキャリアセンターに蓄積されていることもあります。
会社名・大学名はどちらもリンクです。会社を選ぶ材料ではなく、情報源を見つける材料として使ってください。OB・OG訪問の進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
なお、ここに出ている会社は企業図鑑に掲載しているぶんだけです。電機・電子業界全体の一部にすぎません。表にない会社にも、就職者を出している大学は当然あります。
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
16職種の全体像
つくる工程のどこかに配置されています。
| 区分 | 職種 | やること |
|---|---|---|
| 技術系 | 研究開発 | 新しい技術や材料を探す |
| 設計・開発 | 製品の仕様を決めて設計する | |
| ソフトウェア開発 | 機器を動かすプログラムを書く | |
| 生産技術 | 工場でつくれるようにする | |
| 品質保証 | 基準を満たしているか確かめる | |
| 事務系 | 営業 | 顧客に提案し、取引をまとめる |
| 商品企画 | 何をつくるかを決める | |
| 購買・調達 | 部品や材料を買う | |
| 知的財産 | 特許を取り、守る | |
| 経理・人事・法務 | 会社の仕組みを支える |
知的財産の仕事が比較的大きい業界です
電機・電子は技術の入れ替わりが速く、特許が事業に直結します。そのため知的財産の部門を持つ会社が多くあります。
理系の知識と文章力の両方を使う仕事で、理系から事務系に近い職種に進む道のひとつでもあります。募集があるかは各社の採用ページで確認してください。
職種名は会社ごとに違います
同じ仕事でも「生産技術」「製造技術」「プロセス開発」など呼び方が分かれます。名前ではなく、募集要項の「仕事内容」の欄で判断してください。
複数社ぶん読み比べると、同じ職種名でも担当範囲が違うことが分かります。
職種で迷うときは、募集要項の「仕事内容」の欄を複数社ぶん読み比べてください。同じ職種名でも担当範囲が違うことが分かります。名前ではなく中身で比べると、自分がやりたいことに近いほうが見えてきます。
17専攻と職種の関係
一対一では対応しません。
この表は「よくある組み合わせ」であって、決まりではありません。
募集要項に対象学科が書かれていることがあります
技術系の募集では、対象となる学部・学科が記載されている場合があります。まずそこを確認してください。
記載がない場合は、応募できるかどうかを直接問い合わせることができます。推測で諦めないでください。
研究内容が直接活きるとは限りません
研究テーマと配属先が一致することもありますが、一致しないことのほうが多くあります。
選考で見られているのは研究の内容そのものより、進め方であることが一般的です。課題をどう設定し、どう確かめたか——これは分野が変わっても使えます。
経験の整理は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で扱っています。
18ハードとソフトの比重
ソフトウェアの仕事が増えています。
機器が通信につながるようになり、「つくって売る」だけで終わらない製品が増えています。
情報系の学生にも選択肢があります
「電機メーカー=ハードをつくる会社」というイメージだけで判断すると、情報系の学生は候補から外してしまいがちです。
しかし、組込ソフト、クラウド連携、データ解析の職種を置いている会社は多くあります。各社の採用ページで職種一覧を見てください。
ただし会社によって差が大きい
ソフトの比重は会社によってかなり違います。装置や部品が中心の会社と、サービスまで手がける会社では、必要とされる人も変わります。
どのくらい力を入れているかは中期経営計画に書かれていることがあります。志望動機の材料としても使えます。
なお、ハードとソフトのどちらかを選ぶ、という形になるとは限りません。機器を動かすソフトを書く仕事は、ハードの制約を理解していないと成り立ちません。逆にハードの設計でも、ソフトで何を実現するかを知らないと仕様が決まりません。両方に触れる職種が増えているのが実情です。
19勤務地と配属
工場や研究所が地方にあることがあります。
電機・電子の工場や研究所は、都市部にあるとは限りません。地方に大きな拠点を持つ会社が多くあります。
拠点の場所は資料で分かります
工場や研究所の所在地は、有価証券報告書の「設備の状況」に記載されています。会社名で検索するより確実です。
実際にどこに配属されるかは募集要項に書かれています。生活の見通しを立てたいなら、早めに確認してください。
転勤の範囲を確認する
全国転勤のコースと、地域を限定したコースを分けている会社もあります。募集要項に記載があるので確認し、記載がない場合は聞いてください。
勤務地は生活に直結します。曖昧なまま進めないでください。
寮や社宅の有無も、生活に関わる項目です。募集要項や福利厚生のページに記載があることがあります。地方の拠点に配属される可能性がある場合は、特に確認しておいてください。
20海外で働く道
海外比率が高い会社が多い業界です。
電子部品も半導体も世界の顧客に売る製品です。そのため海外拠点を持つ会社が多くあります。
海外売上比率は資料で分かります
有価証券報告書のセグメント情報には、地域別の内訳が載っていることがあります。海外比率の高い会社かどうかはここで確認できます。
ただし海外売上が多いことと、新入社員が海外に行けることは別の話です。赴任の制度や対象職種は募集要項で確認してください。
語学の記載を読む
募集要項に語学の記載がある場合、必須なのか、望ましいという水準なのかは記載によります。
記載がない場合は、入社後の研修で補う前提のこともあります。推測せず確認してください。
海外拠点の一覧は、各社のサイトの「拠点一覧」「事業所一覧」にも載っていることがあります。どの国にどんな機能の拠点があるか(生産か、販売か、開発か)まで書かれている場合は、働き方の見当がつきます。
第3部 自分で調べる|セグメント情報と年収
21年収を自分で調べる方法
有価証券報告書に載っています。
- 1金融庁のEDINET、または各社サイトのIR情報を開く
- 2有価証券報告書を探す
- 3第一部【企業情報】→ 第1【企業の概況】へ進む
- 4「従業員の状況」の項を見る
- 5平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数を確認
有価証券報告書の「従業員の状況」には、提出会社の平均年間給与が記載されているのが一般的です。
読むときの注意が4つあります
平均年間給与は、あなたが入社1年目に受け取る額ではありません。平均年齢が高い会社なら高く出ますし、若い会社なら低く出ます。平均年齢とセットで見てください。
電機業界で特に気をつける点
電機は持株会社や分社が多い業界です。持株会社の有価証券報告書に載っている数字は、持株会社単体のものです。
実際に働くことになる事業会社の数字とは別になります。自分が応募する法人の資料を見ているかを確認してください。
初任給は募集要項で確認
入社時の給与を知りたいなら、見るべきは募集要項です。初任給、手当、賞与の記載は募集要項と、後で示される書面にあります。
記載がない項目は応募先に確認してください。募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。
22有価証券報告書の使い方
就活でいちばん使える資料です。
| 章 | 分かること | 就活での使い道 |
|---|---|---|
| 事業の内容 | 何をしている会社か | 全体像をつかむ |
| 関係会社の状況 | 子会社・関連会社 | グループ構成を知る |
| 従業員の状況 | 人数・平均年齢・平均年間給与 | 規模と待遇の目安 |
| 事業等のリスク | 会社自身が挙げる懸念 | 課題を知る |
| 研究開発活動 | 何を開発しているか | 技術系の志望動機に |
| 設備の状況 | 工場・研究所の所在地 | 勤務地の見当 |
| セグメント情報 | 事業ごとの売上と利益 | 何で稼ぐ会社かを知る |
金融庁のEDINETや各社のサイトで無料で読めます。章の構成は年度や会社で多少異なるので、目次から探してください。
全部読む必要はありません
時間がないときは、①事業の内容 → ②セグメント情報 → ③従業員の状況 → ④事業等のリスクの順で読んでください。
この4つで、面接で話せる程度の理解には届きます。数字を暗記する必要はありません。どんな会社かを自分の言葉で説明できることのほうが大切です。
「事業等のリスク」が使える理由
面接で「当社の課題は何だと思いますか」と聞かれることがあります。このとき、憶測で答えるより会社自身が公表している内容を踏まえて話すほうが根拠があります。
ただし、そのまま読み上げるのではなく、自分がどう考えたかを添えてください。資料は材料であって、答えそのものではありません。
ブラウザの検索機能を使う
分量が多いので、全部を目で追う必要はありません。ブラウザの検索で「従業員の状況」「セグメント情報」と入力すれば、該当箇所にすぐ移動できます。
なお、有価証券報告書には従業員数も記載されています。従業員数と平均勤続年数を合わせて見ると、会社の規模と、人が長く働いているかどうかの目安になります。ただし事業の性質によって勤続年数の水準は違うため、業界をまたいで比べるときは注意してください。
23セグメント情報の読み方
電機業界を調べるうえで、いちばん重要な章です。
セグメント情報には事業ごとの売上と利益が載っている。章の構成は年度や会社で異なる。
セグメント情報は、会社が自分で区切った事業ごとに、売上と利益を分けて示したものです。有価証券報告書の【経理の状況】の中にあります。
何が分かるか
ここを見ると、「家電の会社だと思っていたら、売上の大半が企業向けだった」ということが分かります。イメージと実態のズレは、ここで埋まります。
売上と利益は別に見る
注意したいのは、売上が大きい事業=稼いでいる事業とは限らないことです。
売上は大きいが利益が薄い事業と、売上は小さいが利益率が高い事業が、同じ会社の中に並んでいることがあります。両方を見てください。
区分の仕方自体が情報です
事業の区切り方は会社が決めています。つまり「この会社は自分をどう捉えているか」がそのまま表れます。
製品で区切る会社、顧客で区切る会社、地域で区切る会社——区分の仕方を見るだけでも、その会社の考え方が見えます。
複数年を並べると変化が見えます
同じ会社のセグメント情報を2〜3年分並べると、どの事業の比重が上がっているかが分かることがあります。
ただし、変化の理由を推測で語らないでください。理由は中期経営計画や決算説明資料に書かれていることがあります。
セグメント情報には「報告セグメント」に含まれないものをまとめた区分が置かれることがあります。ここに新しい事業や小さな事業が入っていることがあるので、目を通しておくと会社の動きが見えます。
24決算説明資料・中期経営計画
図が多く読みやすい資料です。
| 資料 | 特徴 | 使い道 |
|---|---|---|
| 決算説明資料 | 図表が多く視覚的 | 事業の状況をつかむ |
| 中期経営計画 | これから何をするかの方針 | 志望動機の材料 |
| 統合報告書 | 事業と取り組みをまとめた冊子 | 会社の考え方を知る |
各社のサイトの「投資家情報」「IR情報」にあります。採用ページではなくIRページを見るのがポイントです。
採用ページとIRページは別物です
多くの学生は採用ページだけを見ます。しかし採用ページは学生向けに書かれた資料であり、事業の詳細は簡略化されていることがあります。
IRページは投資家向けなので事業の中身がより具体的です。図表の多い決算説明資料から入ると理解しやすくなります。
両方を見ている学生は多くありません。差がつくのはここです。
中期経営計画が志望動機に効く理由
中期経営計画にはこれから数年で力を入れる分野が書かれています。電機業界は事業の組み替えが多いため、この資料の価値が特に高くなります。
採用ページの抽象的なメッセージより、こちらのほうが具体的です。同じ分野の2社を読み比べると、力を入れている領域の違いが見えます。
資料がない会社もあります
公開の有無や形式は会社によって異なります。資料がないことを理由に会社を評価しないでください。公開の方針は会社ごとの判断です。
決算説明資料には質疑応答の要旨が公開されていることがあります。投資家が何を気にして質問しているかが分かるので、会社の論点を知る手がかりになります。
25業界団体と官庁の資料
業界単位の資料があります。
個別の会社ではなく業界全体を知りたいときは、業界団体や官庁の資料が使えます。
会員企業一覧が使えます
業界団体のサイトには会員企業の一覧が掲載されていることがあります。これは社名を知る手がかりとして役立ちます。
就活の最初の壁は「どんな会社があるか知らない」ことです。電機・電子は特にその壁が高い業界なので、一覧から名前を知り、気になった会社の採用ページを見る——という進め方が有効です。
統計を使うときの確認事項
統計を使うときは調査の範囲と時点を必ず確認してください。いつの、どこまでを含む数字なのかで意味が変わります。
また、団体に加盟していない会社もあります。団体の資料に載っていないことは、その会社がないことを意味しません。
官庁の資料では、経済産業省の生産動態統計のように、製品分野ごとの生産の状況をまとめたものがあります。ただし分類が細かく、就活で必ず必要なものではありません。業界全体の話を確かめたいときに使ってください。
26業界用語
説明会や資料で出てくる言葉です。
会社の区分を表す言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| BtoB | 企業に売る事業。Business to Business |
| BtoC | 消費者に売る事業。Business to Consumer |
| 重電・軽電 | 電気を動力として扱うか、情報として扱うか |
| セグメント | 会社が自分で区切った事業の単位 |
| EMS | 他社ブランド製品の受託製造。Electronics Manufacturing Service |
技術・ものづくりの言葉
用語は知っていれば説明会の理解が早くなる程度のもので、覚えること自体が目的ではありません。
面接で用語を並べても評価にはつながりません。意味を理解したうえで、自分の言葉で話せるかが大切です。用語の定義は資料や文脈で幅があるので、正確な意味はその資料でご確認ください。
27いま起きている構造の変化
各社が方針を公表しています。
電機業界は事業の組み替えが続いている業界です。数年前の記事に書かれている事業構成が、いまは変わっていることがあります。
古い情報に注意してください
就活サイトや業界研究本の記述は、執筆時点の事業構成に基づいています。電機はその変化が速いため、情報が実態と合わなくなっていることがあります。
確実なのは直近の有価証券報告書と決算説明資料です。会社が自分で出している最新の資料を見てください。
変化の中身は会社ごとに違います
「電機業界は厳しい」「電機は復活した」といった大きな話を見かけますが、どの会社がどう変わっているかは一律ではありません。
関心のある会社が、自社でどう説明しているかを中期経営計画で確認してください。会社自身の言葉が、いちばん確かな材料です。
ニュース記事を読むときは出典をたどってください。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
28インターンシップの探し方
分野ごとに探すと見つかります。
電機・電子でインターンを探すうえでの最初の壁は、会社名を知らないことです。BtoBの会社が多く、名前が表に出ないためです。
本記事の各分野の表や、業界団体の会員企業一覧を手がかりに、まず社名を知るところから始めてください。
参加の扱いは案内で確認
参加が本選考にどう関わるかは会社によって異なり、公表されていないことが一般的です。「インターンに出ないと不利」という話は、根拠が示されていないことがほとんどです。
案内に記載がある場合はその記載を確認してください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。
参加できなくても選択肢は残ります
インターンに参加できなかったとしても、本記事で挙げた資料は誰でも読めます。有価証券報告書も中期経営計画も、参加の有無に関係なく公開されています。
大学によっては、研究室や学科を通じて案内が届くことがあります。特に技術系では、指導教員が企業とのつながりを持っている場合があります。まず身近なところに聞いてみてください。
29志望動機の材料を集める
セグメント情報から材料を取ってください。
よくある行き違い
これらが弱いのは、他の会社でも同じことが言えてしまうためです。
同じ分野の2社を読み比べる
材料を集めるとき、同じ分野の2社の中期経営計画を並べて読むと違いが見えます。
電機は1社がいくつもの事業を持つため、同じ「総合電機」でも重点の置き方がかなり違います。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
1社だけ読むと、業界共通の話なのかその会社固有の話なのか区別できません。
自分の側の材料も要ります
会社の材料だけでは志望動機になりません。自分がなぜそこに関心を持つのかという側の材料も必要です。
書いたあとは、会社名を別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
30選考で確認すること
業界研究では分からない部分です。
業界の資料をどれだけ読んでも、募集の条件は分かりません。条件が書かれているのは募集要項と、後で示される書面です。
電機で特に聞いておきたいこと
事業が多い会社ほど、配属先の幅が広くなります。希望する分野があるなら、そこに配属される可能性があるのかを確認してください。事務的な確認事項なので、聞いて差し支えありません。
ただし、募集要項に書いてあることをそのまま聞くと、資料を読んでいないと受け取られます。先に読んでから、書いていないことを聞いてください。
労働条件の取り扱いに疑問がある場合は、労働局の総合労働相談コーナーにご相談いただけます。
確認したいことは、思いついたときにメモしておいてください。説明会や面接の場で急に思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項を書き出しておくと、その場で聞きそびれることが減ります。
31選考の時期の考え方
各社の案内で確認してください。
選考の時期は会社ごとに違い、年度によっても変わります。だから「電機業界は◯月から」という一般論は当てになりません。
分野をまたぐと管理が必要になります
総合電機、電子部品、半導体関連——複数の分野に応募する場合、それぞれ募集の時期が違うことがあります。
案内が届くたびに予定表へ記録し、会社名、応募した日、次の予定、締切の4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
前年度の情報を当てはめない
時期の情報は年度ごとに変わります。前年度の記事や先輩から聞いた話をそのまま当てはめず、今年度の案内を確認してください。
32向き不向きの考え方
事実を集めて、自分で決める話です。
「自分は電機業界に向いていますか」——これは記事が答えられる問いではありません。向き不向きは人によって違い、外から決められるものではないからです。
代わりに確認できること
その代わり、働き方の事実は確認できます。「向いているか」ではなく「この条件で働けるか」という問いに置き換えると、確認できる形になります。
特に電機では時間の流れの違いが大きな分かれ目になります。年単位の案件を担当するのか、短い周期で新製品を出し続けるのか。説明会で聞いてみてください。
実際に見てから判断する
資料だけでは分からないことがあります。工場見学やインターンに参加できる機会があれば、実際の場所を見るのがいちばん確かです。
見たうえで違うと感じたなら、それも判断の材料です。合わないと分かることにも価値があります。
働いている人に聞くと、資料では分からない日々の進み方が分かります。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
33他の業界と迷ったとき
同じ項目で並べてください。
電機と迷いやすい業界
| 迷う相手 | 重なるところ | 違うところ |
|---|---|---|
| 自動車 | 車載の電子部品・制御 | 完成品の性質と顧客 |
| IT | ソフト開発、クラウド | ものをつくるかどうか |
| 化学・素材 | 半導体材料、電池材料 | 扱う対象が材料か部品か |
| 通信 | ネットワーク機器 | 売るのが機器かサービスか |
| 機械 | 産業機械、FA | 電気と機械のどちらが主か |
電機は他業界との重なりが大きいため、迷うのが自然です。印象で比べると根拠のない結論になります。
業界名ではなく仕事で見る
車載ソフトを開発する仕事は、電機メーカーにも自動車部品メーカーにもIT企業にもあります。「やる仕事」で探すと候補の集め方が変わります。
項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。
34やらない方がいいこと
いくつかあります。
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 家電のイメージだけで判断する | 主力は企業向けであることが多い |
| 知名度で会社を判断する | BtoBの会社は知られにくいだけ |
| 数年前の業界本を鵜呑みにする | 事業構成が変わっていることがある |
| 持株会社の数字を事業会社に当てはめる | 提出会社単体の数字である |
| 平均給与を初任給と混同する | 全従業員の平均であり別物 |
| 出典のない数字を使う | 裏が取れない |
特に影響が大きいのが数年前の情報を前提にしてしまうことです。電機は事業の組み替えが速く、前提が変わっていることがあります。
数字は具体的なぶん信じやすく、一度取り込むとそれを前提に判断が進みます。前提が違っていた場合、後の判断もすべてずれます。出典が確認できない数字は、判断の材料から外してください。
会社の数を絞りすぎない
最初から2〜3社に絞ると、比べる材料が足りなくなります。まず分野ごとに数社ずつ見て、そこから絞るほうが判断の根拠が増えます。
もう一つ挙げるなら、1社の説明会で聞いた話を業界全体の話だと思わないことです。説明会で語られるのはその会社の話です。業界の共通事項なのか、その会社固有の話なのかは、他の会社も見ないと分かりません。
35相談できる窓口
内容で分かれます。
調べ方や書類の相談は大学のキャリアセンターでできます。在学生は無料のことが多くあります。
労働条件の取り扱いに疑問がある場合は労働局の総合労働相談コーナー(無料・全国・予約なしで利用できる場合があります)に、法令の解釈は弁護士にご相談ください。
どこに相談すればいいか分からないときは、まず大学のキャリアセンターに聞いてください。内容によっては適切な窓口を案内してもらえることがあります。
36よくある質問
電機メーカーに入ったら家電の仕事ができますか?
できるとは限りません。大手各社は企業向け事業のほうが大きいことが一般的で、確率としては別の事業に配属される可能性があります。家電に関わりたいなら、その会社の家電事業がどのくらいの規模かをセグメント情報で確認したうえで、配属の考え方を説明会で聞いてください。
「電機」と「電子」はどう違うのですか?
電気を動力として扱うのが電機(重電)、情報として扱うのが電子(軽電)です。重電は発電機や昇降機のように大きく重いものを扱い、案件が年単位になることがあります。電子は半導体やセンサのように小さく、製品の入れ替わりが速い傾向があります。同じ電機メーカーでも、時間の流れがまったく違います。
総合電機と電子部品メーカー、どちらを受けるべきですか?
優劣はありません。違うのは関わる範囲の広さです。総合電機は事業が多く配属先の候補も広い一方、担当は全体の一部になります。電子部品メーカーは特定の部品を深く担当することが多くなります。全体を見たいのか、一つを深めたいのかで受け取り方が変わります。両方を1社ずつ調べて比べるのが確実です。
村田製作所やTDKは何をしている会社ですか?
電子部品メーカーです。コンデンサやセンサなど、機器の中に入る小さな部品をつくっています。消費者に直接売らないため名前が知られにくいのですが、知名度と規模は別です。従業員数や拠点数は有価証券報告書で確認できます。
文系でも電機業界に入れますか?
入れます。営業、商品企画、購買・調達、知的財産、経理、人事、法務などの職種があります。特に電機は技術の入れ替わりが速く特許が事業に直結するため、知的財産の部門を持つ会社が多くあります。ただし、どの職種で募集があるかは会社と年度によって変わるため、各社の採用ページで確認してください。
情報系ですが、電機メーカーは選択肢になりますか?
なります。機器が通信につながるようになり、組込ソフト、クラウド連携、データ解析の職種を置いている会社が多くあります。ただしソフトの比重は会社によってかなり違うので、どのくらい力を入れているかを中期経営計画で確認してください。
半導体業界に入りたいのですが、どこを受ければいいですか?
半導体は大きく4つに分かれます。半導体そのものをつくる会社、つくる装置をつくる会社、検査・計測の会社、材料をつくる会社です。やることも顧客も違います。装置メーカーの顧客は半導体メーカーであり、材料は化学メーカーが担っていることが一般的です。まずどの区分に関心があるかを決めてください。
この会社が何で稼いでいるのか分かりません。
有価証券報告書の「セグメント情報」を見てください。会社が自分で区切った事業ごとに、売上と利益が分かれて載っています。ここを見ると「家電の会社だと思っていたら売上の大半が企業向けだった」ということが分かります。売上が大きい事業と利益が出ている事業は別のことがあるので、両方を見てください。
持株会社と事業会社、どちらに応募するのですか?
募集要項の冒頭にどの法人が募集しているかが書かれています。持株会社単体の従業員数はごく少ないことがあり、有価証券報告書の平均年間給与や従業員数も提出会社単体の数字です。自分が応募する法人の資料を見ているかを確認してください。
平均年収はどこで調べられますか?
各社の有価証券報告書の「従業員の状況」に平均年間給与が記載されているのが一般的です。EDINETや各社のIRページで無料で読めます。ただし全従業員の平均であり管理職も含むこと、賞与や残業代を含むこと、提出会社単体の数字であること、入社1年目の給与ではないことに注意してください。平均年齢とセットで見てください。
初任給はどこで確認しますか?
募集要項です。有価証券報告書の平均年間給与は全従業員の平均なので、初任給とは別物です。初任給、手当、賞与の記載は募集要項と、後で示される書面にあります。記載がない項目は応募先に確認してください。
工場勤務になる可能性はありますか?
職種によってあります。生産技術、生産管理、品質保証、製造は工場が主な職場になることが多く、設計や開発も試作や評価で工場に通うことがあります。電機・電子の工場や研究所は都市部にあるとは限りません。所在地は有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。
志望動機が書けません。どうすればいいですか?
材料が足りていない可能性があります。同じ分野の2社の中期経営計画を読み比べると、力を入れている領域の違いが見えます。電機は1社がいくつもの事業を持つため、同じ「総合電機」でも重点の置き方がかなり違います。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。書いたあと、会社名を別の会社に置き換えても成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。
数年前の業界研究本を読んでいますが大丈夫ですか?
注意が必要です。電機は事業の組み替えが速く、執筆時点の事業構成がいまは変わっていることがあります。確実なのは直近の有価証券報告書と決算説明資料です。会社が自分で出している最新の資料を見てください。
自動車業界と迷っています。
車載向けの部品や制御を手がける電機メーカー・電子部品メーカーは多くあります。「自動車に関わりたい」なら電機側からも関われます。逆に言えば、業界名で絞ると同じ仕事を見逃します。自動車業界の全体像は別記事で整理しているので、併せて読んで、同じ項目で比べてみてください。
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。就活サイトのスケジュール記事は一般的な目安であり、個別の会社に当てはまらないことがあります。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。複数の分野に応募する場合は、締切を一覧で管理してください。
まず何から読めばいいですか?
関心のある分野を決めてから、その分野の会社を2〜3社選び、各社の有価証券報告書の「事業の内容」と「セグメント情報」、そして中期経営計画を読むのが早道です。業界全体の資料は、個別の会社を見たあとのほうが理解しやすくなります。
この記事に載っていない会社もありますか?
あります。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。ここに載っていない会社にも、電機・電子に関わる仕事は数多くあります。
学校推薦と自由応募はどちらで受けるべきですか?
メーカーでは、大学や研究室を通じた推薦と、個人で応募する自由応募の両方を設けている会社があります。ただし制度の有無も条件も会社ごとに違い、年度で変わることもあります。推薦には辞退に関する取り決めが伴うことがあるので、応募する前に大学の担当窓口で仕組みを確認してください。本記事では制度の内容を判断できません。
電子部品メーカーは景気に左右されやすいですか?
本記事では将来の見通しを判断しません。確認できるのは、各社が「事業等のリスク」で何を挙げているかです。特定の顧客や特定の用途への集中をリスクとして挙げている会社もあれば、複数の業界に納めていることを説明している会社もあります。関心のある会社の資料を直接読んでください。
研究内容と違う分野に配属されることはありますか?
あります。研究テーマと配属先が一致することもありますが、一致しないことのほうが多くあります。選考で見られているのは研究の内容そのものより進め方であることが一般的です。課題をどう設定し、どう確かめたかは分野が変わっても使えます。配属の考え方は説明会で確認してください。
BtoBの会社は、働く人にとって何が違うのですか?
売る相手が企業なので、取引の1件が大きく、仕様と価格で決まることが多くなります。店頭や広告の影響は小さく、その代わり顧客の担当者と長く関わります。また、消費者に売らないため会社の名前が知られにくいという面もあります。家族や友人に何の会社か説明しにくい、という声はよく聞かれます。
キーエンスやオムロンは何の会社ですか?
計測・FA(工場の自動化)の分野の会社です。工場の機械を制御する機器や、ものを測るセンサなどを扱います。顧客は工場や研究所で、消費者には売りません。この分野は業界を問わずあらゆる産業が顧客になるため、特定の業界の動きに左右されにくいという性質があります。
37まとめ|分野で分けて、セグメント情報で確かめる
電機・電子業界は6つの分野に分かれています。①総合電機、②重電・インフラ、③電子部品、④半導体関連、⑤家電・AV、⑥計測・FA。
1社が複数の分野にまたがります。自動車のような上下の階層ではなく、横に並んだ分野です。だから「この会社は何の会社か」を一言で言えないのが普通です。
家電は事業の一部です。大手各社の主力は企業向けや官公庁向けであることが一般的です。家電のイメージだけで志望動機を書くと、売上のごく一部の話をすることになります。
答えはセグメント情報にあります。有価証券報告書の【経理の状況】に、事業ごとの売上と利益が分かれて載っています。会社名やイメージではなく、この数字で判断してください。
知名度と規模は別です。BtoBの会社は消費者に売らないため名前が知られません。社名を知らないという理由だけで候補から外すと、選択肢をかなり失います。
古い情報に注意してください。電機は事業の組み替えが速く、数年前の業界本の記述が実態と合わなくなっていることがあります。直近の資料を見てください。
年収は自分で確認できます。「従業員の状況」に平均年間給与が載っています。ただし全従業員の平均であり、初任給とは別物です。初任給は募集要項で確認してください。
最後に。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。網羅した一覧でもありません。売上・シェア・年収などの数値と企業の将来性、向き不向きは扱っていません。数値は各社の開示資料や業界団体・官庁の公表資料で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。
・自動車業界とは|全体像と分野の調べ方
・業界の調べ方|全体像をつかむ順番
・会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法
・募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認する
・就活・キャリアの記事一覧