化学・素材業界とは|全体像と分野の調べ方
化学・素材業界は7つの分野に分かれています。①総合化学(三菱ケミカル・住友化学・三井化学・旭化成)、②電子材料・機能性化学(信越化学工業・JSR・東京応化工業)、③繊維・高機能材料(東レ・帝人・クラレ)、④塗料・インキ(日本ペイント・関西ペイント)、⑤産業ガス(日本酸素ホールディングス・エア・ウォーター)、⑥鉄鋼・非鉄(日本製鉄・JFEスチール)、⑦ガラス・セラミックス・セ…
「化学メーカー」が何をつくっているか、言えますか。
ほとんどの人が答えられません。製品が店に並ばないからです。
しかし、スマートフォンの画面も、車の内装も、服の繊維も、食品の包装も——もとをたどれば化学メーカーの製品です。
この記事では、化学・素材業界を7つの分野に分けたうえで、職種、働く場所、年収の調べ方、志望動機の材料、選考での確認事項まで通しで整理します。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 どんな会社があるか|7つの分野
- 業界の地図|7つの分野
- 川上・川下という考え方
- ①総合化学|1社で何十種類もつくる
- ②電子材料・機能性化学|半導体とつながる
- ③繊維・高機能材料
- ④塗料・インキ・接着剤
- ⑤産業ガス|目に見えない素材
- ⑥鉄鋼・非鉄金属
- ⑦ガラス・セラミックス・セメント・紙
- コンビナートという働く場所
- 「顧客が誰か」で会社を見分ける
- 保安と環境|この業界の前提
- グループ関係と社名の変化
- どの大学から何人入っているか
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
第1部 どんな会社があるか|7つの分野
01業界の地図|7つの分野
まずこの表を頭に入れてください。
| 分野 | 何をつくる会社か | 例 |
|---|---|---|
| ①総合化学 | 基礎化学品から機能性材料まで幅広く手がける | 三菱ケミカルグループ、住友化学、三井化学、旭化成、レゾナック、東ソー |
| ②電子材料・機能性化学 | 半導体・電子部品向けの材料や特殊な薬品 | 信越化学工業、JSR、東京応化工業、日産化学、ADEKA、日本触媒 |
| ③繊維・高機能材料 | 繊維、炭素繊維、フィルム、樹脂 | 東レ、帝人、クラレ、東洋紡 |
| ④塗料・インキ・接着剤 | 塗る、印刷する、貼り合わせる材料 | 日本ペイントホールディングス、関西ペイント、DIC |
| ⑤産業ガス | 酸素・窒素・アルゴンなどを製造し供給する | 日本酸素ホールディングス、エア・ウォーター、岩谷産業 |
| ⑥鉄鋼・非鉄金属 | 鉄、銅、アルミ、レアメタルの素材 | 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、住友金属鉱山、UACJ |
| ⑦ガラス・セラミックス・セメント・紙 | 無機素材、建材、包装材 | AGC、日本電気硝子、日本特殊陶業、太平洋セメント、王子ホールディングス |
1社が複数の分野にまたがります
旭化成は③でもあり①でもあり、住宅や医療も手がけます。信越化学工業は②でもあり①でもあります。「この会社は何の会社か」を一言で言えないのが普通です。
だからセグメント情報を見てください
その会社がどの事業でいくら稼いでいるかは、有価証券報告書のセグメント情報に書かれています。読み方は22章で説明します。
社名やイメージで判断せず、事業別の数字と製品の用途を見る——これが化学業界を調べるときの基本です。
02川上・川下という考え方
化学は「流れ」でできています。
化学は川上から川下へ流れる。どの位置にいる会社かで仕事が変わる。
| 位置 | つくるもの | 競争の軸 |
|---|---|---|
| 川上 | 基礎化学品。大量に同じものをつくる | 規模、原料の調達、コスト |
| 川中 | 誘導品。基礎化学品から派生させる | 技術、品揃え |
| 川下 | 機能性材料。顧客の用途に合わせてつくる | 性能、顧客との作り込み |
川上と川下では仕事が違います
川上は大きな設備を安定して動かすことが価値になります。化学工学、プロセス、設備の仕事が中心です。
川下は顧客ごとに配合や仕様を変えることが価値になります。研究開発と技術営業の比重が上がります。
「コモディティ」と「スペシャリティ」
業界ではこの2語がよく使われます。コモディティ=どの会社がつくっても同じもの。スペシャリティ=その会社でなければつくれないもの、という意味で使われます。
各社の中期経営計画には、どちらに力を入れるかの方針が書かれていることがあります。会社の方向性を知る手がかりになります。
就活での意味
同じ「化学メーカー」でも、川上寄りの会社と川下寄りの会社では求められる専攻も日々の仕事も違います。まず自分がどちらに関心があるかを決めてください。
03①総合化学|1社で何十種類もつくる
基礎化学品から機能性材料まで、幅広く手がける会社です。
会社の中に別の業界が入っています
総合化学では、同じ会社の中に、性格の違う事業が同居しています。石油化学の事業と医薬の事業では、顧客も開発の進め方もまったく違います。
つまり「この会社に入る」だけでは、何をするかが決まりません。どの事業に配属される可能性があるかまで確認してください。
事業の組み替えが起こります
化学業界では、事業を売却したり、他社と統合したりすることが比較的よくあります。数年前の業界本の記述が、いまの事業構成と合っていないことがあります。
確実なのは直近の有価証券報告書と決算説明資料です。会社が自分で出している最新の資料を見てください。
研究所と工場の両方があります
総合化学は研究所を持つことが多く、研究職としての採用があります。一方で大きな工場も持つため、プロセス・設備・製造の職種もあります。募集の区分は会社ごとに違います。
04②電子材料・機能性化学|半導体とつながる
ここは成長分野として語られることの多い領域です。
| 材料 | 使われる場所 | 会社の例 |
|---|---|---|
| シリコンウエハ | 半導体の土台 | 信越化学工業、SUMCO |
| フォトレジスト | 半導体の回路を焼き付ける | 東京応化工業、JSR、信越化学工業、住友化学、富士フイルム |
| ディスプレイ材料 | 液晶・有機ELの部材 | JSR、日産化学、DIC |
| 電池材料 | リチウムイオン電池の部材 | 旭化成、東レ、住友化学、日本触媒 |
| 封止材・基板材料 | 半導体を保護する、載せる | 住友ベークライト、レゾナック、味の素 |
顧客は半導体・電機メーカーです
この分野は顧客の工程に合わせて材料を作り込みます。顧客の装置で使えるかどうかを一緒に確かめながら開発するため、顧客と長く深く付き合う仕事になります。
半導体業界の全体像は半導体業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。材料の層がどこに位置するかは、そちらの図で確認できます。
食品や写真の会社が出てくる理由
表に味の素や富士フイルムが出てくるのを不思議に思うかもしれません。これは長年培った化学の技術を、電子材料に応用しているためです。
会社のイメージと事業の中身は一致しません。ここでもセグメント情報で確かめるのが基本です。
少量でも価値の高い製品です
電子材料は量は多くないが、要求される純度や性能が極めて高いという性質があります。だから川上の大量生産とは、工場の姿も仕事の進め方も違います。
05③繊維・高機能材料
「繊維会社」は、もう繊維だけの会社ではありません。
| 製品 | 使われる場所 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 衣料用繊維 | 衣類、スポーツウェア | 東レ、帝人、東洋紡 |
| 産業用繊維 | タイヤ、エアバッグ、フィルター | 東レ、帝人 |
| 炭素繊維 | 航空機、自動車、スポーツ用品 | 東レ、帝人 |
| フィルム | 包装、電子部品、ディスプレイ | 東レ、東洋紡 |
| 樹脂・化成品 | 自動車部品、電子部品 | クラレ、帝人 |
| 水処理膜 | 海水の淡水化、排水処理 | 東レ |
繊維の技術が別の製品になります
糸をつくる技術は、フィルム、膜、複合材料につながります。「繊維会社」という呼び名は歴史的なもので、いまの事業はもっと広くなっています。
だから社名のイメージで事業を判断しないでください。ここでもセグメント情報が答えです。
軽くて強い材料という切り口
炭素繊維のように金属より軽くて強い材料は、燃料の消費を減らす目的で使われます。航空機や自動車の分野とつながる領域です。
自動車業界の全体像は自動車業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。素材側から自動車に関わる道もあります。
消費者に近い製品もあります
衣料用の繊維は、アパレルメーカーを通じて消費者に届きます。この分野では、素材を売り込むために最終製品の市場まで見る仕事があります。
06④塗料・インキ・接着剤
「塗る」「貼る」「印刷する」ための材料です。
| 製品 | 使われる場所 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 自動車用塗料 | 車体の塗装 | 日本ペイントホールディングス、関西ペイント |
| 建築用塗料 | 建物の外壁、内装 | 日本ペイントホールディングス、エスケー化研 |
| 工業用塗料 | 機械、船舶、橋梁 | 中国塗料など |
| 印刷インキ | 包装、出版、ラベル | DIC、東洋インキSCホールディングス |
| 接着剤・粘着材 | 電子部品、建材、日用品 | 日東電工、スリーボンドなど |
顧客の現場で性能が決まります
塗料は塗る相手と塗り方で仕上がりが変わります。だから製品を売って終わりではなく、顧客の工場や現場で条件を合わせる仕事が伴います。
この「顧客の現場に入る」性質は、技術営業やサービスの職種につながります。
環境の要求が製品を変えます
溶剤を減らす、有害物質を使わない——環境や安全の要求が、製品の仕様を決める分野です。各社の資料に、こうした要求への対応が書かれていることがあります。
身近なのに知られていない分野です
塗料もインキも、最終製品の表面に使われているのに、メーカー名は表に出ません。「名前を知らない優良企業」がこの分野には多くあります。
07⑤産業ガス|目に見えない素材
酸素、窒素、アルゴン、水素——これらも素材です。
会社の例としては、日本酸素ホールディングス、エア・ウォーター、岩谷産業などがあります。
設備ごと顧客に置くことがあります
ガスは運ぶのに費用がかかるため、顧客の工場の敷地に製造設備を置き、配管で直接供給するという形があります。顧客と長期の契約で結びつく事業です。
顧客が業界を問いません
製鉄、半導体、化学、医療、食品——ガスはあらゆる産業で使われます。だから特定の産業の波に左右されにくいと説明されることがあります。
保安が事業の前提です
高圧のガスを扱うため、法令に基づく保安の体制が求められます。資格を持つ人が必要な業務もあります。資格については26章で扱います。
08⑥鉄鋼・非鉄金属
素材のなかでも、規模が大きい分野です。
| 分野 | 内容 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 高炉(鉄鋼) | 鉄鉱石から鉄をつくる | 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所 |
| 電炉(鉄鋼) | 鉄スクラップを溶かして鋼にする | 東京製鐵、合同製鐵など |
| 特殊鋼 | 用途に合わせた性質を持つ鋼 | 大同特殊鋼、愛知製鋼、山陽特殊製鋼 |
| 非鉄金属 | 銅、アルミ、レアメタルなど | 住友金属鉱山、三菱マテリアル、UACJ、古河電気工業 |
| 金属加工・線材 | 電線、ばね、板 | 住友電気工業、古河電気工業 |
大きな設備を動かす仕事です
高炉や圧延の設備は巨大で、止めずに動かし続ける運転が前提になります。そのため交代勤務のある職場があります。
顧客は自動車・建設・電機です
鋼材は自動車の車体、建物の骨組み、家電の筐体などに使われます。だから顧客の産業の動きが事業に影響します。
自動車向けには、軽くて強い鋼板のように用途に合わせた開発が行われます。素材でありながら、顧客と一緒に作り込む面があります。
脱炭素の取り組みが語られる分野です
製鉄は製造の過程で二酸化炭素が出ます。各社がこれを減らす取り組みを公表しており、中期経営計画や統合報告書に記載があります。
どんな方法に取り組んでいるかは会社によって違います。会社の資料で確かめてから話題にしてください。
09⑦ガラス・セラミックス・セメント・紙
無機素材と、生活を支える素材の分野です。
| 分野 | 用途 | 会社の例 |
|---|---|---|
| 板ガラス | 建物、自動車 | AGC、日本板硝子 |
| 特殊ガラス | ディスプレイ、医薬用の容器 | AGC、日本電気硝子 |
| セラミックス | 電子部品、自動車部品、産業用部材 | 京セラ、日本特殊陶業、日本ガイシ |
| セメント・生コン | 建築、土木 | 太平洋セメント、住友大阪セメント |
| 紙・パルプ | 包装、印刷、衛生用品 | 王子ホールディングス、日本製紙 |
| 衛生陶器・建材 | 住宅設備 | TOTO、LIXIL |
ガラスとセラミックスは電子部品でもあります
「ガラス=窓」「セラミックス=陶器」というイメージがありますが、実際には電子部品の材料としての比重が大きい会社があります。
ここでもセグメント情報を見れば、どの用途で稼いでいるかが分かります。
紙は包装材として使われます
紙の需要のうち、印刷用紙と包装用の紙では、動きが違うと説明されることがあります。各社の決算説明資料に、用途別の説明が載っていることがあります。
建築・住宅とつながります
セメント、ガラス、建材は建設業界が顧客です。建設・不動産の動きと関わる分野なので、その業界の資料も併せて見ると理解が進みます。
10コンビナートという働く場所
化学工場は、集まって建っています。
石油化学の工場は臨海部のコンビナートに集まっていることが多くあります。原料や製品を配管で直接やりとりし、電気や蒸気を融通し合うためです。
勤務地が生活を決めます
化学メーカーの工場は都市部から離れた場所にあることが多くなります。配属される可能性のある場所は、有価証券報告書の「設備の状況」で確認できます。
研究所は別の場所にあります
研究所は工場とは別の場所にあることが多く、都市近郊に置かれる場合もあります。研究職と製造職では、勤務地の性格が変わるということです。
どちらの職種で募集しているか、配属はどう決まるかを、募集要項と説明会で確認してください。
定期修理という時期があります
装置を止めて点検・修理を行う時期があります。この期間は多くの人が関わる大きな仕事になります。工場に配属されると、この行事が仕事の区切りになります。
11「顧客が誰か」で会社を見分ける
化学品は、同じ製品がいくつもの産業に使われます。
用途で見ると、会社の性格が分かります
同じ樹脂でも、自動車向けと食品包装向けでは、求められることも取引の仕方も違います。各社の製品ページには用途の説明が載っています。
会社を調べるときは、「何をつくっているか」より「誰に売っているか」を見てください。そのほうが仕事の中身が見えます。
特定の顧客に偏ることがあります
電子材料のように顧客が限られた数社という分野があります。この場合、1社との関係づくりが仕事の中心になります。
顧客の集中については、有価証券報告書の「事業等のリスク」に会社自身が書いていることがあります。
最終製品まで辿ってみてください
自分が関わる素材が最終的に何になるかを1つ言えるようにしておくと、志望動機にも面接の受け答えにも使えます。
12保安と環境|この業界の前提
化学は、扱うものが危険です。
可燃性、腐食性、高圧、高温——取り扱いを誤ると事故になる物質を日常的に扱います。だからこの業界では、保安が事業の前提になっています。
記録と手順の文化があります
「確かめた」だけでは足りず、確かめたことを記録に残す必要があります。手順を守ることが安全に直結するため、決められたやり方を大事にする文化があります。
研究で実験ノートを丁寧に付けていた経験は、そのまま生きます。
環境への対応が事業の課題になっています
二酸化炭素を減らす、プラスチックを再生する、有害な物質を使わない——各社が取り組みを公表しています。統合報告書や中期経営計画に記載があります。
関心があるなら、具体的にどんな方法に取り組んでいるかまで読んでください。「環境に貢献したい」だけでは、どの会社にも当てはまってしまいます。
13グループ関係と社名の変化
化学業界は、社名が変わることの多い分野です。
事業の統合、持株会社への移行、事業の売却——こうした動きで会社の名前と形が変わります。
持株会社と事業会社を区別してください
「〇〇ホールディングス」は持株会社で、実際の事業は傘下の事業会社が行っていることがあります。採用の主体がどちらかで、応募先も配属も変わります。
沿革は志望動機の材料になります
会社サイトの「沿革」を読むと、いまの事業構成になった理由が分かります。化学の会社は歴史が長いことが多く、もとは別の事業から始まった会社もあります。
会社の調べ方全般は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。
14どの大学から何人入っているか
これは公表されている場合があります。
この数字の使い方
「この大学からは入れる/入れない」という判断には使わないでください。年度によって変わりますし、人数は採用の規模にも左右されます。
使い道は別にあります。OB・OGがいるかを確かめる材料です。実績のある会社なら、キャリアセンター経由で話を聞ける可能性があります。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
研究室のつながりも見てください
化学系では、研究室に企業から直接案内が来ることがあります。指導教員や先輩に、過去の進路を聞いてみてください。
研究分野と企業の対応がはっきりしていることが多く、研究テーマがそのまま志望先の手がかりになります。
第2部 どんな仕事があるか|職種と働く場所
15職種の全体像
化学メーカーの職種は、研究・つくる・売る・支えるに分かれます。
| 職種 | やること | 主な職場 |
|---|---|---|
| 研究(探索) | 新しい材料や反応を探す | 研究所 |
| 開発(応用) | 顧客の用途に合わせて実用化する | 研究所、顧客先 |
| プロセス開発 | 実験室の反応を工場で作れる形にする | 研究所、工場 |
| 生産技術 | 工場の工程を設計し、安定させる | 工場 |
| 製造(運転) | プラントを運転し、異常に対応する | 工場 |
| 設備・保全 | 装置・配管・計装を維持し、修理する | 工場 |
| 品質保証 | 規格を決め、検査し、出荷を判断する | 工場、本社 |
| 技術営業 | 顧客の課題を聞き、材料を提案する | 営業所、顧客先 |
| 調達 | 原料を調達し、供給を確保する | 本社 |
| 安全・環境 | 保安と環境対応の仕組みを回す | 工場、本社 |
| 知的財産 | 特許の出願・管理・調査 | 本社、研究所 |
「研究職」の意味を確認してください
同じ研究職でも、新しい材料を探す仕事と、顧客の用途に合わせる仕事では中身が違います。後者は顧客との打ち合わせが多くなります。
どちらの比重が大きいかは会社と部署によります。説明会で「研究所ではどんな案件が動いていますか」と聞くと、実態が見えてきます。
スケールアップという壁があります
実験室でうまくいった反応が、工場の大きな装置では同じようにいかない——これが化学の難しさです。この橋渡しをするのがプロセス開発・生産技術の仕事です。
化学工学を学んだ人が力を発揮しやすい領域でもあります。
16専攻と職種の関係
化学系だけの業界ではありません。
化学工学の人は工場側で強い
化学工学は「実験室の反応を工場の規模で成立させる」ための学問です。プロセス開発や生産技術と直接つながります。
機械・電気の人にも入口があります
化学工場は巨大な装置の集まりです。ポンプ、熱交換器、配管、計装——これらを維持するために機械系・電気系の技術者が必要です。
「化学メーカー=化学系だけ」ではありません。募集要項の応募資格欄で対象の専攻を確認してください。
情報系の関わり方
材料の探索に計算やデータを使う取り組みが、各社の資料で紹介されることがあります。実験とデータの両方が分かる人が求められる領域です。
研究の整理の仕方は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で扱っています。
17技術営業という仕事
化学業界の営業は、技術の話をします。
顧客は「この材料でうちの製品が良くなるか」を知りたがっています。だから営業は製品の性質と顧客の工程の両方を理解している必要があります。
採用されるまでが長い
材料が顧客の製品に採用されるまで、評価に長い時間がかかることがあります。すぐに結果が出る仕事ではありません。
そのぶん、一度採用されると長く使われ続けるという性質もあります。
理系・文系どちらもいます
技術営業は理系出身者が多い職種ですが、文系からの採用がある会社もあります。入社後に製品知識を学ぶ研修が用意されていることがあります。
研修の内容は採用ページや募集要項で確認してください。
18勤務地と配属
化学業界は、研究所か工場かで勤務地が変わります。
確認の手順
①有価証券報告書の「設備の状況」で工場・研究所の所在地を見る。②採用ページの「勤務地」欄を見る。③募集要項の転勤の有無を見る。この3つで、どこで働く可能性があるかはおおむね把握できます。
交代勤務の有無は必ず確認してください
連続運転のプラントでは交代勤務が組まれる職場があります。すべての職種が該当するわけではなく、職種と配属先によります。
生活に直結する条件です。募集要項の勤務時間・シフトの欄を確認し、記載がなければ説明会や面接で聞いてください。
寮・社宅の有無も見てください
工場のある地域に配属される可能性がある場合、寮や社宅の有無、家賃補助の条件は生活費に直結します。福利厚生のページや募集要項に記載があることがあります。
19海外で働く道
化学メーカーは、海外に生産拠点を持つことが多い業界です。
英語はどの程度必要か
職種によります。海外の顧客や拠点とやりとりする職種では日常的に使い、国内の研究に閉じた職種では使う機会が限られる——これが一般的な傾向です。
採用ページに語学の目安が書かれている場合は、それが実態に近いと考えてよいでしょう。記載がなければ説明会で聞いてください。
拠点の場所を確認する方法
会社サイトの「拠点一覧」「グローバルネットワーク」に、どの国にどんな機能の拠点があるか(生産か、販売か、研究か)まで書かれていることがあります。
機能まで分かると、自分の職種で海外に行く可能性があるかの見当がつきます。
20品質保証と規制対応
化学品には、守るべき決まりが数多くあります。
「つくれるか」だけでは製品になりません
新しい材料ができても、法令上の手続きが済んでいなければ売れません。だから化学メーカーには、規制に対応する専門の仕事があります。
顧客の要求も厳しくなります
電子材料や医療向けの材料では、顧客が独自の基準を設けていることがあります。その基準を満たすための管理が必要になります。
記録が製品の信頼を支えます
どの原料をいつ使い、どんな条件でつくり、どう検査したか——この記録がたどれることが前提です。手順を守り、記録を残す姿勢が求められます。
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
21年収を自分で調べる方法
就活サイトの年収ランキングではなく、会社が出している数字を見てください。
| 知りたいこと | どこに載っているか |
|---|---|
| 全従業員の平均年収 | 有価証券報告書【企業の概況】「従業員の状況」の平均年間給与 |
| 初任給 | 各社の募集要項・採用ページ |
| 賞与の回数・時期 | 募集要項 |
| 諸手当 | 募集要項の手当欄 |
| 昇給の時期 | 募集要項 |
平均年間給与の注意点
これは全従業員の平均です。新卒の初任給ではありません。また年齢構成や職種構成で変わります。平均年齢が高い会社は高く出やすく、若い会社は低く出やすい——それだけのことです。
同じ欄に平均年齢と平均勤続年数も載っています。3つをセットで見ると、数字の意味が分かります。
交代勤務手当の有無を見てください
化学工場は装置を連続で運転するため、交代勤務が組まれる職場があります。交代勤務に関する手当があるかどうかは、募集要項の手当欄で確認できます。
持株会社の数字に注意してください
持株会社(ホールディングス)の有価証券報告書に載る平均年間給与は、持株会社に所属する社員だけの数字であることがあります。実際に働く事業会社とは別です。誰の数字を見ているのかを、従業員数と合わせて確認してください。
手取りは額面と違います
提示される金額は額面です。ここから税と社会保険料が引かれます。額面だけで生活設計をすると、想定より少なくて驚くことになります。募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。
22有価証券報告書の使い方
この業界を調べるときの、いちばん確実な資料です。
上場企業が年に1回、法律に基づいて出す書類です。金融庁のEDINETで誰でも無料で読めます。各社のサイトのIR(投資家向け情報)にも置かれています。
化学・素材業界では、ここを重点的に見てください
①セグメント情報——化学メーカーは1社が何十種類もの製品を持ちます。「何の会社か」は社名では分かりません。事業別の売上と利益がここに出ます。
②設備の状況——工場の所在地が分かります。化学の工場はコンビナートや臨海部に立地することが多く、配属の候補地を知るいちばん確実な方法です。
③研究開発活動——どの領域に力を入れているかが書かれています。研究職・開発職を志望するなら、ここが志望動機の材料になります。
全部読む必要はありません
最初から通読しようとすると挫折します。上の数か所だけを、志望する2〜3社で読み比べる——これで十分に差が見えます。章の名前や構成は年度・会社によって異なることがあるので、目次から探してください。
23決算説明資料・中期経営計画
有価証券報告書より読みやすく、会社の考えが出ます。
| 資料 | 何が書いてあるか | どこにあるか |
|---|---|---|
| 決算説明資料 | 直近の業績と、その理由の説明 | 会社サイトのIR |
| 中期経営計画 | 数年先に何をやろうとしているか | 会社サイトのIR |
| 統合報告書 | 事業の考え方、人材、環境への取り組み | 会社サイトのIR |
| 質疑応答の要旨 | 投資家が何を気にしているか | IRに掲載される場合がある |
中期経営計画が志望動機の材料になります
ここには「これから何に力を入れるか」が書かれています。同じ分野の2社の計画を読み比べると、重点の置き方の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。会社が自分で書いていることなので、外れません。
図が多いので入りやすい
決算説明資料はスライド形式で、図表が中心です。専門用語の解説が付いていることもあり、業界用語を覚える教材としても使えます。まず決算説明資料を読み、興味が出たら有価証券報告書で裏を取る——この順番が効率的です。
非上場の会社の場合
非上場だと有価証券報告書がありません。その場合は会社サイトの会社概要、採用ページ、プレスリリースが主な情報源になります。情報が少ない会社では、説明会や面接で直接聞くのが確実です。聞いて失礼になる内容ではありません。
24業界団体と官庁の資料
業界全体の話を確かめたいときに使います。
| 発行元 | 分かること |
|---|---|
| 日本化学工業協会 | 化学産業全体の資料、安全・環境の取り組み |
| 石油化学工業協会 | 石油化学製品の生産に関する統計 |
| 日本鉄鋼連盟 | 鉄鋼の生産に関する統計 |
| 経済産業省「生産動態統計」 | 化学品・鉄鋼などの品目別の生産の状況 |
| 日本製紙連合会・セメント協会など | 素材の分野ごとの統計 |
使い方は「裏取り」です
就活で統計を暗記する必要はありません。使うのはニュースや説明会で聞いた話が本当かを確かめるときです。面接で業界の話をするときも、出どころを言える情報のほうが強くなります。「ニュースで見た」より「協会の資料で見た」のほうが確かです。
「用途別」で見ると業界の姿が分かります
化学品は同じ製品がいくつもの産業に使われます。だから「どの産業向けにどれだけ出ているか」を見ると、その分野の顧客が見えてきます。
各社の決算説明資料でも、自動車向け、電子向け、住宅向けといった用途別の説明がされることがあります。用途で見る癖をつけてください。
ニュースの読み方
記事の出どころ(誰が発表したか)をたどる癖をつけてください。発表元の資料に当たれば、記事で省かれた条件や前提が分かります。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。
25業界用語|最低限これだけ
説明会で前提として使われる言葉です。
意味を言えるようにしておけば十分です
深く理解している必要はありません。説明会で言葉が出たときに話についていける——その程度で構いません。分からない言葉が出たら、その場で聞いてください。
26資格は必要か|入社後に取るものが多い
入社前に取る必要は、基本的にありません。
ただし化学業界には業務に関わる国家資格があり、入社後に取得を勧められることがあります。知っておくと、仕事の中身の理解が進みます。
会社が取得を支援することがあります
受験費用の補助や、合格時の報奨といった制度がある会社があります。制度の有無は採用ページの福利厚生・研修の欄に書かれていることがあります。
学生のうちに取るべきか
必須ではありません。ただし関心を示す材料にはなります。取るかどうかより、なぜその資格に関心を持ったかを説明できるかのほうが大切です。
資格の名前を並べるだけでは評価につながりません。
資格が必要な業務があります
法令で有資格者を置くことが求められる業務があります。そのため会社が計画的に取得を進めることがあります。配属先によって、関わる資格が変わります。
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
27インターンシップの探し方
分野によって、探す場所が変わります。
研究室のつながりが強い分野です
化学系・材料系では、研究室や専攻を通じて企業の案内が届くことがあります。指導教員が共同研究などで企業とつながっている場合もあります。まず身近なところに聞いてみてください。
工場見学は行けるなら行ってください
化学プラントは写真で見るのと実際に見るのとで印象がまったく違います。配管の規模、音、においの有無、運転室の様子——ここで働く自分を想像できるかどうかが、いちばん確かな判断材料になります。
参加できなくても不利になるとは限りません
インターンと選考の関係は会社によって違い、案内に記載がある場合はその記載が基準です。記載のないことを推測で補わないでください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。
28志望動機の材料を集める
材料が足りないまま書こうとするから、書けません。
同じ分野の2社を読み比べてください
1社だけ読んでも、その会社の特徴は分かりません。同じ分野の2社の中期経営計画を並べると、力の入れどころの違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
「素材で社会を支えたい」だけでは足りません
化学業界の志望動機で最も多い型です。ただ、それはこの業界のほぼ全社に当てはまります。
一段具体的にするには、どの製品が、どの産業の、どんな課題に効いているかまで降りてください。各社の製品ページには用途の説明が載っています。そこまで書ければ、会社名を入れ替えても成立する文章にはなりません。
書いたあとの確認
会社名を同じ分野の別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
29選考で確認すること
聞かれる側だけでなく、聞く側にもなってください。
| 確認したい項目 | どこで確認するか |
|---|---|
| 配属先の候補地(工場か研究所か) | 募集要項、説明会での質問 |
| 交代勤務の有無 | 募集要項の勤務時間欄 |
| 研究職と製造職の区分 | 募集要項の職種欄 |
| 職種別採用か一括採用か | 募集要項の職種欄 |
| 転勤の有無と範囲 | 募集要項 |
| 研修の内容と期間 | 採用ページ |
| 雇用元がどの法人か | 募集要項 |
確認事項は事前に書き出しておく
説明会や面接の場で思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項をメモしておくと、聞きそびれが減ります。
聞いても失礼にならない質問です
勤務地、勤務時間、転勤の有無は労働条件の基本です。募集要項に書かれるべき内容でもあります。遠慮せず確認してください。記載がない、または説明が曖昧なまま進む場合は、その点を書面で確認するようにしてください。
内定後に条件を確認する
内定の連絡を受けたら、労働条件が書面(または電子)で示されるかを確認してください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。
30選考の時期の考え方
会社ごとに違い、年度によっても変わります。
就活サイトに載っているスケジュールは一般的な目安であり、個別の会社に当てはまるとは限りません。
技術系は推薦という道がある場合があります
大学や専攻によっては、推薦での応募の仕組みがあります。化学系の専攻では利用されることがあり、対象の会社・手続き・期限は大学ごとに違います。
利用するかどうかで動き方が変わるので、早い段階で就職担当や指導教員に確認してください。
締切は一覧で管理してください
複数の分野・複数の会社に応募すると、締切がばらばらになります。会社名、応募した日、次の予定、締切の4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
31向き不向きの考え方
性格で決めるより、仕事の進み方で考えてください。
「化学が好き」の中身を分解してください
実験そのものが好きなのか、できた材料が誰かの役に立つことが好きなのかで、向く職種が変わります。
前者なら研究、後者なら開発や技術営業のほうが近いかもしれません。どちらが良いという話ではありません。
本記事では向き不向きの判断はしていません
上の表は仕事の性質を整理したものであり、適性の診断ではありません。実際に働いている人に一日の流れを聞き、自分で判断してください。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
32他の業界と迷ったとき
化学は、ほぼすべての産業の上流にあります。
業界名で絞ると同じ仕事を見逃します
「半導体に関わりたい」なら、半導体メーカーだけでなく化学メーカーの電子材料部門という道があります。逆もまた同じです。
半導体業界は半導体業界とは|全体像と分野の調べ方、自動車業界は自動車業界とは|全体像と分野の調べ方、電機・電子業界は電機・電子業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。同じ項目で比べてみてください。
比べる項目を先に決めてください
項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。
33やらない方がいいこと
化学業界でとくに起きやすい失敗です。
| やりがちなこと | なぜ問題か |
|---|---|
| 社名のイメージで事業を判断する | 繊維会社が繊維以外で稼いでいることがある |
| 「素材で社会を支えたい」で止める | ほぼ全社に当てはまり、会社を選んだ理由にならない |
| 勤務地を確認しない | 工場は臨海部・地方に立地することが多い |
| 交代勤務の有無を聞かない | 連続運転の職場では前提条件になる |
| 数年前の業界本だけで話す | 事業の売却・統合で構成が変わっていることがある |
| 研究職しか見ない | プロセス・生産技術・技術営業という道を落とす |
「有名だから良い会社」は化学では特に当てになりません
この業界は顧客が企業です。消費者に売らない会社は、良い会社でも名前が知られません。知名度は採用の規模とも、働きやすさとも、別の話です。
1社の説明会を業界全体の話だと思わない
説明会で語られるのはその会社の話です。業界の共通事項なのか、その会社固有の話なのかは、他の会社も見ないと分かりません。最低2社は比べてください。
34相談できる窓口
一人で抱えないでください。
化学系は専攻のつながりが強い
化学系・材料系の専攻には、企業から直接インターンや採用の案内が届くことがあります。過去にどの会社へ進んだかは、専攻の進路資料で分かります。まず身近なところに聞いてください。
条件面で疑問があるとき
提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。労働局の総合労働相談コーナーは無料で、全国にあります(予約なしで利用できる場合があります)。法令の解釈が必要な場合は弁護士にご相談ください。
35よくある質問
化学系の専攻でなくても入れますか?
入れます。化学工場は巨大な装置の集まりなので、設備・保全では機械系、制御・計装では電気系の技術者が必要です。材料探索にデータを使う取り組みでは情報系が関わります。文系では営業、調達、経理、人事、法務といった職種があります。応募できるかどうかは募集要項の応募資格欄で確認してください。
研究職に就きたいのですが、修士は必要ですか?
会社によります。研究職を修士以上の対象としている募集がある一方、学部卒を対象にする募集もあります。応募資格は募集要項に明記されているので、思い込みで諦めず該当する募集を探してください。なお、同じ「研究開発職」でも、新しい材料を探す仕事と顧客の用途に合わせる仕事では中身が違います。
勤務地はやはり工場が多いのでしょうか?
職種によります。製造・生産技術・設備は工場が主な職場で、化学の工場は臨海部のコンビナートや地方に立地することが多くなります。研究所は別の場所にあり、都市近郊に置かれる場合もあります。実際の所在地は有価証券報告書の「設備の状況」で確認でき、配属の可能性は募集要項の勤務地欄と説明会での質問で確かめられます。
交代勤務はありますか?
職場と職種によります。装置を連続で運転するプラントでは交代勤務が組まれることがあります。生活に直結する条件なので、募集要項の勤務時間・シフトの欄を確認し、記載がなければ説明会や面接で聞いてください。聞いて失礼になる質問ではありません。
危険物取扱者などの資格は取っておくべきですか?
入社前に必須とされることは基本的にありません。多くは入社後に、業務に応じて取得します。会社が受験費用を補助する制度を設けている場合もあります。学生のうちに取るなら、資格名を並べるより「なぜその資格に関心を持ったか」を説明できるようにしてください。
「素材で社会を支えたい」以外に何を書けばいいですか?
どの製品が、どの産業の、どんな課題に効いているかまで降りてください。各社の製品ページには用途の説明が載っています。そのうえで、その会社が中期経営計画で何に力を入れると言っているかに触れると、会社名を入れ替えても成立する文章にはなりません。
化学メーカーは1社で何をしているのか分かりません。
それが普通です。総合化学では1社が何十種類もの製品を持ち、石油化学と医薬のように性格の違う事業が同居しています。答えは有価証券報告書の「セグメント情報」にあります。事業ごとの売上と利益が分かれて載っているので、その会社が何で稼いでいるかが具体的に分かります。
研究テーマが志望する会社の製品と関係ありません。
一致している人のほうが少数です。会社が見ているのは、どう課題を立て、どう確かめ、詰まったときにどう進めたかという進め方であることが一般的です。使った手法、扱った現象、測定の工夫——このあたりが接点になります。
環境への取り組みに関心があります。どう調べればいいですか?
各社の統合報告書や中期経営計画に、二酸化炭素の削減、リサイクル、有害物質の代替といった取り組みが書かれています。会社によって方法も重点も違うので、「環境に貢献したい」で止めず、その会社が具体的にどんな方法に取り組んでいるかまで読んでください。
鉄鋼や紙も化学業界に入るのですか?
呼び方の問題です。就活の分類では「素材業界」としてまとめられることが多く、化学、鉄鋼、非鉄、ガラス、セメント、紙などが含まれます。共通するのは、企業に売る素材をつくっているという点です。ただし原料も製造の方法も違うので、分野ごとに別の業界と考えて調べたほうが正確です。
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。就活サイトのスケジュール記事は一般的な目安であり、個別の会社に当てはまらないことがあります。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。化学系の専攻では推薦での応募の仕組みがある場合もあるので、大学の就職担当にも早めに確認してください。
まず何から読めばいいですか?
関心のある分野を決めてから、その分野の会社を2〜3社選び、各社の製品ページで何をつくっているかを具体的に知り、そのあとで決算説明資料と有価証券報告書の「セグメント情報」を読むのが早道です。製品の用途が分かると、資料の内容が具体的に読めるようになります。
この記事に載っていない会社もありますか?
あります。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。ここに載っていない会社にも、化学・素材に関わる仕事は数多くあります。業界団体の会員企業一覧などから、自分で会社を洗い出してください。
36まとめ|分野を決めて、用途から考える
化学・素材業界は7つの分野に分かれています。①総合化学、②電子材料・機能性化学、③繊維・高機能材料、④塗料・インキ・接着剤、⑤産業ガス、⑥鉄鋼・非鉄金属、⑦ガラス・セラミックス・セメント・紙。
1社が何十種類もの製品を持ちます。だから社名では中身が分かりません。セグメント情報で、どの事業で稼いでいるかを確かめてください。
川上と川下では仕事が違います。大量に安定してつくるのか、顧客の用途に合わせて作り込むのか。求められる専攻も日々の仕事も変わります。
「誰に売っているか」を見てください。同じ樹脂でも、自動車向けと食品包装向けでは求められることが違います。用途で見ると会社の性格が分かります。
化学系だけの業界ではありません。設備は機械系、計装は電気系、データ活用は情報系。文系にも営業・調達・管理の職種があります。
勤務地と交代勤務は必ず確認してください。工場は臨海部や地方に立地することが多く、連続運転の職場では交代勤務があります。
保安と記録が前提の業界です。危険な物質を扱うため、手順を守り、記録を残す文化があります。実験ノートを丁寧に付けてきた経験は生きます。
最後に。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。網羅した一覧でもありません。売上・シェア・年収などの数値と企業の将来性、向き不向きは扱っていません。数値は各社の開示資料や業界団体・官庁の公表資料で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。
・半導体業界とは|全体像と分野の調べ方
・自動車業界とは|全体像と分野の調べ方
・電機・電子業界とは|全体像と分野の調べ方
・業界の調べ方|全体像をつかむ順番
・募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認する
・就活・キャリアの記事一覧
InstagramとTikTokでも発信中大学別の就職先、業界の年収、SPIの例題を、画像と動画でサクッと。