商社業界とは|全体像と分野の調べ方
商社の仕事は2つの機能でできています。①トレード(売買を仲立ちし、物流・金融・与信の機能を提供する)と、②事業投資(会社に出資し、経営に関わる)。そして会社は①総合商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅・豊田通商・双日)と②専門商社(分野を絞って深く扱う会社)に分かれます。いちばん大事なのは「どの分野か」です。同じ商社でも、資源と食料では仕事がまったく違います。
商社は「モノを右から左に流す会社」ではありません。
その説明は、いまの商社の姿とかなりずれています。実際には事業に出資し、経営に関わることが収益の柱になっています。
ここを知らないまま面接に行くと、「商社は何をする会社ですか」の時点で止まります。
この記事では、商社業界を総合商社と専門商社に分けたうえで、2つの機能、分野の分かれ方、職種、海外、選考での確認事項まで通しで整理します。
この記事を7枚で
1 / 7第1部 商社とは何をする会社か|2つの機能と分野
- 商社の2つの機能
- トレードという機能の中身
- 事業投資という機能の中身
- 総合商社と専門商社
- 分野で見る|同じ会社でも仕事は別物
- 海外という前提
- リスクを扱うという仕事
- デジタル・環境などの新しい領域
- 関係会社の一覧で事業を見る
- どの大学から何人入っているか
第2部 どんな仕事があるか|職種・海外・働き方
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
第1部 商社とは何をする会社か|2つの機能と分野
01商社の2つの機能
ここが理解できれば、商社は分かります。
商社の2つの機能。トレードと事業投資。
| ①トレード | ②事業投資 | |
|---|---|---|
| やること | 売り手と買い手をつなぎ、取引を成立させる | 会社に出資し、経営に関わる |
| 提供する機能 | 物流、代金の立替、与信、情報 | 資金、人材、取引先との関係 |
| 収益 | 手数料や売買の差 | 投資先の利益、配当、売却 |
| 時間軸 | 取引ごと | 年単位。長く関わる |
なぜ商社を通すのか
売り手と買い手が直接取引すればよさそうですが、間に商社が入ることで解決される問題があります。
相手が代金を払えるか分からない——商社が与信を見て、立て替える。遠い国から運ぶ手段がない——商社が物流を組む。どこに売り先があるか分からない——商社が情報を持っている。
これが商社の存在理由です。ただ仲介しているのではなく、機能を提供しています。
いまは事業投資の比重が大きい
各社の資料を見ると、投資先の事業から生じる利益が収益の大きな部分を占めることが分かります。
だから商社の仕事は「売る」よりも「事業を育てる」方向に広がっています。投資先に人を送り、経営に携わることもあります。
就活での意味
「商社は何をする会社か」と聞かれたら、この2つの機能で答えてください。「いろいろなものを扱う会社」では説明になりません。
02トレードという機能の中身
売買を成立させるために、商社は複数の機能を提供します。
リスクを引き受ける仕事です
代金を立て替えるということは、払われなかったときの損失を負うということです。だから与信の判断が重要になります。
「商社は楽をして手数料を得ている」わけではありません。リスクを引き受けるから対価があるという構造です。
相場の変動に備えます
資源や穀物のように価格が変動するものでは、契約から受け渡しまでの間に価格が動きます。この変動への備え方も仕事の一部です。
物流と通関の知識が要ります
国をまたぐ取引では、輸送の手配、保険、通関の手続きが伴います。専門の部署や関連会社が担うこともあります。
運輸・物流の業界とつながる領域です。
03事業投資という機能の中身
お金を出して終わりではありません。
若手が投資先に出るという道があります
商社では投資先の会社に出向することがあります。そこで経営や事業の現場に関わります。
「商社に入ったのに、別の会社で働く」——これは珍しくありません。事業投資が中心である以上、当然の形です。
売ることもあります
投資した事業を売却することも判断のうちです。価値が高まった段階で手放し、次の分野に振り向けるという考え方があります。
各社がどんな方針かは、中期経営計画に書かれています。
調べる力が問われます
投資の判断には財務、法務、市場、技術——多面的な検討が要ります。社内の専門部署と連携して進めます。
「人と話すのが得意」だけでは足りません。調べて、数字で判断する力が必要です。
04総合商社と専門商社
扱う範囲の広さが違います。
| 総合商社 | 専門商社 | |
|---|---|---|
| 扱う分野 | 資源から食品まで幅広い | 特定の分野に絞る |
| 事業投資 | 規模が大きく、比重も高い | 会社によって程度が異なる |
| 配属 | どの分野になるか入社時に読めないことがある | 扱う分野が最初から決まっている |
| 専門性 | 異動で複数の分野を経験することがある | 特定の分野に長く関わる |
総合商社の顔ぶれ
三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日——これらが総合商社と呼ばれます。
いずれも複数の分野を持ちますが、強い分野は会社ごとに違います。セグメント情報を見れば具体的に分かります。
専門商社の分野
どちらが良いという話ではありません
幅広く関わりたいなら総合商社、特定の分野を深く知りたいなら専門商社——関心の形で選んでください。
専門商社は知名度が低いことがありますが、その分野では重要な役割を担っている会社があります。
05分野で見る|同じ会社でも仕事は別物
商社は「どの分野か」で仕事が決まります。
分野で時間の流れが違います
資源の事業は年単位、十年単位で動きます。食料や生活産業は日々の取引が積み重なります。
同じ会社に入っても、配属される分野で仕事の進み方がまったく違うということです。
市況の影響も分野で違います
資源の分野は相場の変動を強く受けます。生活に近い分野は、消費の動きに影響されます。
各社が「資源」と「非資源」を分けて説明することがあるのは、この性質の違いによるものです。
志望動機は分野から書いてください
「商社に入りたい」ではなく、「この分野に関わりたい。その会社はこの分野でこういう事業を持っている」——ここまで書けると具体性が出ます。
関係会社の一覧を見れば、どんな事業を持っているかが分かります。
06海外という前提
商社は、海外との関わりが事業の中心にあります。
行き先は選べないことがあります
駐在の場所は事業がある場所です。資源の分野なら鉱山のある国、食料なら産地——都市部とは限りません。
「海外で働きたい」という動機なら、どんな場所の可能性があるかまで考えておいてください。
語学はどの程度必要か
職種と分野によります。海外の取引先と直接やりとりする部門では日常的に使います。
採用ページに語学の目安が書かれている場合は、それが実態に近いと考えてよいでしょう。記載がなければ説明会で聞いてください。
制度を確認してください
駐在の時期、期間、家族の帯同——各社に制度があります。生活に直結する項目なので、説明会で具体的に聞いてください。
国ごとの事情を扱います
政治や規制の変化が事業に影響することがあります。各社の「事業等のリスク」に、この点の記載があることがあります。
07リスクを扱うという仕事
商社の仕事は、リスクの管理と切り離せません。
専門の部署があります
与信、法務、財務、審査——リスクを評価する専門の部署があります。営業だけで判断することはありません。
この仕組みがあるから、根拠を示して説明する力が求められます。
コンプライアンスが重い業界です
世界各国で事業を行うため、各国の法令や国際的な規制に対応する必要があります。経済制裁や輸出に関する規制も関わります。
各社が体制を公表しています。統合報告書で確認できます。
法律・会計の知識が生きます
契約の設計、投資の判断、税務——法務や財務の専門性が必要な場面が数多くあります。文系の専門が直接生きる領域です。
08デジタル・環境などの新しい領域
商社は、扱う分野を入れ替えてきた業界です。
かつて中心だった事業が縮小し、新しい分野に資金を振り向ける——これが繰り返されてきました。
各社の方針は中期経営計画に書かれています
どの領域に力を入れるかは会社によって違います。中期経営計画と直近のプレスリリースを読めば、具体的に分かります。
「新しい領域をやりたい」と言うなら
その会社が実際にどんな投資をしているかを調べてから言ってください。調べずに言うと、抽象的な話で終わります。
新しい分野ほど不確実です
新しい事業は計画どおりに進むとは限りません。うまくいかなければ見直されます。
本記事では、どの領域が伸びるかについて判断していません。会社自身の説明を読んでください。
09関係会社の一覧で事業を見る
商社を調べるいちばん具体的な方法です。
商社は多くの事業会社を傘下に持っています。その一覧を見れば、実際に何をやっている会社かが分かります。
| 見るところ | 分かること |
|---|---|
| 有価証券報告書「関係会社の状況」 | 子会社・関連会社の名前と事業内容 |
| 会社サイトのグループ一覧 | どんな事業を持っているか |
| セグメント情報 | どの分野でいくら稼いでいるか |
| 統合報告書 | 各分野の戦略と、注力する事業 |
| プレスリリース | 最近どんな投資をしたか |
「知っている会社」が出てきます
関係会社の一覧には、日常で名前を見る会社が含まれていることがあります。コンビニ、食品、衣料、リース——身近な事業に商社が関わっています。
これを知ると、商社の仕事が具体的に想像できるようになります。
最近の投資を見てください
プレスリリースを見れば、その会社がいまどの分野に力を入れているかが分かります。過去1年分を眺めるだけでも傾向がつかめます。
志望動機に直接使えます
「御社は◯◯の分野でこんな事業に投資している。自分はこの分野に関心がある」——ここまで言えれば、会社名を入れ替えても成立する文章にはなりません。
会社の調べ方全般は会社の調べ方|採用ページ以外から情報を取る方法で扱っています。
10どの大学から何人入っているか
これは公表されている場合があります。
この数字の使い方
「この大学からは入れる/入れない」という判断には使わないでください。年度によって変わりますし、人数は採用の規模にも左右されます。
使い道はOB・OGがいるかを確かめる材料です。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
分野を確かめて聞いてください
商社は配属された分野で仕事が大きく変わります。話を聞くときは、その人がどの分野にいるかを確認してください。
複数の分野の人から話を聞ければ、会社の全体像がつかみやすくなります。
専門商社の実績も見てください
進路資料には名前を知らない専門商社が並んでいることがあります。特定の分野では重要な役割を担っている会社があります。
「聞いたことがない」は「良くない会社」という意味ではありません。
第2部 どんな仕事があるか|職種・海外・働き方
11職種の全体像
商社は「営業」と「コーポレート」に大きく分かれます。
営業がトレードも投資も担います
商社では分野ごとの部門が、その分野の取引も投資も担当します。「投資部門」が別にあるとは限りません。
つまり営業職は、売買の交渉も、投資の検討も、投資先の経営支援も行うことになります。
コーポレートの専門性は高い
財務、法務、審査——専門の知識が必要な部門です。これらがなければ投資の判断もできません。
専門職として採用する会社もあります。募集要項の区分を確認してください。
関係会社への出向があります
投資先や関連会社に出向して働くことがあります。商社の社員でありながら、別の会社の現場に立つということです。
これは商社の働き方の特徴です。
12商社の営業は何をしているか
「交渉」だけの仕事ではありません。
社内の手続きが多い仕事です
大きな金額を動かすため、社内で承認を得る手続きが必要です。資料をつくり、説明し、質問に答える——この時間が相当あります。
「商社=海外を飛び回る」というイメージだけで志望すると、ここでギャップが生まれます。
関係者が多い
取引先、物流、金融、社内の各部門、投資先——多くの相手と同時に進めます。調整の力が求められます。
数字を読む力が要ります
取引の採算、投資先の財務、市況の動き——数字で判断する場面が多くあります。文系中心の業界ですが、数字から逃げられません。
13貿易実務という仕事
取引を実際に動かすための業務があります。
契約が決まっても、モノが届き、代金が支払われなければ取引は終わりません。その手続きを担う仕事です。
書類の正確さが取引を左右します
国をまたぐ取引では、書類に不備があると荷物が動きません。細かい確認の積み重ねが、大きな取引を支えています。
専門の部署や関連会社が担うことがあります
会社によっては実務を専門に担う部署や関連会社があります。営業職が自分で全部やるとは限りません。
どんな体制かは、説明会で聞いてよい質問です。
正確さを大事にできる人に向きます
華やかに語られることは少ない仕事ですが、ここが止まると取引が成立しません。地道な確認を大事にできる人が力を発揮する領域です。
14勤務地・配属・転勤
商社では、配属が読めないことがあります。
分野の配属が仕事を決めます
どの分野に配属されるかで、扱うものも、相手も、時間の流れも変わります。これは商社を志望するうえで最も重要な前提です。
「この分野に行きたい」という希望が強いなら、専門商社という選択肢も検討してください。最初から分野が決まっています。
海外駐在は生活が変わります
行き先は事業がある場所です。都市部とは限りません。期間も数年単位になります。
家族の帯同や住居の制度は各社にあります。具体的に聞いてください。
出向という働き方
投資先の会社で働くことがあります。商社の中だけで働くわけではないという前提を持ってください。
これを面白いと感じるか、落ち着かないと感じるかは人によります。
15専攻と職種の関係
文系中心ですが、理系にも入口があります。
理系は分野で生きます
プラント、資源、化学品、機械——技術の中身が分からないと話が進まない分野があります。理工系の知識が評価される場面です。
語学だけでは足りません
英語ができることは前提に近い場合がありますが、それだけでは仕事になりません。扱う商材と事業を理解する必要があります。
語学は道具です。何を運ぶかが大事です。
学びの整理の仕方
会社が見ているのはどう課題を立て、どう調べ、どう決めたかという進め方であることが一般的です。整理の仕方は学生時代の経験の棚卸し|書き出す順番で扱っています。
第3部 自分で調べる|一次資料と年収
16年収を自分で調べる方法
就活サイトの年収ランキングではなく、会社が出している数字を見てください。
| 知りたいこと | どこに載っているか |
|---|---|
| 全従業員の平均年収 | 有価証券報告書【企業の概況】「従業員の状況」の平均年間給与 |
| 初任給 | 各社の募集要項・採用ページ |
| 賞与の回数・時期 | 募集要項 |
| 諸手当 | 募集要項の手当欄 |
| 昇給の時期 | 募集要項 |
平均年間給与の注意点
これは全従業員の平均です。新卒の初任給ではありません。また年齢構成や職種構成で変わります。平均年齢が高い会社は高く出やすく、若い会社は低く出やすい——それだけのことです。
同じ欄に平均年齢と平均勤続年数も載っています。3つをセットで見ると、数字の意味が分かります。
海外駐在に伴う制度があります
商社では海外に駐在することがあります。それに伴う手当や住居の制度が設けられていることがあります。
制度の内容は、説明会で確認してください。
持株会社の数字に注意してください
持株会社(ホールディングス)の有価証券報告書に載る平均年間給与は、持株会社に所属する社員だけの数字であることがあります。実際に働く事業会社とは別です。誰の数字を見ているのかを、従業員数と合わせて確認してください。
手取りは額面と違います
提示される金額は額面です。ここから税と社会保険料が引かれます。額面だけで生活設計をすると、想定より少なくて驚くことになります。募集要項の読み方は募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認するで扱っています。
17有価証券報告書の使い方
この業界を調べるときの、いちばん確実な資料です。
上場企業が年に1回、法律に基づいて出す書類です。金融庁のEDINETで誰でも無料で読めます。各社のサイトのIR(投資家向け情報)にも置かれています。
商社業界では、ここを重点的に見てください
①セグメント情報——商社はここがすべてです。資源、金属、機械、化学、食料、生活産業——どの分野で稼いでいるかが分かります。
②事業等のリスク——市況、為替、カントリーリスク、投資先の業績——会社自身が何をリスクと考えているかが書かれています。
③関係会社の状況——商社は多くの事業会社を傘下に持ちます。どんな会社を持っているかを見ると、事業の中身が具体的に分かります。
全部読む必要はありません
最初から通読しようとすると挫折します。上の数か所だけを、志望する2〜3社で読み比べる——これで十分に差が見えます。章の名前や構成は年度・会社によって異なることがあるので、目次から探してください。
18決算説明資料・中期経営計画
有価証券報告書より読みやすく、会社の考えが出ます。
| 資料 | 何が書いてあるか | どこにあるか |
|---|---|---|
| 決算説明資料 | 直近の業績と、その理由の説明 | 会社サイトのIR |
| 中期経営計画 | 数年先に何をやろうとしているか | 会社サイトのIR |
| 統合報告書 | 事業の考え方、人材、環境への取り組み | 会社サイトのIR |
| 質疑応答の要旨 | 投資家が何を気にしているか | IRに掲載される場合がある |
中期経営計画が志望動機の材料になります
ここには「これから何に力を入れるか」が書かれています。同じ分野の2社の計画を読み比べると、重点の置き方の違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。会社が自分で書いていることなので、外れません。
図が多いので入りやすい
決算説明資料はスライド形式で、図表が中心です。専門用語の解説が付いていることもあり、業界用語を覚える教材としても使えます。まず決算説明資料を読み、興味が出たら有価証券報告書で裏を取る——この順番が効率的です。
非上場の会社の場合
非上場だと有価証券報告書がありません。その場合は会社サイトの会社概要、採用ページ、プレスリリースが主な情報源になります。情報が少ない会社では、説明会や面接で直接聞くのが確実です。聞いて失礼になる内容ではありません。
19業界団体と官庁の資料
業界全体の話を確かめたいときに使います。
使い方は「裏取り」です
就活で統計を暗記する必要はありません。使うのはニュースや説明会で聞いた話が本当かを確かめるときです。面接で業界の話をするときも、出どころを言える情報のほうが強くなります。「ニュースで見た」より「協会の資料で見た」のほうが確かです。
市況の資料は分野ごとに違います
商社が扱うものは資源、金属、穀物、化学品など幅広く、それぞれに市況の情報があります。
すべてを追う必要はありません。関心のある分野を1つ決めて、その市況の動きを追ってみると、面接での話が具体的になります。
ニュースの読み方
記事の出どころ(誰が発表したか)をたどる癖をつけてください。発表元の資料に当たれば、記事で省かれた条件や前提が分かります。扱い方はニュースと時事の追い方|就活で使える範囲と使い方で扱っています。
20業界用語|最低限これだけ
説明会で前提として使われる言葉です。
意味を言えるようにしておけば十分です
深く理解している必要はありません。説明会で言葉が出たときに話についていける——その程度で構いません。分からない言葉が出たら、その場で聞いてください。
21商社の決算資料をどう読むか
商社の資料は、他の業界と読み方が違います。
商社は多くの事業を持ち、投資先の利益を取り込みます。だから「売上」だけを見ても実態が分かりません。
「利益がどの分野から来ているか」を見てください
売上の大きさより、どの分野が利益を生んでいるかが会社の性格を表します。セグメント別の利益を見てください。
2社を並べると違いが見えます
総合商社はどこも複数の分野を持ちます。ただし強い分野は違います。2社のセグメント情報を並べれば、その違いがはっきり分かります。
その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
投資のニュースを追ってください
プレスリリースを1年分見ると、いまどの分野に力を入れているかが分かります。中期経営計画の方針と合っているかを確かめると、理解が深まります。
第4部 選考に向けて|志望動機と確認事項
22インターンシップの探し方
分野によって、探す場所が変わります。
総合商社と専門商社を両方見てください
総合商社は人気が集中しますが、専門商社にも同じ機能があります。分野を絞って深く関わりたいなら、専門商社のほうが合う場合があります。
違いは4章で説明しています。
「何を扱うか」で選んでください
商社はどの会社も複数の分野を持っています。インターンを選ぶときは、会社名だけでなくどの分野の部門かを確認してください。
参加できなくても不利になるとは限りません
インターンと選考の関係は会社によって違い、案内に記載がある場合はその記載が基準です。記載のないことを推測で補わないでください。選び方はインターンの選び方|条件で絞るで扱っています。
23志望動機の材料を集める
材料が足りないまま書こうとするから、書けません。
同じ分野の2社を読み比べてください
1社だけ読んでも、その会社の特徴は分かりません。同じ分野の2社の中期経営計画を並べると、力の入れどころの違いが見えます。その違いが「なぜこの会社か」の答えになります。
「いろいろな事業に関われる」だけでは足りません
商社の志望動機で最も多い型です。ただ、それはこの業界のほぼ全社に当てはまります。
一段具体的にするには、その会社がどの分野に強く、どんな事業に投資しているかまで降りてください。セグメント情報と関係会社の一覧を読めば分かります。
書いたあとの確認
会社名を同じ分野の別の会社に置き換えて読んでみてください。それでも成立するなら、まだその会社に向けた内容になっていません。志望理由の組み立ては志望理由が弱いと感じたら|足りない情報を埋めるで扱っています。
24選考で確認すること
聞かれる側だけでなく、聞く側にもなってください。
確認事項は事前に書き出しておく
説明会や面接の場で思い出そうとしても出てきません。会社ごとに確認事項をメモしておくと、聞きそびれが減ります。
聞いても失礼にならない質問です
勤務地、勤務時間、転勤の有無は労働条件の基本です。募集要項に書かれるべき内容でもあります。遠慮せず確認してください。記載がない、または説明が曖昧なまま進む場合は、その点を書面で確認するようにしてください。
内定後に条件を確認する
内定の連絡を受けたら、労働条件が書面(または電子)で示されるかを確認してください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。
25選考の時期の考え方
会社ごとに違い、年度によっても変わります。
就活サイトに載っているスケジュールは一般的な目安であり、個別の会社に当てはまるとは限りません。
配属が読めない前提を持ってください
商社は入社時点で配属先の分野が決まらないことがあります。どの分野に配属されるかで、扱うものも相手も変わります。
配属の決まり方と、希望がどの程度考慮されるかは、説明会で聞いてよい質問です。
締切は一覧で管理してください
複数の分野・複数の会社に応募すると、締切がばらばらになります。会社名、応募した日、次の予定、締切の4つを1枚にまとめておけば、出し忘れは防げます。管理の仕方は選考管理の作り方|進み具合を一覧にするで扱っています。
26向き不向きの考え方
性格で決めるより、仕事の進み方で考えてください。
「海外で働きたい」だけでは足りません
海外で働く機会は確かにあります。ただし行き先は事業のある場所で、都市部とは限りません。
「どこでも、どんな事業でも面白がれるか」——ここが実際の適性に近い問いです。
本記事では向き不向きの判断はしていません
上の表は仕事の性質を整理したものであり、適性の診断ではありません。実際に働いている人に一日の流れを聞き、自分で判断してください。進め方はOB・OG訪問の依頼と当日|連絡からお礼までの流れで扱っています。
27他の業界と迷ったとき
商社の機能は、他の業界にも分かれて存在します。
「事業をつくりたい」なら選択肢は複数あります
商社の事業投資は実際にお金を出し、人を送り、経営に関わります。助言する立場とは違います。
どの立場で関わりたいかを考えてください。化学・素材業界は化学・素材業界とは|全体像と分野の調べ方、食品・飲料業界は食品・飲料業界とは|全体像と分野の調べ方、銀行業界は銀行業界とは|全体像と分野の調べ方で整理しています。
比べる項目を先に決めてください
項目が多すぎると決まりません。自分が譲れない項目を3つに絞ると判断しやすくなります。比べ方は志望企業の絞り方|条件を言葉にしてから選ぶで扱っています。
28やらない方がいいこと
商社の選考でとくに起きやすい失敗です。
| やりがちなこと | なぜ問題か |
|---|---|
| 「モノを右から左に流す会社」と説明する | いまの実態とずれている。事業投資の比重が大きい |
| 「いろいろな事業に関われる」で止める | ほぼ全志望者が言う。会社を選んだ理由にならない |
| 分野を決めずに志望する | 商社は分野で仕事が別物。話が抽象的になる |
| 「海外で働きたい」だけを語る | 行き先は事業のある場所。何をしたいかが抜けている |
| 総合商社しか見ない | 専門商社という選択肢を落とす |
| 関係会社の一覧を見ない | その会社が実際に何をしているかが分からないまま話すことになる |
「成長できる環境」は理由になりません
どの会社でも言えます。何を成長させたいのか、そのために何をしたいのかまで具体化してください。
1社の説明会を業界全体の話だと思わない
説明会で語られるのはその会社の、その分野の話です。分野が違えば前提が違います。最低2社は比べてください。
29相談できる窓口
一人で抱えないでください。
OB・OG訪問で分野を聞いてください
商社は配属された分野で仕事が大きく変わります。話を聞くときは、その人がどの分野にいるかを確かめてください。
できれば複数の分野の人に聞くと、会社の姿が立体的になります。
条件面で疑問があるとき
提示された条件に疑問があるとき、自分で判断せずに相談してください。労働局の総合労働相談コーナーは無料で、全国にあります(予約なしで利用できる場合があります)。法令の解釈が必要な場合は弁護士にご相談ください。
30よくある質問
商社は何をする会社ですか?
2つの機能があります。1つはトレード——売り手と買い手をつなぎ、物流、代金の立替、与信、情報といった機能を提供して収益を得ます。もう1つは事業投資——会社に出資し、人を送り、経営に関わって収益を得ます。いまは事業投資の比重が大きくなっています。「モノを右から左に流す会社」という説明は実態とずれています。
総合商社と専門商社はどう違いますか?
扱う範囲の広さが違います。総合商社は資源から食品まで幅広く扱い、事業投資の規模も大きくなります。専門商社は特定の分野に絞り、その分野を深く扱います。配属で言えば、総合商社は入社時に分野が読めないことがあり、専門商社は最初から決まっています。どちらが良いという話ではなく、関心の形で選んでください。
配属はどう決まりますか?
会社によります。入社時点で分野が決まらないことがあり、どの分野になるかで扱うものも相手も変わります。配属の決まり方と、希望がどの程度考慮されるかは、説明会で聞いてよい質問です。特定の分野への関心が強いなら、専門商社も検討してください。
海外に行けますか?
海外との関わりが事業の中心にあるため、駐在や出張の機会があります。ただし行き先は事業がある場所で、都市部とは限りません。資源の分野なら産地の近く、ということもあります。時期や期間の考え方、家族の帯同の制度は会社によって違うため、説明会で具体的に聞いてください。
英語はどのくらい必要ですか?
分野と職種によります。海外の取引先と直接やりとりする部門では日常的に使います。ただし語学は道具であり、それだけでは仕事になりません。扱う商材と事業を理解することが前提です。採用ページに語学の目安が書かれている場合は、それが実態に近いと考えてよいでしょう。
文系ですが数字は苦手です。
商社の仕事では、取引の採算、投資先の財務、市況の動きを数字で判断する場面が多くあります。文系中心の業界ですが、数字から逃げられる業界ではありません。入社後に学ぶことが前提ですが、苦手だからという理由で選ぶ業界ではありません。
理系でも入れますか?
入れます。プラント、資源、化学品、機械など、技術の中身を理解していないと話が進まない分野があります。農学・水産なら食料の分野、情報系ならデジタルの事業という入口もあります。応募できるかどうかは募集要項の応募資格欄で確認してください。
出向とは何ですか?
投資先や関係会社に籍を移して働くことです。商社は多くの事業会社に出資しているため、そこに人を送って経営や事業に関わります。商社の中だけで働くわけではない、という前提を持ってください。これは商社の働き方の特徴の一つです。
商社の決算資料はどう読めばいいですか?
売上ではなく、セグメント別の利益を見てください。どの分野が収益を生んでいるかが会社の性格を表します。加えて、資源と非資源の区分、関係会社の一覧、中期経営計画を読むと、その会社が何に力を入れているかが具体的に分かります。
専門商社は知らない会社ばかりです。
消費者に直接売らないため、名前が知られていないだけです。特定の分野では重要な役割を担っている会社があります。大学の進路資料、業界団体の名簿、メーカーの取引先の記載などから探せます。「聞いたことがない」は「良くない会社」という意味ではありません。
選考はいつから始まりますか?
会社ごとに違い、年度によっても変わります。実際の日程は各社の採用ページと届いた案内で確認してください。複数社を受ける場合は、締切を一覧で管理してください。
まず何から読めばいいですか?
志望する会社のセグメント情報(分野別の利益)と、有価証券報告書の「関係会社の状況」を読むのが早道です。実際にどんな事業を持っているかが具体的に分かります。そのうえで中期経営計画と直近のプレスリリースを見れば、いまどこに力を入れているかがつかめます。
この記事に載っていない会社もありますか?
あります。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、網羅した一覧ではありません。また推奨や順位付けでもありません。専門商社には、分野ごとに数多くの会社があります。
31まとめ|2つの機能と、分野で考える
商社の仕事は2つの機能でできています。トレード(売買を仲立ちし、物流・金融・与信の機能を提供する)と、事業投資(会社に出資し、経営に関わる)。
いまは事業投資の比重が大きくなっています。「モノを右から左に流す会社」という説明は実態とずれています。
会社は総合商社と専門商社に分かれます。幅広く関わりたいなら総合商社、特定の分野を深く知りたいなら専門商社です。
- いちばん大事なのは「どの分野か」です。資源と食料では、時間の流れも相手もまったく違います。
- リスクを引き受ける仕事です。与信、市況、為替、国の事情——だからこそ対価があります。
- 海外は事業のある場所です。都市部とは限りません。「海外で働きたい」だけでは動機になりません。
- 関係会社の一覧を見てください。その会社が実際に何をしているかが、いちばん具体的に分かる資料です。
最後に。本記事の社名は各分野にどんな会社があるかを示す例であり、推奨・順位付け・優劣の評価ではありません。網羅した一覧でもありません。売上・シェア・年収などの数値と企業の将来性、向き不向きは扱っていません。数値は各社の開示資料や業界団体・官庁の公表資料で、募集の条件は各社の募集要項でご確認ください。
・化学・素材業界とは|全体像と分野の調べ方
・食品・飲料業界とは|全体像と分野の調べ方
・銀行業界とは|全体像と分野の調べ方
・業界の調べ方|全体像をつかむ順番
・募集要項の読み方|見落としやすい項目を確認する
・就活・キャリアの記事一覧