証券・資産運用業界とは|全体像と分野の調べ方
証券・資産運用業界は6つの分野に分かれています。①総合証券(野村ホールディングス・大和証券グループ本社・SMBC日興証券・みずほ証券)、②ネット証券(SBI証券・楽天証券・松井証券・マネックス証券)、③中堅・地場の証券会社、④外資系証券の日本法人、⑤資産運用会社(野村アセットマネジメント・アセットマネジメントOne)、⑥市場インフラ(日本取引所グループなど)。そして部門で仕…
銀行と証券の違いを説明できますか。
銀行は預かったお金を貸します。証券会社はお金を出す人と、お金を必要とする企業を直接つなぎます。
この違いが、仕事の中身をすべて決めています。ここを説明できないまま面接に行くと、最初の質問で止まります。
この記事では、証券・資産運用業界を6つの分野に分けたうえで、部門ごとの仕事、資格、働き方、選考での確認事項まで通しで整理します。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 どんな会社があるか|6つの分野と直接金融の仕組み
- 業界の地図|6つの分野
- 直接金融と間接金融|最初に押さえる違い
- 証券会社はどこで収益を得ているか
- 個人向け(リテール)の仕事
- 投資銀行部門の仕事
- マーケット部門とリサーチ
- ⑤資産運用会社の仕事
- ⑥市場インフラという選択肢
- ④外資系証券という選択肢
- 規制と情報管理|この業界の前提
- どの大学から何人入っているか
第2部 どんな仕事があるか|部門・資格・働き方
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
第1部 どんな会社があるか|6つの分野と直接金融の仕組み
01業界の地図|6つの分野
まずこの表を頭に入れてください。
| 分野 | 何をする会社か | 例 |
|---|---|---|
| ①総合証券 | 個人向けから法人向けまで幅広く手がける | 野村ホールディングス、大和証券グループ本社、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券 |
| ②ネット証券 | オンラインでの取引を中心に、個人向けのサービスを提供する | SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券、auカブコム証券 |
| ③中堅・地場の証券会社 | 地域や特定の顧客層に強みを持つ | 各地の証券会社 |
| ④外資系証券の日本法人 | 主に法人向けの業務を手がける | 各社 |
| ⑤資産運用会社 | 投資信託などを設定し、資産を運用する | 野村アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、三菱UFJアセットマネジメント、日興アセットマネジメント |
| ⑥市場インフラ | 取引所、決済・保管の仕組みを運営する | 日本取引所グループ、証券保管振替機構 |
「証券会社」と「運用会社」は別の仕事です
証券会社は売買の仲立ちや資金調達の支援をします。運用会社は集めた資金を実際に運用します。
混同されがちですが、求められることも日々の仕事も違います。同じグループの中に両方あることもあります。
銀行グループの証券会社があります
メガバンクのグループには証券会社があります。銀行と証券が連携する形です。採用がグループ一括か会社別かは、募集要項で確認してください。
取引所も就職先です
市場そのものを運営する取引所も採用を行っています。上場の審査、市場の制度、システムの運営——市場をつくる側の仕事です。
02直接金融と間接金融|最初に押さえる違い
この違いが説明できれば、業界の半分は理解できています。
間接金融と直接金融。この違いが仕事の中身を決めている。
| 間接金融(銀行) | 直接金融(証券) | |
|---|---|---|
| お金の流れ | 預金者→銀行→企業 | 投資家→(市場)→企業 |
| リスクを負う人 | 主に銀行 | 主に投資家 |
| 企業の資金の形 | 借入(返す義務がある) | 株式・債券などで調達する |
| 証券会社の立場 | — | 仲立ちし、手続きを担う |
証券会社は「つなぐ」立場です
証券会社は自分でお金を貸すのが主な仕事ではありません。資金を出したい人と、必要とする企業の間に入り、取引が成立するようにします。
だから収益は手数料や引受に関わる収益が中心になります。
リスクを負うのは投資家です
直接金融では、投資の結果は投資家が引き受けます。だからこそ、正確な情報が届くことが制度上とても重視されます。
説明義務や情報開示の決まりが多いのは、この仕組みのためです。
就活での使い方
「なぜ銀行ではなく証券か」はほぼ必ず聞かれる質問です。この違いを踏まえて、自分の言葉で答えられるようにしてください。
銀行業界の全体像は銀行業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。併せて読むと、違いがはっきりします。
03証券会社はどこで収益を得ているか
収益の出どころを知ると、部門の役割が分かります。
| 収益の種類 | 中身 | 主に担う部門 |
|---|---|---|
| 委託手数料 | 顧客の売買を仲立ちして受け取る手数料 | 個人向け・法人向けの営業 |
| 引受・募集の収益 | 企業が株式や債券を発行する際の業務に関わる収益 | 投資銀行部門 |
| アドバイザリーの収益 | 企業の再編などの助言に関わる収益 | 投資銀行部門 |
| トレーディングの損益 | 自己の勘定での売買に関わる損益 | マーケット部門 |
| 運用に関わる報酬 | 資産の運用や管理に関わる報酬 | 資産運用会社 |
相場の影響を受けます
売買が活発なときと、そうでないとき——収益は市場の状況に左右されます。各社の決算説明資料に、この点の説明があります。
ただし将来の相場は誰にも断言できません。その会社が変動にどう備えているかを中期経営計画で読んでください。
「安定した収益」を重視する動きがあります
各社が資産の残高に応じた収益を重視する方針を掲げることがあります。売買の回数ではなく、預かる資産の規模に基づく考え方です。
この方針は営業の仕事の進め方に直結します。志望する会社の方針を確認してください。
ネット証券は仕組みが違います
ネット証券は店舗と対面の営業を持たないぶん、サービスの設計とシステムが事業の中心になります。収益の構造も対面の会社とは異なります。
04個人向け(リテール)の仕事
個人のお客様の資産に関する相談に応じる仕事です。
説明の正確さが法令で求められます
金融商品の販売には説明に関する決まりがあります。何を、どのように伝えるかが定められています。
だからこの仕事は「売る」よりも「正確に伝える」ことが土台になります。制度の知識が欠かせません。
お客様の資産に関わります
相場が下がる局面では、お客様に説明する場面があります。良いときだけの仕事ではありません。
この点を理解しているかどうかは、面接での受け答えに表れます。
評価の仕組みを確認してください
営業の評価の考え方は会社によって違い、見直しが行われることもあります。評価の考え方は説明会で聞いてよい質問です。
なお本記事は個別の金融商品を勧めるものではありません。
05投資銀行部門の仕事
企業の資金調達と、事業の再編に関わる部門です。
企業の重要な意思決定に関わります
上場や再編は企業にとって大きな決断です。長い期間をかけて準備し、多くの関係者と進めます。
その過程では資料の作成、数値の分析、制度の確認が積み重なります。華やかに語られがちですが、地道な作業が中心です。
情報の取り扱いが厳格です
公表前の企業の情報を扱うため、情報管理の決まりが厳格です。部門の間で情報を遮断する仕組みが設けられています。
この前提を理解していることは、面接でも評価につながります。
募集の枠は限られることがあります
部門別に採用する会社では、投資銀行部門の枠が限られることがあります。募集要項で区分と人数の考え方を確認してください。
英語を使う場面があります
海外の企業や投資家が関わる案件では英語の資料やコミュニケーションが発生します。必要度は会社と案件によります。
06マーケット部門とリサーチ
市場そのものを相手にする部門です。
リサーチは「調べて書く」仕事です
アナリストは担当する業界や企業を調べ、分析をまとめます。決算資料を読み、取材し、数値を組み立てます。
研究で資料を読み込み、根拠を示して論を組み立てた経験が生きる職種です。
時間の流れが速い部門です
市場は毎日動きます。朝が早く、情報の更新が速い——この環境が合うかどうかは人によります。
数理の知識が生きる領域があります
商品の設計やリスクの評価では数学・統計の知識が使われます。理系の学生が専門を生かせる分野です。
募集の形を確認してください
部門別に募集する会社と、配属で決まる会社があります。募集要項の区分を確認してください。
07⑤資産運用会社の仕事
集めた資金を、実際に運用する会社です。
顧客には年金や機関投資家がいます
個人だけでなく、年金基金や金融機関の資金も運用します。長期の視点で資産を預かる仕事です。
「責任ある投資」の考え方
運用会社は投資先の企業と対話する役割も担っています。企業の経営について意見を伝える活動が行われています。
各社がどんな方針を公表しているかは、会社サイトで確認できます。
採用の人数は限られることがあります
運用会社は証券会社より組織が小さいことが多く、新卒の採用人数も限られる場合があります。募集要項で確認してください。
証券会社との違い
証券会社はつなぐ立場、運用会社は預かって運用する立場です。「投資に関心がある」なら、どちらの立場で関わりたいかを考えてください。
なお本記事は投資を勧めるものではありません。
08⑥市場インフラという選択肢
市場そのものを運営する組織があります。
「公共性」の強い仕事です
取引所は市場の公正さを保つ役割を担います。上場を審査し、ルールを定め、不正な取引を監視します。
営利と公共性の両方を意識する組織です。
システムが事業の中核です
売買の仕組みは巨大なシステムです。止まると市場が動きません。そのためシステムに関わる職種があります。
情報系の学生にとって入口になる分野です。
制度をつくる側です
市場の区分やルールの見直しは取引所と関係機関が進めます。制度の側から市場に関わりたいなら、この分野が近いかもしれません。
採用の規模は大きくありません
組織の規模から、採用の人数は限られることがあります。募集の情報は各組織のサイトで確認してください。
09④外資系証券という選択肢
国内企業とは前提が違う部分があります。
| 国内の総合証券 | 外資系の日本法人 | |
|---|---|---|
| 主な業務 | 個人向けから法人向けまで幅広い | 法人向け・機関投資家向けが中心のことが多い |
| 採用の形 | 総合職または部門別 | 部門別であることが多い |
| 選考の時期 | 国内の一般的な時期に沿うことが多い | 早い時期に行われることがある |
| 語学 | 部門による | 英語を使う場面が多い |
選考の時期に注意してください
外資系の金融機関では、国内企業より早い時期に選考が行われることがあります。関心があるなら、早い段階で各社のサイトを確認してください。
部門別の採用が基本です
投資銀行部門、マーケット部門、リサーチ——部門を決めて応募する形が一般的です。部門ごとに求められることが違います。
国内企業と併願できます
時期が違うため、両方を受けることは可能です。ただし準備の内容が異なるため、早めに情報を集めてください。
情報は各社のサイトで
外資系は就活サイトに掲載していないことがあります。各社の採用ページを直接見る必要があります。大学のキャリアセンターに情報が届いている場合もあります。
10規制と情報管理|この業界の前提
証券業界は、制度の上で動いています。
社員自身の取引にも決まりがあります
証券会社などでは、社員個人の有価証券の取引に届出や制限が設けられていることがあります。入社前に知っておくとよい点です。
具体的な内容は会社によって違うので、説明会で確認して構いません。
「壁」という考え方
公表前の情報を扱う部門と、市場で取引する部門の間には情報を遮断する仕組みが設けられます。これは制度上の要請です。
この仕組みがあることを知っていると、部門の役割の理解が深まります。
制度は改正されます
金融に関する制度は見直されることがあります。数年前の説明が現状と合っていないことがあるため、金融庁や日本証券業協会の情報で確認してください。
うろ覚えで語らないでください
面接で制度の話をするなら、出どころを言える範囲にとどめてください。正確でない説明は印象を悪くします。
11どの大学から何人入っているか
これは公表されている場合があります。
この数字の使い方
「この大学からは入れる/入れない」という判断には使わないでください。年度によって変わりますし、人数は採用の規模にも左右されます。
使い道はOB・OGがいるかを確かめる材料です。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
部門まで聞いてください
証券会社は部門で仕事がまったく違います。先輩に話を聞くなら、どの部門にいるかを確かめたうえで聞いてください。
同じ会社でも、個人向けの営業と投資銀行部門では、一日の過ごし方が別物です。
運用会社や取引所の実績も見てください
進路資料に出てくる資産運用会社や市場インフラの組織も、この業界の選択肢です。証券会社だけを見ないでください。
第2部 どんな仕事があるか|部門・資格・働き方
12部門の違いを一枚で押さえる
同じ会社でも、部門が違えば別の仕事です。
| 部門 | 相手 | 主な仕事 |
|---|---|---|
| 個人向け(リテール) | 個人のお客様 | 資産に関する相談、説明、手続き |
| 法人向け | 事業会社 | 資金調達の提案、各種のサービス |
| 投資銀行部門 | 事業会社 | 上場や発行の支援、再編の助言 |
| マーケット部門 | 機関投資家 | 売買の執行、商品の設計、情報の提供 |
| リサーチ | 社内・投資家 | 企業・経済の調査と分析 |
| 資産運用 | 投資家・年金など | 資産の運用、商品の企画 |
| 管理・リスク・コンプライアンス | 社内 | リスクの管理、法令の遵守、決済や事務 |
| システム | 社内・顧客 | 売買やサービスの仕組みを設計・運用する |
「証券会社に入りたい」では中身が決まりません
部門によって、相手も、時間の流れも、求められることも違います。まずどの部門に関心があるかを決めてください。
配属の決まり方を確認してください
部門別に募集する会社なら入社時点で決まります。総合職としてまとめて募集する会社では、配属で決まります。
どちらの形かは募集要項で分かります。配属の希望がどの程度考慮されるかは、説明会で聞いてよい質問です。
支える部門も重要です
決済、リスク管理、コンプライアンス、システム——表に出ない部門がなければ取引は成立しません。
これらの部門も専門性の高い仕事です。選択肢から外さないでください。
13資格|証券外務員は入社後に
この業界で最初に出てくる資格です。
| 資格 | どんな場面で関わるか |
|---|---|
| 証券外務員 | 有価証券に関する業務を行う際に必要とされる |
| 証券アナリスト | 企業や証券の分析に関わる知識 |
| ファイナンシャル・プランニング関連 | 個人のお客様の相談に関わる知識 |
| 簿記 | 決算書を読むための基礎 |
| 数理・統計に関する資格 | リスク管理や商品設計に関わる領域で生きる |
入社後に取得するのが一般的です
証券外務員は入社後に取得するのが一般的です。研修と受験の支援が用意されていることがあります。
制度の有無は採用ページの研修・福利厚生の欄で確認できます。
学生のうちに勉強するなら
簿記や会計の知識は企業の決算書を読む基礎になります。リサーチや投資銀行部門に関心があるなら、役に立ちます。
資格名を並べるより、なぜその勉強をしたのかを説明できるかが大切です。
学び続ける業界です
制度も商品も市場も変わります。入社後も勉強が続くことを前提にしてください。
この点は面接で聞かれたときの答えにも使えます。
14ミドル・バックオフィスという仕事
取引を成立させ、記録し、守る部門です。
ここが止まると取引が成立しません
売買が約定しても、受け渡しと記録が正確に行われなければ取引は完了しません。この部分を担うのがバックオフィスです。
表に出ませんが、市場が動くための土台です。
リスク管理は数理の仕事でもあります
どれだけの損失が起こり得るかを数値で評価する業務があります。数学・統計の知識が直接使われます。
専門職として採用されることがあります
会社によってはコンプライアンスやリスク管理、システムの専門コースを設けています。募集要項で区分を確認してください。
キャリアの選択肢として
営業や運用だけがこの業界の仕事ではありません。支える側の専門性も評価される領域です。選択肢から外さないでください。
15勤務地と働き方
部門と会社で、働く場所が大きく変わります。
| 部門 | 勤務地の性格 |
|---|---|
| 個人向け営業 | 全国の支店。転勤があることが多い |
| 投資銀行・マーケット・リサーチ | 本社など主要拠点 |
| 資産運用 | 本社。拠点は限られる |
| ネット証券 | 本社・開発拠点 |
| 海外 | 会社によって拠点がある |
支店配属からのスタートが多い会社があります
総合証券では、まず支店の個人向け営業を経験するという進め方の会社があります。採用ページのキャリアパスに記載があることがあります。
希望する部門が別にある場合でも、最初は支店という可能性を前提にするかどうかを考えてください。
市場に合わせた時間の流れ
マーケットに関わる部門では、市場が開く時間に合わせた働き方になります。朝が早いことがあります。
住まいの制度を確認してください
転勤がある場合、社宅や家賃補助の制度は生活費に直結します。福利厚生のページと募集要項で確認してください。
外資系は前提が違うことがあります
外資系の会社では、採用の時期、部門の区分、評価の仕組みが国内企業と異なることがあります。募集要項をよく読んでください。
16専攻と職種の関係
文系・理系の両方に入口があります。
リサーチでは専門が生きます
アナリストは担当する業界を持ちます。理系の専攻を持つ人が、技術に関わる業界を担当することがあります。
専門の知識が企業を理解する力になる領域です。
数理の専攻は専門職の入口があります
商品の設計やリスクの評価では数学・統計の知識が直接使われます。専門のコースを設けている会社があります。
研究や学びの整理の仕方
会社が見ているのはどう課題を立て、どう根拠を集めたかという進め方であることが一般的です。整理の仕方は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で扱っています。
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
17年収を自分で調べる方法
就活サイトの年収ランキングではなく、会社が出している数字を見てください。
| 知りたいこと | どこに載っているか |
|---|---|
| 全従業員の平均年収 | 有価証券報告書【企業の概況】「従業員の状況」の平均年間給与 |
| 初任給 | 各社の募集要項・採用ページ |
| 賞与の回数・時期 | 募集要項 |
| 諸手当 | 募集要項の手当欄 |
| 昇給の時期 | 募集要項 |
平均年間給与の注意点
これは全従業員の平均です。新卒の初任給ではありません。また年齢構成や職種構成で変わります。平均年齢が高い会社は高く出やすく、若い会社は低く出やすい——それだけのことです。
同じ欄に平均年齢と平均勤続年数も載っています。3つをセットで見ると、数字の意味が分かります。
評価と報酬の仕組みを確認してください
この業界では、成果に応じた報酬の仕組みを設けている会社があります。基本給との割合や条件は会社によって違います。
募集要項の給与欄に記載があることがあります。記載がなければ説明会で確認してください。
持株会社の数字に注意してください
持株会社(ホールディングス)の有価証券報告書に載る平均年間給与は、持株会社に所属する社員だけの数字であることがあります。実際に働く事業会社とは別です。誰の数字を見ているのかを、従業員数と合わせて確認してください。
手取りは額面と違います
提示される金額は額面です。ここから税と社会保険料が引かれます。額面だけで生活設計をすると、想定より少なくて驚くことになります。募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。
18有価証券報告書の使い方
この業界を調べるときの、いちばん確実な資料です。
上場企業が年に1回、法律に基づいて出す書類です。金融庁のEDINETで誰でも無料で読めます。各社のサイトのIR(投資家向け情報)にも置かれています。
証券・資産運用業界では、ここを重点的に見てください
①セグメント情報——個人向け、法人向け、市場、資産運用、海外——どの部門で稼いでいるかが分かります。証券会社は部門で仕事がまったく違うため、ここが重要です。
②事業等のリスク——相場の変動、規制、システム——会社自身が何をリスクと考えているかが書かれています。
③収益の内訳——手数料、引受、運用——どの収益が中心かが分かります。会社の性格がここに出ます。
全部読む必要はありません
最初から通読しようとすると挫折します。上の数か所だけを、志望する2〜3社で読み比べる——これで十分に差が見えます。章の名前や構成は年度・会社によって異なることがあるので、目次から探してください。
19決算説明資料・中期経営計画
有価証券報告書より読みやすく、会社の考えが出ます。
| 資料 | 何が書いてあるか | どこにあるか |
|---|---|---|
| 決算説明資料 | 直近の業績と、その理由の説明 | 会社サイトのIR |
| 中期経営計画 | 数年先に何をやろうとしているか | 会社サイトのIR |
| 統合報告書 | 事業の考え方、人材、環境への取り組み | 会社サイトのIR |
| 質疑応答の要旨 | 投資家が何を気にしているか | IRに掲載される場合がある |
中期経営計画が志望動機の材料になります
ここには「これから何に力を入れるか」が書かれています。同じ分野の2社の計画を読み比べると、重点の置き方の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。会社が自分で書いていることなので、外れません。
図が多いので入りやすい
決算説明資料はスライド形式で、図表が中心です。専門用語の解説が付いていることもあり、業界用語を覚える教材としても使えます。まず決算説明資料を読み、興味が出たら有価証券報告書で裏を取る——この順番が効率的です。
非上場の会社の場合
非上場だと有価証券報告書がありません。その場合は会社サイトの会社概要、採用ページ、プレスリリースが主な情報源になります。情報が少ない会社では、説明会や面接で直接聞くのが確実です。聞いて失礼になる内容ではありません。
20業界団体と官庁の資料
業界全体の話を確かめたいときに使います。
使い方は「裏取り」です
就活で統計を暗記する必要はありません。使うのはニュースや説明会で聞いた話が本当かを確かめるときです。面接で業界の話をするときも、出どころを言える情報のほうが強くなります。「ニュースで見た」より「協会の資料で見た」のほうが確かです。
市場の数字は誰でも見られます
株価、売買の状況、上場している会社の一覧——取引所のサイトで公開されています。就活で使うなら、この一次情報を見てください。
ただし相場の先行きを予想して語るのは避けてください。誰にも断言できません。
ニュースの読み方
記事の出どころ(誰が発表したか)をたどる癖をつけてください。発表元の資料に当たれば、記事で省かれた条件や前提が分かります。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。
21業界用語|最低限これだけ
説明会で前提として使われる言葉です。
意味を言えるようにしておけば十分です
深く理解している必要はありません。説明会で言葉が出たときに話についていける——その程度で構いません。制度に関する言葉は、公的機関や業界団体の説明で確認してください。
22市場の一次情報を使う
この業界は、公開されている情報がとても多い分野です。
企業の開示資料を読む練習をしてください
証券の仕事は企業の資料を読むことから始まります。志望する部門がどこであれ、この習慣は役に立ちます。
1社の決算資料を読み通すだけでも、面接での話の具体性が変わります。
相場の予想は語らないでください
市場の先行きについて断定的に話すのは避けてください。誰にも分かりません。
代わりに、その会社が変動にどう備えているかを資料で調べて話すほうが具体的です。
2社を比べてください
同じ規模の証券会社でも、個人向けと法人向けのどちらに重心があるかが違います。決算説明資料の部門別の収益を並べると分かります。
その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
23インターンシップの探し方
分野によって、探す場所が変わります。
部門ごとに募集が分かれることがあります
証券会社では部門別のインターンが行われることがあります。リテール、投資銀行、マーケット、リサーチ——内容がまったく違います。
先に自分がどの部門に関心があるかを決めてから応募してください。12章で部門の違いを一枚に整理しています。
外資系は時期が早いことがあります
外資系の金融機関では、選考の時期が国内企業と異なることがあります。関心があるなら、早い段階で各社のサイトを確認してください。
参加できなくても不利になるとは限りません
インターンと選考の関係は会社によって違い、案内に記載がある場合はその記載が基準です。記載のないことを推測で補わないでください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。
24志望動機の材料を集める
材料が足りないまま書こうとするから、書けません。
同じ分野の2社を読み比べてください
1社だけ読んでも、その会社の特徴は分かりません。同じ分野の2社の中期経営計画を並べると、力の入れどころの違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
「経済を動かす仕事がしたい」だけでは足りません
証券業界の志望動機でよくある型です。ただ、それはこの業界のほぼ全社に当てはまります。
一段具体的にするには、どの部門で、誰の、どんな課題を解きたいかまで降りてください。個人の資産の相談なのか、企業の資金調達なのか、運用そのものなのか——部門で仕事は別物です。
書いたあとの確認
会社名を同じ分野の別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
25選考で確認すること
聞かれる側だけでなく、聞く側にもなってください。
確認事項は事前に書き出しておく
説明会や面接の場で思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項をメモしておくと、聞きそびれが減ります。
聞いても失礼にならない質問です
勤務地、勤務時間、転勤の有無は労働条件の基本です。募集要項に書かれるべき内容でもあります。遠慮せず確認してください。記載がない、または説明が曖昧なまま進む場合は、その点を書面で確認するようにしてください。
内定後に条件を確認する
内定の連絡を受けたら、労働条件が書面(または電子)で示されるかを確認してください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。
26選考の時期の考え方
会社ごとに違い、年度によっても変わります。
就活サイトに載っているスケジュールは一般的な目安であり、個別の会社に当てはまるとは限りません。
部門別・コース別の募集があります
総合職としてまとめて募集する会社と、部門別に募集する会社があります。部門別の場合、部門ごとに選考の進み方も時期も違うことがあります。
併願が可能かどうかも含め、募集要項で確認してください。
締切は一覧で管理してください
複数の分野・複数の会社に応募すると、締切がばらばらになります。会社名、応募した日、次の予定、締切の4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
27向き不向きの考え方
性格で決めるより、仕事の進み方で考えてください。
「お金が好き」では続きません
この仕事は他人の資産や企業の将来に関わります。だから求められるのは、正確さと誠実さです。
面接でも、制度の前提を理解しているかが見られます。
本記事では向き不向きの判断はしていません
上の表は仕事の性質を整理したものであり、適性の診断ではありません。実際に働いている人に一日の流れを聞き、自分で判断してください。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
28他の業界と迷ったとき
金融の中でも、機能ごとに選択肢があります。
「どの立場で関わるか」で選んでください
つなぐ側(証券)、運用する側(運用会社)、調達する側(事業会社の財務)、場をつくる側(取引所)——立場が違えば仕事も違います。
銀行業界は銀行業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。併せて読むと、直接金融と間接金融の違いがはっきりします。
比べる項目を先に決めてください
項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。
29やらない方がいいこと
証券業界の選考でとくに起きやすい失敗です。
投資経験は「材料の一つ」にとどめてください
自分で投資をしたことがある人もいるでしょう。それ自体は悪いことではありませんが、業務は他人の資産に関わる仕事です。
語るなら、そこから何を学んだかに絞ってください。成果を語る場ではありません。
1社の説明会を業界全体の話だと思わない
説明会で語られるのはその会社の、その部門の話です。部門が違えば前提が違います。最低2社は比べてください。
30相談できる窓口
一人で抱えないでください。
ゼミや研究会のつながりも使えます
経済・金融を扱うゼミでは、卒業生が金融機関に進んでいることがあります。担当の教員に聞いてみてください。
条件面で疑問があるとき
提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。労働局の総合労働相談コーナーは無料で、全国にあります(予約なしで利用できる場合があります)。法令の解釈が必要な場合は弁護士にご相談ください。
31よくある質問
銀行と証券はどう違いますか?
銀行は預金を集めて企業に貸す「間接金融」を担います。証券会社は、資金を出したい人と必要とする企業を市場で直接つなぐ「直接金融」を担います。リスクを主に誰が負うかが違い、証券では投資家が結果を引き受けます。この違いは面接でほぼ必ず聞かれるので、自分の言葉で説明できるようにしてください。
投資の経験がないと不利ですか?
経験の有無が応募の条件になることは一般的ではありません。業務で扱うのは他人の資産であり、個人の投資経験とは別の知識と姿勢が求められます。経験があるなら、そこから何を学んだかに絞って話すほうが評価につながります。
文系でも大丈夫ですか?
文系出身者が多く働いています。ただし企業の決算書を読み、数値で判断する仕事です。数字を扱わない業界ではありません。一方で、数理やITの知識が生きる部門もあり、理系の専攻を持つ人の入口もあります。
部門はどうやって決まりますか?
会社によります。部門別に募集する会社では入社時点で決まり、総合職としてまとめて募集する会社では配属で決まります。総合証券では、まず支店の個人向け営業を経験するという進め方の会社もあります。募集要項の区分と、採用ページのキャリアパスを確認してください。
投資銀行部門に行きたいです。
部門別に採用する会社では枠が限られることがあります。募集要項で区分を確認してください。なお、華やかに語られがちですが、実際は資料の作成、数値の分析、制度の確認といった地道な作業が積み重なる仕事です。情報の取り扱いも厳格です。
証券会社と資産運用会社はどう違いますか?
証券会社は売買の仲立ちや資金調達の支援を行う「つなぐ」立場です。資産運用会社は、集めた資金を実際に運用する立場です。運用会社は組織が小さいことが多く、新卒の採用人数も限られる場合があります。同じグループの中に両方があることもあります。
証券外務員の資格は入社前に取るべきですか?
入社後に取得するのが一般的です。研修と受験の支援が用意されていることがあります。学生のうちに勉強するなら、簿記や会計の知識のほうが企業の決算書を読む基礎として役に立ちます。
ノルマは厳しいですか?
評価の仕組みは会社によって違い、見直しが行われることもあります。近年は売買の回数ではなく、預かる資産の残高に応じた収益を重視する方針を掲げる会社もあります。評価の考え方は説明会で聞いてよい質問です。本記事では個別の会社について判断していません。
自分で株を買ってもいいのですか?
証券会社などでは、社員個人の有価証券の取引について届出や制限が設けられていることがあります。内容は会社によって違うため、説明会で確認して構いません。入社前に知っておくとよい点です。
相場が悪いときは仕事が減りますか?
市場の状況が収益に影響することは各社の資料で説明されています。ただし将来の相場は誰にも断言できません。志望する会社が変動にどう備えているかは、中期経営計画や決算説明資料で確認してください。本記事では見通しを判断していません。
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。部門別に募集される場合、部門ごとに時期が違うこともあります。外資系の金融機関では、選考の時期が国内企業と異なることがあります。実際の日程は各社の採用ページで確認してください。
まず何から読めばいいですか?
志望する会社の決算説明資料で部門別の収益を確認し、次に有価証券報告書の「事業等のリスク」を読むのが早道です。加えて、上場企業を1社選んで決算資料を読み通してみてください。企業の資料を読む習慣は、どの部門でも役に立ちます。
この記事に載っていない会社もありますか?
あります。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。地域の証券会社、専門分野に強い運用会社、市場インフラを担う組織など、さまざまな選択肢があります。
32まとめ|まず部門を決める
証券・資産運用業界は6つの分野に分かれています。①総合証券、②ネット証券、③中堅・地場の証券会社、④外資系の日本法人、⑤資産運用会社、⑥市場インフラ。
銀行との違いは「直接つなぐ」ことです。証券は資金の出し手と企業を市場でつなぎ、リスクは主に投資家が負います。この違いはほぼ必ず聞かれます。
部門で仕事が別物です。個人向け、投資銀行、マーケット、リサーチ、運用——相手も時間の流れも違います。
収益の出どころを知ってください。手数料、引受、運用に関わる報酬。どこに重心があるかで会社の性格が分かります。
- 制度の上に成り立つ業界です。説明義務、情報管理、社員自身の取引——決まりを守ることが前提です。
- 相場の予想は語らないでください。代わりに、会社が変動にどう備えているかを資料で調べてください。
- 企業の開示資料を読む習慣をつけてください。どの部門を志望するにしても、この習慣が土台になります。
最後に。本記事は就職活動のための業界の案内であり、投資や金融商品を勧めるものではありません。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。制度に関することは金融庁・日本証券業協会などの情報で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。
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