自動車業界とは|全体像と分野の調べ方
自動車業界は「5つの層」でできています。①完成車(トヨタ・ホンダ)、②部品(デンソー・ブリヂストン)、③素材(日本製鉄・AGC)。これを支えるのが④生産設備と⑤販売・物流・金融です。「自動車に関わりたい」と思ったときの選択肢は、この5層すべてにあります。層が違えば仕事も募集も別物なので、まずどの層に関心があるかを決めてください。
車は、1社ではつくれません。
1台の自動車には、3万点ほどの部品が使われると言われます。
それを1社で全部つくる会社はありません。何層もの会社が連なって1台になります。
この記事では、その連なりを5つの層に分けたうえで、職種、年収の調べ方、志望動機の材料、選考での確認事項まで通しで整理します。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 どんな会社があるか|業界の5つの層
- 業界の地図|5つの層
- 1台ができるまでの流れ
- ①完成車メーカーとは
- 完成車メーカーの顔ぶれ
- ②部品メーカーとは
- ティア1・ティア2の意味
- 部品メーカーを分野で見る
- 走る・曲がる・止まるで整理する
- タイヤ・電池・半導体
- ③素材メーカーとは
- ④生産設備メーカー
- 工場で働くということ
- ⑤販売・整備の会社
- 運ぶ会社
- 金融・モビリティサービス
- 二輪・商用車・建機
- グループ関係の見方
- どの大学から何人入っているか
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
第3部 自分で調べる|年収・一次資料・用語
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
第1部 どんな会社があるか|業界の5つの層
01業界の地図|5つの層
まずこの表を頭に入れてください。
自動車業界の5つの層。①〜③が車をつくる流れ、④⑤がそれを支える。
| 層 | 何をする会社か | 例 |
|---|---|---|
| ①完成車 | 車を設計し組み立てて売る | トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキ、SUBARU、マツダ |
| ②部品 | エンジン・ブレーキ・シートなどをつくる | デンソー、アイシン、ブリヂストン、矢崎総業 |
| ③素材 | 鉄・樹脂・ガラスなど材料を供給する | 日本製鉄、AGC、東レ、旭化成 |
| ④生産設備 | 工場で使う機械やロボットをつくる | ファナック、安川電機、DMG森精機 |
| ⑤売る・支える | 販売・整備・輸送・ローン | 各地の販売会社、日本郵船、トヨタファイナンス |
①から③が、実際に車をつくる流れです。素材を部品にして、部品を組み立てて車になります。
④は、その工場を動かすための機械をつくる会社。⑤は、できた車を運び、売り、購入を支える会社です。
①以外も全部「自動車の仕事」です
ここで大事なのは、①以外も全部「自動車に関わる仕事」だということです。
「車が好きだから自動車業界へ」と考えたとき、多くの人が①だけを見ます。しかし募集の数でいえば②が圧倒的に多く、③④⑤にも道があります。
完成車メーカーは国内で十数社ですが、部品メーカーは数千社規模で存在します。単純に、応募できる先の数が2桁違います。
層が違えば仕事も条件も別物です
同じ「自動車業界」でも、層が違えば働く場所も、仕事の内容も、募集の条件も変わります。
完成車メーカーの購買担当と、部品メーカーの設計者と、販売会社の営業では、毎日やっていることがまったく違います。
まずは5つあると知り、そこから自分の関心に近い層を選んでください。
この5層という分け方は、就活の場面でそのまま使えます。説明会で会社の話を聞くとき「この会社は何層目か」を先に置くと、話の位置が分かります。部品メーカーの説明会で完成車メーカーの話が多く出てくることがありますが、それは納入先の話であって、その会社自身の仕事の話とは別です。
層をまたいで探すことに抵抗を感じる必要はありません。「自動車業界が第一志望」という言い方をしても、実際にはどの層を受けるかで応募先はまったく変わります。まず層を知ってから、その中で会社を探すという順番が効率的です。
021台ができるまでの流れ
工程を知ると、仕事の位置が分かります。
| 工程 | やること | 関わる仕事の例 |
|---|---|---|
| ①企画 | どんな車をつくるか決める | 商品企画、マーケティング |
| ②設計・開発 | 図面を引き、試作して確かめる | 車両設計、実験・評価 |
| ③調達 | 部品メーカーを決め、交渉する | 購買・調達 |
| ④生産準備 | 工場でつくれるようにする | 生産技術 |
| ⑤生産 | 実際に組み立てる | 生産管理、製造 |
| ⑥出荷・販売 | 運び、売り、整備する | 物流、営業、販売会社 |
1台の車ができるまでには、この6つの工程があります。職種はこの工程のどこかに配置されています。
工場の中はこう動いています
工場ではおおむねこの順で車が形になっていきます。溶接や塗装の多くはロボットが担い、その設備を④生産設備メーカーがつくっています。
工程は会社をまたいでいます
この6工程は、1社の中で完結していません。③調達の相手は部品メーカーであり、⑥の販売は別会社であることが多くあります。
つまり、工程を追うと自然に5つの層をまたぐことになります。自分が関心のある工程を担っているのがどの層の会社か——そう考えると、探す先が決まります。
どの工程に関心があるか
「自動車に関わりたい」と思ったとき、自分がどの工程に関心があるかを考えると、職種も層も絞りやすくなります。
車を考えたいのか(①②)、つくる仕組みを整えたいのか(④)、届けたいのか(⑥)。同じ業界でも、関わる工程が違えば毎日の仕事はまったく別物です。
ここで押さえておきたいのは、流れのどこか一箇所だけを担当する会社が多いということです。1社で素材から販売まで全部やっている会社はほとんどありません。だから「自動車業界で働く」と言っても、どの工程に関わるかで日々の仕事はまったく違います。自分がどの工程に関心があるのかを先に決めると、探す先が絞れます。
工程の名前は会社によって呼び方が違いますが、企画→設計→試作→評価→量産準備→量産という大きな流れはおおむね共通しています。自分が関心を持っているのが上流なのか下流なのかで、目指す職種が変わります。
03①完成車メーカーとは
車を企画し、設計し、組み立てて売る会社です。
いわゆる「自動車メーカー」がここです。OEM(Original Equipment Manufacturer)と呼ばれることもあります。
自社で全部つくっているわけではありません
完成車メーカーの特徴は、自社で全部つくっているわけではないことです。
やっているのは、どんな車をつくるかを決め、全体を設計し、部品メーカーから集めたものを組み立て、自社ブランドとして売ること。いわば全体の指揮をとる立場です。
エンジンや車体など中核部分は自社でつくることが多いものの、シート、タイヤ、電装品、ブレーキなどは部品メーカーから調達します。
そのため、完成車メーカーには部品メーカーと交渉する購買・調達という重要な職種があります。
「設計」だけの会社ではありません
完成車メーカーというと設計・開発のイメージが強いかもしれませんが、実際には工場を持ち、生産している会社です。
国内外に工場があり、そこで働く人、ラインを設計する人、品質を確認する人がいます。配属先が工場になる職種もあります。
規模が大きいことの意味
完成車メーカーは従業員数が多く、関わる部署も多い組織です。そのため、入社後に担当する範囲は全体の一部になります。
1台の車に対して何百人もが関わるので、自分が担当するのはエンジンの一部品、あるいは調達する部品カテゴリの一つ、といった単位になることが一般的です。
これは良し悪しではなく、大きな組織で働くとはそういうことだという話です。全体を見たいのか、一つを深めたいのかは、人によって向き不向きが分かれます。どちらが自分に合うかを考える材料にしてください。
完成車メーカーの仕事は、つくることだけではありません。どんな車をつくるかを決める企画、部品メーカーから買う購買・調達、販売会社を支える営業、各国の規制に対応する部署——車が世の中に出るまでに必要な仕事がひととおり社内にあります。だから文系の採用も一定数あります。
完成車メーカーは応募が集中しやすい層です。ただし、応募が多いことと自分に合っているかは別です。他の層も見たうえで、それでも完成車メーカーがいいと思えるなら、その理由が志望動機になります。
04完成車メーカーの顔ぶれ
区分ごとに見ると整理できます。
| 区分 | 会社の例 |
|---|---|
| 乗用車 | トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキ、SUBARU、マツダ、三菱自動車、ダイハツ工業 |
| 商用車(トラック・バス) | いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス |
| 二輪 | ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキモータース |
あくまで例であり、網羅した一覧ではありません。
ホンダとスズキは二輪も乗用車もつくっています。会社によって扱う範囲が違うので、各社のサイトで事業内容を確認してください。
「完成車=乗用車」ではありません
商用車メーカーを見落とす人が多くいます。トラックやバスをつくる会社も完成車メーカーです。
乗用車と商用車では、顧客が個人か法人かという違いがあり、仕事の進め方も変わります。物流や公共交通を支える仕事に関心があるなら、この区分は見ておく価値があります。
海外メーカーの日本法人もあります
日本に拠点を持つ海外メーカーの法人もあります。募集の形態や時期が国内メーカーと異なることがあるので、関心がある場合は各社の採用ページで確認してください。
なお、同じグループに属していても、完成車メーカーどうしは別の会社です。採用も別に行われ、選考の時期も条件も異なります。グループ関係は資本のつながりであって、働く場所が同じという意味ではありません。
05②部品メーカーとは
実は、ここがいちばん会社数が多い層です。
1台に3万点の部品が使われるなら、それをつくる会社が必要です。それが部品メーカーです。
知名度と規模は別です
ここで知っておいてほしいのは、知名度と会社の規模は別だということです。
普段の生活で社名を見かけない会社でも、従業員が数万人いて、世界中の自動車メーカーに部品を供給している——ということが珍しくありません。
部品は消費者が直接買うものではないので、広告を出す必要がありません。だから名前を知らないだけです。
「聞いたことがないから小さい会社」と判断すると、選択肢を自分で狭めることになります。
顧客が会社であるということ
部品メーカーの顧客は、消費者ではなく完成車メーカーなどの会社です。いわゆるBtoBの仕事です。
つまり、街で自社の製品を見かけることは少なく、家族や友人に説明しても伝わりにくいことがあります。知名度がないのはそのためです。
一方で、取引先が限られるぶん一つの案件が大きく、関係が長く続くという特徴があります。数年単位で一つの部品を開発し、量産まで見届けるという働き方になることがあります。
特定分野で世界に供給している会社があります
部品メーカーは性能と価格が合えば国を問わず採用されるため、海外比率が高い会社もあります。
海外で働くことに関心があるなら、部品メーカーも選択肢に入ります。各社の海外拠点は会社のサイトで確認できます。
部品メーカーを見るときに注意したいのは、社名を知らないからといって規模が小さいとは限らないことです。消費者向けの商品を売っていない会社はテレビCMを出さないため、名前が知られていないだけということがあります。従業員数や拠点数は有価証券報告書で確認できます。
06ティア1・ティア2の意味
納入先による呼び分けです。
ティアは納入先による呼び分け。上下は階層であって優劣ではない。
就活の情報を見ていると「ティア1」という言葉が出てきます。これはどこに納めているかによる呼び分けです。
たとえばシートを組み立てて納めるのがティア1なら、そのシートの生地や金具をつくるのがティア2、という関係です。
優劣を表す言葉ではありません
「ティア1だから良い会社」という意味ではありません。
ティア2やティア3にも、特定の加工技術で他社が真似できない会社があります。むしろ、小さくても代わりのいない会社のほうが安定していることもあります。
また、同じ会社が取引によってティア1にもティア2にもなり得ます。ある部品では完成車メーカーに直接納め、別の部品では他の部品メーカーに納める、ということが起きます。
就活でこの言葉を使うとき
面接で「ティア1を志望しています」と言っても、それだけでは志望理由になりません。階層は会社の性質を表す言葉ではないためです。
使うなら、「完成車メーカーと直接やり取りしながら開発に関わりたい」のように、その階層だと何ができるのかを自分の言葉で説明してください。
ティアという言葉を面接で使う必要はありません。知っておくと説明会の話が分かりやすくなる、という程度のものです。むしろ大切なのは、その会社が何をつくっていて、どこに納めているかを自分の言葉で言えることです。
07部品メーカーを分野で見る
分野ごとに見るとつかみやすくなります。
| 分野 | つくるもの | 会社の例 |
|---|---|---|
| 総合部品 | 幅広い部品を手がける | デンソー、アイシン、豊田自動織機、豊田合成 |
| 駆動・操舵 | ハンドル、ドライブシャフトなど | ジェイテクト、日本精工(NSK)、NTN |
| 電装・配線 | ワイヤーハーネス、コネクタなど | 矢崎総業、住友電気工業、古河電気工業 |
| 内装・シート | シート、内装部品 | テイ・エス テック、トヨタ紡織 |
| 車載機器 | カーナビ、センサーなど | パナソニック オートモーティブ、アルプスアルパイン |
あくまで例であり、網羅した一覧ではありません。ここに載っていない会社も数多くあります。
専攻と結びつけて探せます
見ていただきたいのは、分野ごとに得意な会社がいるという構造です。
「自動車の部品」と一括りにせず、電気系なのか、機械系なのか、内装なのか——と分けると、自分の専攻や関心に近い分野が見つかりやすくなります。
理系の場合、研究室のテーマと結びつく分野があるかもしれません。材料の研究をしているなら素材や部品の材料開発、制御を学んでいるなら電装や車載ソフト、という具合です。
探し方の手順
関心のある部品が決まったら、その部品をつくっている会社を調べてください。会社のサイトの「製品情報」を見ると、何を手がけているかが分かります。
会社ごとの調べ方は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。
分野をまたいで手がけている会社も多くあります。ここでの分け方は「どんな分野があるか」を知るためのもので、会社を1つの分野に当てはめるための分類ではありません。関心のある分野から会社名を知り、その会社が実際に何を手がけているかは各社のサイトで確認してください。
08走る・曲がる・止まるで整理する
車の基本機能から部品を見る方法です。
部品は「走る・曲がる・止まる」のどれに関わるかで整理できる。
| 機能 | 関わる部品 | 専攻との関わり |
|---|---|---|
| 走る | エンジン、モーター、変速機、バッテリー、駆動系 | 機械系、電気系、材料系 |
| 曲がる | ステアリング、サスペンション | 機械系、制御系 |
| 止まる | ブレーキ、タイヤ | 機械系、材料系、化学系 |
| つながる | 通信機器、カーナビ、センサー | 電気系、情報系 |
| 守る | エアバッグ、シートベルト、車体構造 | 機械系、材料系 |
自動車の基本機能は「走る・曲がる・止まる」と表現されます。近年はこれに「つながる」が加わりました。
機能から会社を探せます
この分け方が便利なのは、機能から部品メーカーをたどれることです。
ブレーキに関心があるならブレーキをつくる会社、センサーに関心があるならセンサーの会社——と探せます。会社のサイトの「製品情報」を見ると、どの機能を担っているかが分かります。
安全に直結する分野があります
「止まる」「守る」に関わる部品は、人の安全に直結します。
そのため品質に対する要求が高く、検査や評価の工程が重くなります。品質保証や実験・評価といった職種の役割が大きい分野です。
「人の命に関わるものをつくりたい」という関心があるなら、この分野は選択肢になります。
この整理は、説明会で「うちは足回りをやっています」と言われたときに、それが何の話なのかを掴むために役立ちます。部品の名前を全部覚える必要はありません。車のどの働きに関わるものか、という見当がつけば十分です。
09タイヤ・電池・半導体
独立した大きな分野です。
| 分野 | 会社の例 | 就職情報での扱い |
|---|---|---|
| タイヤ | ブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム、TOYO TIRE | ゴム・化学業界とされることも |
| 電池 | パナソニック エナジー、GSユアサ | 電機・化学業界とされることも |
| 半導体・電子部品 | ルネサスエレクトロニクス、ローム、村田製作所 | 半導体・電子部品業界とされることも |
タイヤ、電池、半導体はそれ自体が大きな分野です。
自動車で検索しても出てこないことがあります
ここで注意したいのが、これらの会社は「自動車業界」の枠に入らないことがある点です。
たとえばブリヂストンは就職情報ではゴム・化学として扱われることがあり、村田製作所は電子部品として扱われます。自動車で検索しても出てこない場合があります。
つまり、自動車に関わりたいなら、検索する業界名を広げたほうがいいということです。
自動車向けの比率を確認する
これらの会社を調べるときは、有価証券報告書のセグメント情報を見てください。事業が分野ごとに分けて記載されており、自動車向けがどの位置にあるかが分かります。
自動車向けが中心の会社もあれば、数ある分野の一つという会社もあります。その違いは、入社後に関わる範囲にも関係します。
これらの分野は、自動車業界の枠で探すと見つからないことがあります。ゴム、化学、電子部品、電池——別の業界名で分類されているためです。関心があるなら、業界名を広げて探してください。
10③素材メーカーとは
車の材料をつくる会社です。
| 素材 | 会社の例 | 車のどこに使われるか |
|---|---|---|
| 鉄鋼 | 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所 | 車体、骨格 |
| ガラス | AGC、日本板硝子 | フロントガラス、窓 |
| 樹脂・繊維 | 東レ、旭化成、三菱ケミカル | 内装、外装、シート |
| 非鉄金属 | UACJ、住友電気工業 | アルミ部材、配線 |
部品をつくるには材料が要ります。その材料をつくるのが素材メーカーです。
自動車専業ではありません
これらの会社は自動車以外にも幅広く供給しています。日本製鉄の鉄は建物にも船にも使われ、東レの繊維は衣料品にも使われます。
そのため、素材メーカーは「素材業界」「化学業界」として募集を出すのが一般的です。
配属が自動車向けとは限りません
自動車に関わりたいという理由で素材メーカーを志望することもできますが、入社後に自動車向けの部署に配属されるとは限りません。
これは素材メーカーを避ける理由にはなりません。ただ、期待と実際がずれると後で困るので、先に知っておいてください。
配属の考え方は各社で違うので、説明会や募集要項で確認してください。「配属はどのように決まりますか」は、説明会で聞いてよい質問です。
開発に時間がかかる分野です
素材の開発は、年単位の時間がかかることがあります。新しい材料を開発し、性能を確かめ、量産できるようにし、採用されるまでに長い期間を要します。
そのぶん、一度採用されると長く使われることもあります。腰を据えて一つのテーマに取り組む働き方になりやすい分野です。
素材メーカーを志望する場合、注意したい点があります。素材メーカーは自動車以外にも幅広く供給しているため、入社後に自動車向けの部署に配属されるとは限りません。これは避ける理由にはなりませんが、期待と実際がずれると後で困ります。配属の考え方は説明会で確認してください。
11④生産設備メーカー
工場を動かす機械をつくります。
自動車の工場では、ロボットが溶接し、工作機械が部品を削ります。その機械をつくるのがこの層です。
見落とされやすい層です
この層も、納入先は自動車工場だけではありません。電機、航空、食品などあらゆる工場に機械を納めています。
そのため就職情報では「機械業界」「産業機械」として扱われることが一般的で、自動車を探している学生の視界に入りにくくなります。
「ものづくりの現場を支えたい」という関心があるなら、この層は見落としやすい選択肢です。会社説明資料に納入先の分野が載っていることがあります。
生産設備をつくる会社は、自動車以外の産業にも設備を納めていることが多くあります。そのため「自動車業界」と名乗っていない会社もあります。ものづくりの現場を支える仕事に関心があるなら、この層も見ておいてください。
12工場で働くということ
製造業では避けて通れない話です。
自動車は工場でつくられます。つまり働く場所が工場になる職種があります。
工場配属になりやすい職種
生産技術、生産管理、品質保証、製造は、工場が主な職場になることが多い職種です。
設計や開発も、試作や評価のために工場や試験場に通うことがあります。本社勤務だけが製造業の働き方ではありません。
交替勤務の有無を確認する
工場の中には、24時間稼働しているラインがあります。そうした現場に関わる職種では、交替勤務が設定されていることがあります。
交替勤務は生活のリズムに直結します。あるかどうか、どんな形かは募集要項で確認してください。記載がない場合は聞くことができます。
工場は地方にあることが多い
広い敷地が必要なため、工場は都市部から離れた場所にあることが一般的です。
これは見方を変えれば、地方で働ける選択肢が多いということでもあります。地元に製造業の拠点があるなら、そこで働く道があります。
拠点の所在地は有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。
工場のある場所は、有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。会社名で検索するより確実です。実際に働く場所がどこになるかは募集要項に記載があるので、生活の見通しを立てたい場合は早めに確認してください。
工場勤務には交替勤務がある場合があります。あるかどうか、あるならどういう形かは募集要項に記載があります。生活リズムに関わる項目なので、確認しておいてください。
13⑤販売・整備の会社
メーカーとは別会社です。
「トヨタで働きたい」がメーカーか販売会社かで、応募先が変わる。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 新車販売 | メーカー系列の販売会社(ディーラー) | トヨタモビリティ東京、各地のホンダカーズなど |
| 中古車 | 買取・販売 | IDOM(ガリバー)、ネクステージ |
| 用品・整備 | カー用品、車検、整備 | オートバックスセブン、イエローハット |
「トヨタの販売店」はトヨタ自動車ではありません
ここで多くの人が誤解します。トヨタの車を売っているお店は、トヨタ自動車ではありません。
販売会社(ディーラー)は、多くの場合地域ごとの別会社です。「トヨタモビリティ東京」のように、独立した企業として採用も行っています。
つまり、応募先も、募集の時期も、条件も、メーカーとは別です。
「トヨタで働きたい」と思ったとき、それがメーカーなのか販売会社なのかで進む道が変わります。
地元で働く選択肢になります
販売会社は地域密着で、勤務地が特定の地域に限られることが多いのも特徴です。
全国転勤を避けたい、地元で働きたいという条件があるなら、選択肢として見ておく価値があります。
販売会社の仕事は営業だけではありません
販売会社というと営業のイメージが強いかもしれませんが、実際には整備、サービス、事務、店舗管理など複数の職種があります。
整備には資格が関わることがあり、募集要項に記載されている場合があります。確認してください。
また、顧客と長く付き合うのが特徴です。車は購入後も点検や車検で来店があるため、一度売って終わりではありません。
募集要項の冒頭に会社名が書かれているので、どの法人が募集しているかを必ず確認してください。読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。
販売会社を志望するときは、募集要項の冒頭でどの法人が募集しているかを必ず確認してください。「トヨタ」「日産」といった名前が入っていても、メーカー本体とは別の会社です。応募の窓口も、選考の時期も、条件も別になります。
14運ぶ会社
部品も完成車も運ばれています。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 陸上輸送 | 部品を工場へ、完成車を販売店へ | 日本通運、センコー、山九 |
| 海上輸送 | 完成車を海外へ運ぶ自動車船 | 日本郵船、商船三井、川崎汽船 |
部品メーカーから工場へ、工場から販売店へ、そして海外へ——車と部品は常に動いています。
自動車専用船という世界があります
輸出では、自動車専用船という車を積むための船が使われます。日本郵船、商船三井、川崎汽船といった海運会社がこれを運航しています。
これらの会社も自動車専門ではなく、あらゆる貨物を扱います。就職情報では「物流業界」「海運業界」として扱われます。
生産を止めない仕事です
工場は必要な部品が必要なときに届くことを前提に動いています。部品が届かなければラインは止まります。
つまり、工場の生産計画に合わせて部品を届ける仕事は、製造業を支える中核でもあります。
止められない仕事という性質
物流は、生産が動いている限り止められない仕事です。工場の稼働に合わせて動くため、勤務形態がそれに対応していることがあります。
一方で、経路や在庫の設計といった計画をつくる側の仕事もあります。現場と計画のどちらに関わるかで働き方が変わるので、職種の区分を確認してください。
物流の会社は、自動車業界の会社として分類されないことがほとんどです。しかし、部品や完成車を運ぶ仕事は自動車の供給を支えています。業界名にとらわれず、仕事の中身で見ると候補が広がります。
15金融・モビリティサービス
買い方・使い方を支えます。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 自動車ローン | 購入資金の貸付 | トヨタファイナンス、ホンダファイナンス |
| リース | 法人・個人向けの車のリース | オリックス自動車、住友三井オートサービス |
| カーシェア等 | 所有しない使い方 | 各社のサービス |
車は高額なので、ローンやリースを使って購入・利用されることが多くあります。そこを担うのがこの層です。
グループ会社でも採用は別です
完成車メーカーのグループ会社として設けられていることがあります。トヨタファイナンス、ホンダファイナンスなどがその例です。
ただし採用は別に行われるのが一般的です。金融の会社として募集が出るため、メーカーの採用ページからは見つからないこともあります。
金融の知識が求められます
この層は自動車に関わりますが、仕事の中身は金融です。与信、契約、リスク管理といった知識が関わります。
「車が好き」という動機だけで志望すると、面接で仕事の理解を問われたときに答えにくくなります。金融の仕事として何をするのかを、募集要項や説明会で確認してください。
逆に、金融に関心があって自動車にも興味があるなら、両方に関われる分野とも言えます。
この層の会社は、ものづくりではなくサービスや金融の仕事です。自動車に関わりたいが工場勤務は考えていない、という場合の選択肢になります。ただし、扱う商品が金融商品になるため、必要とされる知識は他の層と異なります。
16二輪・商用車・建機
資料によって扱いが変わります。
| 区分 | 会社の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 二輪 | ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキモータース | 自動車に含める資料が多い |
| 商用車 | いすゞ自動車、日野自動車 | 自動車に含める資料が多い |
| 建設機械 | コマツ、日立建機、クボタ | 機械業界として扱うことが多い |
二輪や商用車は自動車業界に含めて扱われることが多く、建設機械は機械業界として扱われることが多くあります。
資料を読むときは範囲を先に確認
ただし、これは資料によって違います。
統計や業界の資料を見るときは、何が範囲に入っているかを先に確認してください。範囲が違う資料を並べて比べても、その差が実態の差なのか集計の差なのか分かりません。
定義は、多くの場合その資料の冒頭や注記に書かれています。
二輪は海外比率が高い分野です
二輪車は、国内よりも海外の市場が大きい分野とされています。そのため、海外に関わる仕事の割合が高い会社があります。
具体的な比率は各社の有価証券報告書のセグメント情報で確認できます。海外に関心があるなら、二輪を手がける会社も選択肢になります。
二輪、商用車、建設機械は、乗用車とは市場も顧客も異なります。同じ「車両」でも、誰に何を売るかが違えば仕事の進め方も変わります。乗用車以外に関心があるなら、こうした分野も調べてみてください。
17グループ関係の見方
資本関係がある会社があります。
部品メーカーの中には、完成車メーカーと資本関係がある会社があります。デンソーやアイシンとトヨタ自動車の関係がその例です。
どこで確認できるか
こうした関係は、各社の有価証券報告書の「大株主の状況」や「関係会社の状況」で確認できます。
どの会社が株主になっているか、子会社・関連会社がどこかが一覧で記載されています。
グループでも条件は別です
ただし、グループだからといって採用や条件が同じわけではありません。
採用は各社が別々に行い、給与も休日も勤務地も会社ごとに定められています。親会社の情報を子会社に当てはめないでください。
持株会社の場合は特に注意
親会社が持株会社(ホールディングス)になっている場合、持株会社自体の従業員数はごく少ないことがあります。
有価証券報告書の平均年間給与や従業員数は提出会社単体の数字なので、この場合グループ全体の実態とは大きく異なります。
どの法人が募集しているのか、その法人の数字を見ているのかを、必ず確認してください。
グループ関係は有価証券報告書の「関係会社の状況」で確認できます。どの会社がどこの子会社なのかが一覧で載っています。採用ページだけを見ていると分からない情報です。
18どの大学から何人入っているか
実際の人数が公表されています。
多くの大学は、卒業生の「主な就職先」を就職者数つきで公表しています。それを企業ごとに集計すると、どの大学からどの会社に何人入っているかが見えます。
Campiの企業図鑑に掲載している自動車メーカー・部品メーカーについて合算したのが、次の表です。
| 順位 | 大学 | 掲載企業への就職者(合算) |
|---|---|---|
| 1 | 名古屋工業大学 | 164人 |
| 2 | 名古屋大学 | 155人 |
| 3 | 九州大学 | 57人 |
| 4 | 南山大学 | 50人 |
| 5 | 東京理科大学 | 47人 |
| 6 | 東北大学 | 46人 |
| 7 | 横浜国立大学 | 38人 |
| 8 | 京都大学 | 36人 |
| 9 | 大阪大学 | 34人 |
| 10 | 日本大学 | 28人 |
| 11 | 工学院大学 | 27人 |
| 12 | 立命館大学 | 25人 |
| 13 | 東京科学大学 | 22人 |
| 14 | 中央大学 | 21人 |
| 15 | 九州工業大学 | 19人 |
対象:企業図鑑に掲載の自動車(10社)/2027年版/主に2026年3月卒データ/登場する大学31校・延べ900人
掲載企業:スズキ、SUBARU、マツダ、デンソーテクノ、トヨタ自動車、デンソー、本田技研工業、日産自動車、豊田自動織機、アイシン
上位2校が愛知県の大学である理由
1位と2位は名古屋工業大学と名古屋大学で、どちらも愛知県名古屋市にあります。
これは偶然ではありません。集計に入っている7社のうち、トヨタ自動車、デンソー、アイシン、豊田自動織機、デンソーテクノの5社が愛知県に本社を置いています(本田技研工業は東京都、日産自動車は神奈川県)。
自動車業界は拠点が地理的に集中している業界です。そのため、近くの大学から入る人が多くなります。勤務地と配属で触れたとおり、勤務地も同じ傾向があります。
順位が低くても不利という意味ではありません
この表でいちばん誤解されやすいのが、順位を「大学の強さ」だと読んでしまうことです。
数字の元になっているのは各大学が自分で公表した資料です。ところが、どこまで載せるかは大学によって違います。上位30社まで載せる大学もあれば、数社しか載せない大学もあります。公表していない大学もあります。
つまり、載っている人数が少ない=その会社に入っていない、ではありません。単に公表の範囲が狭いだけということが普通にあります。
自分の大学が表にない場合も同じです。応募できないわけでも、採用実績がないわけでもありません。確実なのは、自分の大学のキャリアセンターで実績を確認することです。
この表の使いどころ
| 使い方 | 内容 |
|---|---|
| OB・OG訪問 | 就職者が多い大学には、その会社の卒業生がいる可能性が高い |
| キャリアセンター | 実績のある大学は、過去の選考情報が蓄積されていることがある |
| 会社を知る | 社名をクリックすると、その会社の大学別内訳が見られる |
| 自分の大学を見る | 大学名をクリックすると、その大学の就職先一覧が見られる |
この表は会社を選ぶための材料ではなく、情報源を見つけるための材料として使ってください。どの会社が自分に合うかは、人数では決まりません。
会社名・大学名はどちらもリンクになっています。気になる会社があれば、そこからその会社に就職者が多い大学をたどれます。OB・OG訪問の進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
19職種の全体像
理系も文系も募集があります。
技術系の職種
事務系の職種
職種は会社と年度で変わります
上は代表的な職種の例です。会社によって呼び名も区分も違います。
「今年は生産技術を多く採る」「事務系は職種別に分けて募集する」といった違いもあるので、必ず各社の採用ページで確認してください。
部品メーカーや素材メーカーにも、同じように技術系と事務系の職種があります。完成車メーカーだけの話ではありません。
職種はいつ決まるか
職種の決まり方は会社によって違います。応募の時点で職種を選ぶ会社もあれば、入社後の配属で決まる会社もあります。
前者は「職種別採用」「コース別採用」と呼ばれることがあります。募集要項に区分が書かれているので確認してください。
後者の場合、希望を出せるかどうか、どの程度考慮されるかは会社によって異なります。説明会で確認できる事項です。
職種の名前は会社によって違います。同じ仕事でも「生産技術」「製造技術」「プロセス開発」など呼び方が分かれます。名前ではなく、募集要項に書かれた仕事の内容で判断してください。名前が違うだけで同じ仕事、ということはよくあります。
職種で迷うときは、募集要項に書かれた「仕事内容」の欄を複数社ぶん読み比べてください。同じ職種名でも担当範囲が違うことが分かります。名前ではなく中身で比べると、自分がやりたいことに近いほうが見えてきます。
20専攻と職種の関係
専攻から探すこともできます。
これは目安です
上はあくまで目安です。実際には専攻と職種が一対一で対応するわけではありません。
機械系から生産技術に進む人もいれば、購買に進む人もいます。情報系が完成車メーカーに行くこともあれば、部品メーカーや車載ソフトの会社に行くこともあります。
募集要項に対象専攻が書かれることがあります
募集要項に「対象学部・学科」が記載されている場合があります。これは確認できる事実なので、関心がある会社の募集要項を見てください。
記載がない場合、専攻を問わないこともあれば、選考の中で確認されることもあります。分からない場合は応募先に確認できます。
専攻と違う分野に進むこともできます
専攻と職種が違っても問題ない場合があります。実際、入社後に学ぶことを前提にした研修を設けている会社もあります。
ただし、募集要項に対象学部・学科の指定がある場合は、その記載に従ってください。指定がある職種とない職種が混在していることもあります。
研究内容をどう伝えるか
理系の場合、研究内容を聞かれることがあります。このとき、専門用語をそのまま並べるより、何を目的に何を確かめたかを説明するほうが伝わります。
研究がその会社の事業と直接つながっていなくても構いません。取り組み方を説明できれば材料になります。
自分の研究に近い技術を使っている会社を探すと、志望動機も具体的になります。会社のサイトの「技術情報」や、有価証券報告書の「研究開発活動」の章が手がかりになります。
専攻と職種が一対一で対応するわけではありません。募集要項に対象学部・学科が記載されていることがあるので、まずはそこを確認してください。記載がない場合は、応募できるかどうかを直接問い合わせることができます。
21勤務地と配属
層によって大きく違います。
自動車の製造は工場で行われるため、製造業の多くは工場のある地域に拠点があります。
そのため、勤務地が都市部とは限りません。逆に、地方で働きたい場合の選択肢が多いとも言えます。
転勤の範囲は募集要項で確認
転勤があるかどうか、範囲がどこまでかは会社と職種によって違います。
全国転勤のコースと、地域を限定したコースを分けている会社もあります。募集要項に記載があるので確認してください。
記載がない場合は確認できます。勤務地は生活に直結するので、曖昧なまま進めないでください。
初任配属の決まり方
最初の配属がどう決まるかは会社によって違います。希望を出せる会社もあれば、適性や採用区分で決まる会社もあります。
説明会で「配属はどのように決まりますか」と聞くのは、事務的な確認として自然な質問です。
勤務地は生活に直結します。給与や仕事の内容と同じくらい、確認しておきたい項目です。転勤の範囲、配属先の候補、寮や社宅の有無——これらは募集要項や説明会で確認できます。曖昧なまま進めると、内定後に困ることがあります。
22海外で働く道
自動車は海外比率が高い産業です。
完成車メーカーも部品メーカーも、海外に工場や拠点を持っている会社が多くあります。
部品メーカーにも道があります
海外で働きたい場合、完成車メーカーだけが選択肢ではありません。
部品メーカーは性能と価格が合えば国を問わず採用されるため、海外の自動車メーカーと取引している会社があります。海外比率が高い部品メーカーもあります。
どこで確認するか
各社のサイトに「拠点一覧」「グローバルネットワーク」といったページがあります。どの国に拠点があるかが分かります。
有価証券報告書の「設備の状況」やセグメント情報でも、地域ごとの状況が確認できます。
制度と語学の扱いを確認する
ただし、海外勤務があるかどうか、どのくらいの割合かは会社によって違います。
「海外で働けますか」という漠然とした期待ではなく、海外赴任の制度があるか、どの職種が対象かを募集要項や説明会で確認してください。
語学に関する記載がある場合もあります。必須なのか、望ましいという水準なのかは記載によります。記載がない場合は、入社後の研修で補う前提のこともあります。推測せず確認してください。
海外で働きたい場合、「海外売上比率が高い会社」を探すという見方もあります。有価証券報告書のセグメント情報に、地域別の内訳が載っていることがあります。ただし、海外売上が多いことと、新入社員が海外に行けることは別の話です。制度は募集要項で確認してください。
第3部 自分で調べる|年収・一次資料・用語
23年収を自分で調べる方法
有価証券報告書に載っています。
平均年間給与は「従業員の状況」にある。章の構成は年度や会社で多少異なる。
就活サイトやまとめ記事の年収情報は、出典が示されていないことがあります。しかし、自分で一次資料を確認する方法があります。
- 1金融庁のEDINET、または各社サイトのIR情報を開く
- 2有価証券報告書を探す
- 3第一部【企業情報】→ 第1【企業の概況】へ進む
- 4「従業員の状況」の項を見る
- 5平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数を確認
有価証券報告書の「従業員の状況」には、提出会社の平均年間給与が記載されているのが一般的です。平均年齢や平均勤続年数と並べて書かれています。
読むときの注意が4つあります
特に②と④が重要です。平均年間給与は、あなたが入社1年目に受け取る額ではありません。
平均年齢が高い会社なら平均給与も高く出ます。逆に若い会社なら低く出ます。だから平均年齢とセットで見る必要があります。
初任給は募集要項で確認
入社時の給与を知りたいなら、見るべきは有価証券報告書ではなく募集要項です。
初任給、手当、賞与の記載は募集要項と、後で示される書面にあります。業界の資料や平均給与からは分かりません。
就活サイトの年収表記との違い
就活サイトや口コミサイトにも年収の情報がありますが、出典や算出方法が示されていないことがあります。
有価証券報告書は法令に基づいて提出される資料で、誰でも同じものを確認できます。数字の出どころがはっきりしている点が違います。
どちらを使うかは自由ですが、判断の根拠にするなら出典が確認できるものを選んでください。
非上場の会社はどうするか
有価証券報告書を提出していない会社もあります。その場合、平均年間給与は確認できません。初任給は募集要項に記載されているので、そこで確認してください。
資料がないことを理由に会社を評価しないでください。公開の義務は会社の形態によって違います。
会社を比べるときの前提
複数社を比べるときは、同じ年度の有価証券報告書を見てください。年度が違えば前提が変わります。
なお、有価証券報告書には従業員数も記載されています。従業員数と平均勤続年数を合わせて見ると、会社の規模と、人が長く働いているかどうかの目安になります。ただし事業の性質によって勤続年数の水準は違うため、業界をまたいで比べるときは注意してください。
24有価証券報告書の使い方
就活でいちばん使える資料です。
上場企業などが提出する資料で、金融庁のEDINETや各社のサイトで無料で読めます。
どこに何が書いてあるか
| 章 | 分かること | 就活での使い道 |
|---|---|---|
| 沿革 | 会社の歴史 | 成り立ちを知る |
| 事業の内容 | 何をしている会社か | 事業の全体像をつかむ |
| 関係会社の状況 | 子会社・関連会社 | グループ構成を知る |
| 従業員の状況 | 人数・平均年齢・平均年間給与 | 規模と待遇の目安 |
| 事業等のリスク | 会社自身が挙げる懸念 | 課題を知る |
| 研究開発活動 | 何を開発しているか | 技術系の志望動機に |
| 設備の状況 | 工場・拠点の所在地 | 勤務地の見当 |
章の構成は年度や会社で多少異なります。目次から必要な章を探してください。
読む順番の目安
時間がないときは、この順で読んでください。
①事業の内容(何をしている会社か)→ ②従業員の状況(規模と待遇の目安)→ ③事業等のリスク(課題)→ ④研究開発活動(技術系の場合)。
この4つで、面接で話せる程度の理解には届きます。数字を暗記する必要はありません。どんな会社かを自分の言葉で説明できることのほうが大切です。
「事業等のリスク」が使える理由
面接で「当社の課題は何だと思いますか」と聞かれることがあります。
このとき、憶測で答えるより、会社自身が公表している内容を踏まえて話すほうが根拠があります。
ただし、書かれている内容をそのまま読み上げるのではなく、自分がどう考えたかを添えてください。資料は材料であって、答えそのものではありません。
複数年分を見ると変化が分かります
同じ会社の有価証券報告書を2〜3年分並べると、事業の重点がどう移っているかが見えることがあります。
ただし、変化の理由を推測で語らないでください。理由は中期経営計画や決算説明資料に書かれていることがあります。
有価証券報告書は分量が多く、最初は読みにくく感じます。全部読もうとせず、必要な章だけを開いてください。ブラウザの検索機能で「従業員の状況」と入力すれば、該当箇所にすぐ移動できます。
25決算説明資料・中期経営計画
図が多く読みやすい資料です。
| 資料 | 特徴 | 使い道 |
|---|---|---|
| 決算説明資料 | 図表が多く視覚的 | 事業の状況をつかむ |
| 中期経営計画 | これから何をするかの方針 | 志望動機の材料 |
| 統合報告書 | 事業と取り組みをまとめた冊子 | 会社の考え方を知る |
各社のサイトの「投資家情報」「IR情報」にあります。採用ページではなくIRページを見るのがポイントです。
採用ページとIRページは別物です
多くの学生は採用ページだけを見ます。しかし採用ページは学生向けに書かれた資料であり、事業の詳細は簡略化されていることがあります。
IRページは投資家向けなので、事業の中身がより具体的です。読みにくく感じるかもしれませんが、図表の多い決算説明資料から入ると理解しやすくなります。
採用ページとIRページの両方を見ている学生は多くありません。差がつくのはここです。
中期経営計画が志望動機に効く理由
中期経営計画には、これから数年で力を入れる分野が書かれています。
「この会社は今後どこに向かうのか」が公式に書かれた資料なので、志望動機を組み立てる材料になります。採用ページの抽象的なメッセージより、こちらのほうが具体的です。
資料がない会社もあります
公開の有無や形式は会社によって異なります。非上場の会社は、こうした資料がない場合があります。
資料がないことを理由に会社を評価しないでください。公開の方針は会社ごとの判断です。
決算説明資料は図が多いぶん、短時間で全体像をつかむのに向いています。文章が中心の有価証券報告書より先に、こちらを見るほうが理解しやすい場合があります。順番に決まりはないので、読みやすいほうから入ってください。
26業界団体と官庁の資料
業界単位の資料があります。
個別の会社ではなく業界全体を知りたいときは、業界団体や官庁の資料が使えます。
会員企業一覧が使えます
業界団体のサイトには会員企業の一覧が掲載されていることがあります。これは社名を知る手がかりとして役立ちます。
就活の最初の壁は「どんな会社があるか知らない」ことです。一覧から名前を知り、気になった会社の採用ページを見る——という進め方ができます。
統計を使うときの確認事項
統計を使うときは、調査の範囲と時点を必ず確認してください。いつの、どこまでを含む数字なのかで意味が変わります。
また、団体に加盟していない会社もあります。団体の資料に載っていないことは、その会社がないことを意味しません。
業界団体の資料は、個別企業の資料と違って「業界全体でどうなっているか」が分かります。志望動機で業界の話をするときの前提を確認するのに使えます。ただし、業界全体の話だけで志望動機を書くと、どの会社にも当てはまる文章になります。
27業界用語|CASE・MaaSなど
説明会や記事で出てくる言葉です。
よく出る用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| CASE | Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)、Electric(電動化)の頭文字。自動車業界の変化を表す言葉として使われる |
| MaaS | Mobility as a Service。移動をサービスとして提供する考え方 |
| OEM | Original Equipment Manufacturer。ここでは完成車メーカーを指すことが多い |
| ティア(Tier) | 部品メーカーの納入階層。ティア1は完成車メーカーへ直接納入 |
| サプライチェーン | 素材から部品、完成車、販売までの供給の連なり |
車の種類を表す言葉
技術・ものづくりの言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ADAS | 先進運転支援システム。自動ブレーキや車線維持など |
| SDV | Software Defined Vehicle。ソフトウェアで機能を更新していく車の考え方 |
| パワートレイン | エンジンやモーターなど、車を動かす動力系の総称 |
| プラットフォーム | 複数車種で共通して使う車台の基本構造 |
| モジュール | 複数の部品をまとめた単位で納入する方式 |
| 内製・外製 | 自社でつくるか、社外から調達するか |
| 量産 | 試作段階を終えて、継続的に生産する段階 |
| 歩留まり | 生産したもののうち、良品の割合 |
用語は知っていれば説明会の理解が早くなる程度のもので、覚えること自体が目的ではありません。
面接で用語を並べても評価にはつながりません。意味を理解したうえで、自分の言葉で話せるかが大切です。
用語が分からないまま説明会に出ると、話の半分が入ってきません。逆に、ここに挙げた程度の言葉を知っているだけで、資料も説明会もかなり読みやすくなります。覚えるというより、意味を一度確認しておく、という使い方で十分です。
28電動化で起きていること
各社が方針を公表しています。
電気自動車が増えると、車の構造そのものが変わります。エンジンに関わる部品の役割が変わり、電池・モーター・制御ソフトの比重が上がります。
業界の輪郭が広がっています
その結果、これまで自動車業界の外にいた電機メーカー、化学メーカー、半導体メーカー、IT企業が関わる場面が増えています。
「自動車業界」の輪郭が広がっている、と言い換えることもできます。情報系や電気系の学生にとっては、自動車が選択肢に入りやすくなっているとも言えます。
変化は会社ごとに違います
「電動化で自動車業界は大変になる」という話を見かけることがありますが、どの会社がどう影響を受けるかは一律ではありません。
電池や制御に強い会社にとっては関わる範囲が広がる変化かもしれませんし、エンジン部品に特化した会社にとっては事業の組み替えが必要な変化かもしれません。
どちらになるかは、その会社が自分でどう説明しているかを読むのが確実です。中期経営計画と統合報告書に方針が書かれています。会社自身の言葉が、いちばん確かな材料です。
ニュース記事を読むときは、出典をたどってください。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。
電動化に関連して、ソフトウェアの比重が上がっていることもよく指摘されます。車の機能をソフトで更新していくという考え方は、従来のものづくりとは進め方が異なります。情報系の学生にとっては、関わりどころが増えているとも言えます。各社の説明で確認してください。
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
29インターンシップの探し方
層ごとに探すと見つかります。
インターンシップを探すときも、5つの層を意識すると候補が広がります。
会社名を知らないと探せません
インターンを探すうえでの最初の壁は、会社名を知らないことです。
本記事の各層の表や、業界団体の会員企業一覧を手がかりに、まず社名を知るところから始めてください。名前が分かれば、採用ページにたどり着けます。
参加の扱いは案内で確認
参加が本選考にどう関わるかは会社によって異なり、公表されていないことが一般的です。「インターンに出ないと不利」という話は、根拠が示されていないことがほとんどです。
案内に記載がある場合はその記載を確認してください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。
参加できなくても選択肢は残ります
インターンに参加できなかったとしても、本記事で挙げた資料は誰でも読めます。
有価証券報告書も中期経営計画も、参加の有無に関係なく公開されています。調べる手段は等しくあるという点は押さえておいてください。
なお、インターンに参加できたかどうかで自分を評価しないでください。応募が集中する会社では参加できる人数に限りがあります。参加の有無と、その後の選考の結果は別の話です。
30志望動機の材料を集める
資料から材料を取ってください。
志望動機が書けない原因の多くは、材料が足りないことです。
「車が好き」だけでは、どの会社にも当てはまる文章になります。会社ごとの材料を持っていないと、区別できる内容が書けません。
よくある行き違い
これらが弱いのは、他の会社でも同じことが言えてしまうためです。
同じ層の2社を比べる
材料を集めるとき、同じ層の2社を並べて読むと違いが見えます。
完成車メーカー2社、あるいは部品メーカー2社の中期経営計画を読み比べると、力を入れている分野が違うことが分かります。その違いが、「なぜこの会社か」の答えになります。
1社だけ読むと、業界共通の話なのかその会社固有の話なのか区別できません。
自分の側の材料も要ります
会社の材料だけでは志望動機になりません。自分がなぜそこに関心を持つのかという側の材料も必要です。
研究内容、アルバイト、部活動——どんな経験でも構いません。会社の方向性と自分の経験がどこで接するかを書けば、その会社に向けた文章になります。
経験の整理は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で、志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
書いたあとは、会社名を別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも文章が成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。置き換えると成立しなくなる部分が、その会社を志望する理由です。
31選考で確認すること
業界研究では分からない部分です。
募集要項で確認する項目
業界の資料をどれだけ読んでも、募集の条件は分かりません。
条件が書かれているのは募集要項と、後で示される書面です。業界研究と条件の確認は別の作業として進めてください。
説明会や面接で確認できること
これらは事務的な確認事項です。聞いても差し支えありません。
ただし、募集要項に書いてあることをそのまま聞くと、資料を読んでいないと受け取られます。先に読んでから、書いていないことを聞いてください。
聞く相手を間違えない
確認したい内容によって、聞く先が変わります。募集の条件は採用担当、仕事の中身は現場の社員が答えやすい内容です。
説明会で現場の社員に給与の詳細を聞いても、その場で正確に答えられないことがあります。内容に合った相手に聞くと、確かな回答が得られます。
労働条件の取り扱いに疑問がある場合は、労働局の総合労働相談コーナーにご相談いただけます。
確認したいことは、思いついたときにメモしておいてください。説明会や面接の場で急に思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項を書き出しておくと、その場で聞きそびれることが減ります。
32選考の時期の考え方
各社の案内で確認してください。
選考の時期は会社ごとに違い、年度によっても変わります。だから「自動車業界は◯月から」という一般論は当てになりません。見るべきは各社の採用ページです。
層をまたぐと管理が必要になります
完成車メーカー、部品メーカー、販売会社——複数の層に応募する場合、それぞれ募集の時期が違うことがあります。
案内が届くたびに予定表へ記録し、締切を一覧で管理してください。会社名、応募した日、次の予定、締切——この4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。
管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
確認するのは各社の採用ページ
就活サイトのスケジュール記事は、一般的な目安として書かれていることが多く、個別の会社には当てはまらないことがあります。
実際の日程は各社の採用ページと、届いた案内で確認してください。記載がない場合は問い合わせることができます。
時期の情報は年度ごとに変わります。前年度の記事や、先輩から聞いた話をそのまま当てはめないでください。必ず今年度の案内を確認してください。
33向き不向きの考え方
事実を集めて、自分で決める話です。
「自分は自動車業界に向いていますか」——これは記事が答えられる問いではありません。向き不向きは人によって違い、外から決められるものではないからです。
代わりに確認できること
その代わり、働き方の事実は確認できます。
工場勤務があるのか、転勤があるのか、社外の人と接する仕事か、扱う時間の単位はどのくらいか——こうした事実を集めて、自分が続けられそうかを判断してください。
「向いているか」ではなく「この条件で働けるか」という問いに置き換えると、確認できる形になります。
実際に見てから判断する
資料だけでは分からないことがあります。工場見学やインターンシップに参加できる機会があれば、実際の場所を見るのがいちばん確かです。
説明会で「職場を見る機会はありますか」と聞くこともできます。見たうえで違うと感じたなら、それも判断の材料です。合わないと分かることにも価値があります。
働いている人に聞くと、資料では分からない日々の進み方が分かります。OB・OG訪問の進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
なお、いまの時点で向いているかどうかが分からないのは普通のことです。働いたことのない仕事について、事前に分かることには限りがあります。分かる範囲の事実を集めて、そのうえで決めるしかありません。
34他の業界と迷ったとき
同じ項目で並べてください。
自動車と他業界で迷うことがあります。そのとき大切なのは、同じ項目で並べることです。
印象で比べない
「自動車はものづくり、ITはスピード感」といった印象で比べると、根拠のない結論になります。
そうではなく、事業の内容、働く場所、職種、方針、条件という同じ項目を、それぞれの業界の会社について埋めてください。埋めると差が見えます。
重なる領域が増えています
電動化やソフトウェアの比重が上がったことで、自動車とITや電機の境目は以前より曖昧になっています。
車載ソフトを開発する仕事は、自動車業界にも、IT企業にも、電機メーカーにもあります。業界名ではなく、やる仕事で見るという見方もできます。
業界を絞りきらない進め方もあります
必ずしも1つの業界に絞る必要はありません。同じ職種で複数の業界を見るという進め方もあります。
たとえば「購買の仕事がしたい」なら、自動車でも電機でも食品でも購買はあります。業界軸ではなく職種軸で探すと、候補の集め方が変わります。
項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。
迷っている段階では、無理に結論を出さなくて構いません。両方の業界の会社を数社ずつ調べていくうちに、どちらの資料を読むほうが面白いと感じるかが見えてくることがあります。それも一つの材料です。
35やらない方がいいこと
いくつかあります。
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 完成車メーカーだけ見る | 選択肢の大半を見逃す |
| 知名度で会社を判断する | 知名度と規模は別 |
| 出典のない数字を使う | 裏が取れない |
| 平均給与を初任給と混同する | 全従業員の平均であり別物 |
| 親会社の情報を子会社に当てはめる | 条件は会社ごとに違う |
| 業界の資料で条件を判断する | 条件は募集要項にある |
特に影響が大きいのが出典のない数字を使うことです。
数字は具体的なぶん信じやすく、一度取り込むとそれを前提に判断が進みます。前提が違っていた場合、後の判断もすべてずれます。
出典が確認できない数字は、判断の材料から外してください。
会社の数を絞りすぎない
最初から2〜3社に絞ると、比べる材料が足りなくなります。まず層ごとに数社ずつ見て、そこから絞るほうが判断の根拠が増えます。
知っている会社だけを見ていると、選択肢はテレビCMで見た会社に限られます。それは業界の一部でしかありません。
もう一つ挙げるなら、1社の情報だけで業界全体を判断しないことです。説明会で聞いた話は、その会社の話です。業界の共通事項なのか、その会社固有の話なのかは、他の会社も見ないと分かりません。
36相談できる窓口
内容で分かれます。
調べ方や書類の相談は大学のキャリアセンターでできます。在学生は無料のことが多くあります。
労働条件の取り扱いに疑問がある場合は労働局の総合労働相談コーナー(無料・全国・予約なしで利用できる場合があります)に、法令の解釈は弁護士にご相談ください。
どこに相談すればいいか分からないときは、まず大学のキャリアセンターに聞いてください。内容によっては、適切な窓口を案内してもらえることがあります。
37よくある質問
自動車業界に入るなら、やっぱり完成車メーカーですか?
完成車メーカーは5層のうちの1つにすぎません。国内の完成車メーカーが十数社なのに対し、部品メーカーは数千社規模で存在します。素材、生産設備、販売、物流、金融にも自動車に関わる仕事があります。どの層が合うかは、自分が何に関心を持っているかで変わります。
ティア1のほうが良い会社ですか?
ティア1・ティア2は納入先による呼び分けであり、会社の優劣ではありません。同じ会社が取引によってティア1にもティア2にもなり得ます。ティア2やティア3にも、特定の加工技術で代わりのいない会社があります。呼び方ではなく、その会社が何をつくっているかで見てください。
文系でも自動車業界に入れますか?
入れます。完成車メーカーにも部品メーカーにも、購買・調達、営業、商品企画、生産管理、経理、人事、法務などの職種があります。特に購買・調達は、部品メーカーと交渉する重要な職種です。ただし、どの職種で募集があるかは会社と年度によって変わるため、各社の採用ページで確認してください。
平均年収を知りたいのですが、どこで調べられますか?
各社の有価証券報告書の「従業員の状況」に、提出会社の平均年間給与が記載されているのが一般的です。EDINETや各社のIRページで無料で読めます。ただし、全従業員の平均であり管理職も含むこと、賞与や残業代を含むこと、提出会社単体の数字であること、そして入社1年目の給与ではないことに注意してください。平均年齢とセットで見てください。
初任給はどこで確認しますか?
募集要項です。有価証券報告書の平均年間給与は全従業員の平均なので、初任給とは別物です。初任給、手当、賞与の記載は募集要項と、後で示される書面にあります。記載がない項目は応募先に確認してください。
トヨタの販売店とトヨタ自動車は同じ会社ですか?
別の会社です。販売会社(ディーラー)は多くの場合、地域ごとの独立した企業で、採用も別に行っています。募集の時期も条件も異なるため、募集要項の冒頭でどの法人が募集しているかを確認してください。販売会社は勤務地が地域内に限られることが多く、地元で働きたい場合の選択肢にもなります。
ブリヂストンや村田製作所は自動車業界ですか?
自動車に部品を供給していますが、就職情報ではゴム・化学、電子部品として扱われることがあります。自動車で検索すると出てこない場合があるので、関心がある分野は業界名を広げて探してください。自動車向けの位置づけは各社の有価証券報告書のセグメント情報で確認できます。
素材メーカーに入ったら自動車の仕事ができますか?
素材メーカーは自動車以外にも幅広く供給しており、入社後に自動車向けの部署に配属されるとは限りません。これは避ける理由にはなりませんが、期待と実際がずれると後で困ります。配属の考え方は各社で違うため、説明会や募集要項で確認してください。
電動化で自動車業界はどうなりますか?
電池・モーター・制御の比重が上がり、電機や半導体、IT企業が関わる場面が増えています。情報系や電気系の学生にとっては選択肢が広がっているとも言えます。ただし、影響の出方は会社ごとに違います。各社が中期経営計画や統合報告書で方針を公表しているので、関心のある会社の資料を直接お読みください。
理系ですが、どの職種が自分に合いますか?
専攻と職種が一対一で対応するわけではありませんが、機械系なら車両設計や生産技術、電気・電子系なら電装や制御、情報系なら車載ソフトや自動運転、材料・化学系なら材料開発や電池——といった関わり方があります。募集要項に対象学部・学科が記載されていることがあるので確認してください。研究内容に近い技術を使っている会社を探すと、志望動機も具体的になります。
志望動機が書けません。どうすればいいですか?
材料が足りていない可能性があります。同じ層の2社の中期経営計画を読み比べると、力を入れている分野の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。1社だけ読むと、業界共通の話なのかその会社固有の話なのか区別できません。加えて、自分の経験と会社の方向性がどこで接するかを書いてください。
面接で「当社の課題は?」と聞かれたらどう答えますか?
有価証券報告書の「事業等のリスク」には、会社自身が課題だと考えていることが書かれています。憶測で答えるより、公表されている内容を踏まえて話すほうが根拠があります。ただし、そのまま読み上げるのではなく、自分がどう考えたかを添えてください。資料は材料であって、答えそのものではありません。
勤務地は選べますか?
会社と職種によって違います。全国転勤のコースと地域を限定したコースを分けている会社もあります。自動車の製造は工場で行われるため、勤務地が都市部とは限りません。募集要項に記載があるので確認し、記載がない場合は確認してください。勤務地は生活に直結するので、曖昧なまま進めないでください。
工場勤務になる可能性はありますか?
職種によってあります。生産技術、生産管理、品質保証、製造は工場が主な職場になることが多く、設計や開発も試作や評価で工場や試験場に通うことがあります。工場の所在地は有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。交替勤務の有無は募集要項で確認してください。
海外で働きたいのですが、完成車メーカーしかありませんか?
部品メーカーにも道があります。部品メーカーは性能と価格が合えば国を問わず採用されるため、海外の自動車メーカーと取引している会社があります。各社のサイトの「拠点一覧」や、有価証券報告書の「設備の状況」で海外拠点を確認できます。ただし海外赴任の制度や対象職種は会社によって違うので、募集要項で確認してください。
完成車メーカーと部品メーカー、どちらを受けるべきですか?
優劣はありません。違うのは関わる範囲の広さです。完成車メーカーは1台の車に何百人も関わるため担当は全体の一部になり、部品メーカーは特定の部品を深く担当することが多くなります。全体を見たいのか、一つを深めたいのかで受け取り方が変わります。両方を1社ずつ調べて比べるのが確実です。
自動車業界とIT業界で迷っています。
同じ項目で並べて比べてください。事業の内容、働く場所、職種、今後の方針、条件——この5つをそれぞれの会社について埋めると差が見えます。印象で比べると根拠のない結論になります。なお、車載ソフトを開発する仕事は自動車業界にもIT企業にも電機メーカーにもあるため、業界名ではなく仕事の中身で見るという方法もあります。
インターンシップはどう探せばいいですか?
各社の採用ページ、大学のキャリアセンター、学内説明会が入口です。探すうえでの最初の壁は会社名を知らないことなので、本記事の各層の表や業界団体の会員企業一覧を手がかりに社名を知るところから始めてください。参加が本選考にどう関わるかは会社によって異なり、公表されていないことが一般的です。
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。就活サイトのスケジュール記事は一般的な目安であり、個別の会社に当てはまらないことがあります。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。複数の層に応募する場合は、締切を一覧で管理してください。
有価証券報告書は難しそうですが、どこから読めばいいですか?
全部読む必要はありません。①事業の内容、②従業員の状況、③事業等のリスク、④研究開発活動(技術系の場合)——この4つで面接で話せる程度の理解には届きます。数字を暗記する必要はなく、どんな会社かを自分の言葉で説明できることのほうが大切です。目次から必要な章を探してください。
まず何から読めばいいですか?
関心のある層を決めてから、その層の会社を2〜3社選び、各社の有価証券報告書の「事業の内容」と、中期経営計画を読むのが早道です。業界全体の資料は、個別の会社を見たあとのほうが理解しやすくなります。迷う場合は、完成車メーカーと部品メーカーを1社ずつ調べると、同じ自動車でも仕事がかなり違うことが分かります。
この記事に載っていない会社もありますか?
あります。本記事の社名は各層にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。ここに載っていない会社にも、自動車に関わる仕事は数多くあります。
38まとめ|5層に分けて、関心のある層から調べる
自動車業界は5つの層でできています。①完成車、②部品、③素材、④生産設備、⑤販売・物流・金融。
①以外にも道があります。完成車メーカーは国内で十数社、部品メーカーは数千社規模。応募できる先の数が2桁違います。③④⑤にも自動車に関わる仕事があります。
知名度と規模は別です。社名を知らない部品メーカーが、数万人規模で世界に供給していることは珍しくありません。
販売会社はメーカーとは別会社です。「トヨタで働きたい」がメーカーなのか販売会社なのかで、応募先が変わります。
年収は自分で確認できます。各社の有価証券報告書「従業員の状況」に平均年間給与が載っています。ただし全従業員の平均であり、初任給とは別物です。初任給は募集要項で確認してください。
志望動機の材料は中期経営計画にあります。同じ層の2社を読み比べると、力を入れている分野の違いが見えます。
最後に。本記事の社名は各層にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。網羅した一覧でもありません。売上・シェア・年収などの数値と企業の将来性、向き不向きは扱っていません。数値は各社の開示資料や業界団体・官庁の公表資料で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。